第1話 出会い [3]

エピソード文字数 1,927文字

小日向「そう。皆には自分の好きな曲でステージを披露してもらいます。でもこれは歌わなくてもいいし、踊らなくてもいい」

えっ?それってどういう…?

太陽が尋ねると、眠たげだった淳ノ介が起き上がり注釈を挟む。

つまり、歌だけ歌って踊らなくてもいいし、逆に歌わずダンスだけを発表してもいいってこと。ですよね?

小日向「その通り。」

なるほど…。

太陽をはじめ、皆が納得する。

小日向「そしてその発表日は、今から1週間後とします。」

1週間…!

小日向「ワンコーラス分だけでいいから安心して。ということで分かったかしら、1週間後にまたここの事務所の方まで来てください。皆が揃ったら発表会の場所まで案内するわ。あと、当日は動きやすい服装で来てね。それと、発表する楽曲は個々でそれぞれ持ってくるように。今日のお知らせは以上です。皆、頑張ってね。」

小日向が出口の扉を開ける。皆その扉からそれぞれ出ていき帰っていった。

発表会か…。

ただいま!

太陽が自宅に戻ると、弟達が駆け寄ってきた。

(そら)「おにいちゃんおかえり~!」

流輝(りゅうき)「おかえりぃ!」

まひる「おにいちゃん~!」

そら、りゅーき、まひる!ただいま!ちゃんといい子にしてたか~?

空「うん!今日ね!お母さんのお手伝いした!」

おっ!偉いぞ~!

流輝「おれもちゃんと宿題やった!」

りゅーき!よくやったね~!よしよし!

まひる「俺だって今日テストで1番いい点とったよ!」

凄いなぁまひるは~!流石お兄ちゃんの自慢の弟だ!

弟達と会話しながら太陽がリビングへ向かうと、母も声をかけてきた。

母「おかえり、太陽。晩ご飯みんなお腹空かせて待ってくれてたのよ。早く食べましょう。」

うん!…皆、俺が帰るのを待ってくれてたんだね!ありがとう!それじゃあ皆手を合わせて、せーの!

「「「「いただきまーす」」」」

勢いよく弟達が食事を始める中、太陽は母にこっそり話しかけた。

ねえ、お母さん。この後ちょっと時間もらってもいい?…できたら、皆が寝た後がいいんだけど…

母は察するように返事をした。

母「…分かったわ。」

ありがとう、お母さん。

食事も終わり、すっかり日も暮れ、小さい弟達は寝室でぐっすり眠っていた。


太陽がリビングで待っていると、母が部屋に入り、そのまま太陽の向かいに座った。

母「話があるんでしょう?…今日、どうだったの?」

…俺以外にも何人か居たんだけど、ユニットでデビューするんだって。今でも実感が湧かないけど、俺、本当にアイドルとしての一歩を踏み出したんだ…!すっごく嬉しい…!

母「そう…。よかったわね、太陽。」

太陽は母にだけ、アイドルのオーディションを受けたことを伝えていた。


手の震えがおさまらないほど喜んでいる自分の息子の様子を見て、母もにっこりと微笑んだ。

うん、だから…

太陽がそう言った瞬間、母はもう答えが分かっていたかのように口を挟んだ。

母「家から出るかもしれないって?」

…………うん。

しばらく沈黙が続き、太陽はまた明るい話に戻そうと「まだ分からないけどね!」と冗談めかしく言うが、母はそんな太陽を見つめながら話し始めた。

母「…寂しいわね、太陽がこの家からいなくなるなんて。空、流輝、まひるにとってあなたはお兄ちゃんでも、お父さんでもあるから。上の2人もこの家を出て、太陽が皆の面倒を見てくれて、本当にお母さんにとってあなたは家族の太陽だと思ってるわ。でも、そんな太陽が見つけた夢ならお母さんも全力で応援するからね。」

…ありがとう……!

太陽の顔が明らかにぱあっと明るくなった。まるでこの返事を待っていたかのように。

その様子を見た母は懐かしい気持ちで語った。

母「まさか貴方もアイドルを目指すなんてね。一直線なところは本当、お父さんにそっくりね」

突然の父の話題に太陽は戸惑ったが、母に対し話を繋げる。

…お父さん、もうずっと帰ってきてないよね。まひるが生まれた時に家族が集まって以来か。今何してるのかな。お父さんのステージを見て、俺はアイドルになりたいなって思ったから。自分も皆も、笑顔でいっぱいのアイドルになりたいって。笑顔は一番の輝きだって、小さい頃教えてもらったから。

母「…ちゃんと覚えているのね、お父さんの言葉。貴方の笑顔に私はどれだけ元気をもらったか、救われたか。数え切れないほど貴方にはエネルギーをもらったわ。だから今度は皆を笑顔にしていらっしゃい。貴方は唯一お父さんが名付けた、みんなの『太陽』なんだから。」

うん!

太陽は話が終わると、「おやすみ」と言い残し寝室へ向かった。

母「…あなた。太陽はついに本当の意味で昇り始めたわ。あの子がこれからたくさんの人を笑顔にしていくのが楽しみね。」

母もポツリと呟いたあと、電気を消し眠りについた。

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登場人物紹介

椎名 太陽(しいなたいよう)

物語の主人公。

人を惹きつける不思議な才能がある。

白鳥 聖(しらとり ひじり)

太陽と同じユニットメンバーの一人。

歌が上手い。

小松 雅(こまつ みやび)

太陽と同じユニットメンバーの一人。

ダンスが得意。

不破 淳ノ介(ふわ じゅんのすけ)

太陽と同じユニットメンバーの一人。元々俳優だったがアイドルに転身。

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