ガンマディオラ(2)

文字数 968文字

 ラオはロギアについて甲板を歩いた。

『ガンマディオラ』は三本マストの帆船だ。

 一番前にあるフォアマスト、真ん中のメインマスト、最後尾のミズンマスト、それぞれに帆が張られている。

 ロギアはミズンマストの横を抜けて階段を上がる。

 他の甲板より高い位置にあるそこが船尾甲板と呼ばれている。

おーい船長、拾った奴が目を覚ましたぜ。
……ん、ああ……。

 船尾甲板には大きな椅子があり、そこに男が身を沈めていた。

 船長は痩せていて顔色も悪かった。

 目は半開きで、とても眠たそうに見える。

こいつがそのラオライア……いや、ラオだ。
おい、勝手に人の名前を縮めないでくれ。

いいじゃん。

長いし言いづらいしラオライアって顔でもねーだろ。

君、ほんと口悪いな……。

まあいいや。

これからはラオって呼んでくれ。

おう。

――で、こいつなんだけどさ、この船に置いてやってくれねーかな。

彼は……星力者(テーラ)なのか……?

そうさ。

最近新入りが見つからなくて困ってただろ?

ちょうどいいじゃん。

…………。
少年、君の能力――超星力(アストラ)を見せてくれ。

あ、はい。

俺は紫色の炎を操れます。

こんな感じで……。

 ラオは右手に意識を集中し、炎を纏わせた。

 紫炎が手を包んでゆらゆらと揺れる。

……ふむ、戦闘向きの超星力(アストラ)だな……。

けっこうなことだ……。

で、君には海魔と戦おうという心構えはあるのか……?

あります!

俺には倒さなきゃいけない相手がいる!

 ラオは、さっきロギアに話したことと同じ説明をした。

 姉の復讐であることは特に強調した。

……事情は、わかった。

よし……ではロギア、彼の面倒を見てやってくれ……。

 それだけ言うと、船長はがっくり頭を下げてしまった。

 スー、スーという音が聞こえてくる。

 どうやら眠りに落ちたようだった。

船長は〈神糸(リオット)〉って超星力(アストラ)でこの船を操ってんのさ。

バカみたいに力を使うんで、こうやってなるべく動かないようにしてんだ。

そんなすごい超星力もあるんだな……。

俺、姉さんの超星力以外は見たことないから……。

これから嫌でも色々見ることになるぜ。

そんじゃ、船長の許可ももらったし、お前は今から『ガンマディオラ』の一員だ。よろしくな。

……うん、よろしく。

 ラオは差し出された手を握り返した。

 とても久しぶりに、人の体温を感じたような気がした。

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登場人物紹介

「ラオ」

孤島出身の少年。〈紫焔(ブレープル)〉と呼ばれる紫色の炎を操ることができる。

「ロギア・ガーネット」

帆船『ガンマディオラ』の甲板を仕切っている少女。勝ち気な性格。

「シュトラ」

『ガンマディオラ』のメンバーでフィーネの姉。故郷を海魔に攻め滅ぼされ、流転の果てにこの船の一員となった。

「フィーネ」

シュトラの妹。海魔に故郷を攻め滅ぼされ、姉とともに行く当てのない旅を続け、やがて『ガンマディオラ』に乗船することになる。姉への依存が深刻。

「ディック・ハンヴィール」

『ガンマディオラ』の船長。〈神糸(リオット)〉と呼ばれる能力で帆船一隻を丸々操っている。膨大な力を消費するため、航行中はいつも寝落ち寸前の状態。

「サクラ・イカヅチ」

東方の武人の血を引く少女。雷撃を宿した刀を使って海魔を倒す。

「ハーヴェイ・チェッカータ」

大声を衝撃波に変える〈鬼哭(シャウガ)〉という能力を持つ青年。能力のせいで大声を出すと話し相手を吹っ飛ばしてしまうため、寡黙を貫いている。

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