prologue
文字数 443文字
運転席には父、助手席には母が座っている。
ふと隣を見ると、妹の優美が優に寄り掛かって安らかな寝息を立てていた。
優美は10歳になったばかりだ。
当時の自分に比べて大人びているが、こういう所はまだ子どもだ。
昨夜はなかなか寝付けなかったみたいだし、と優は苦笑した。
夏休みを利用しての家族旅行――行き先は祖父母の家だ。
海が近く、自然が多く残っているのでちょっとした非日常を愉しむことができるはずだ。
来年は難しいかも知れないけど、と優は小さく溜息を吐いた。
優は14歳――中学2年生だ。
バリバリの進学校に進みたい訳ではないが、平均より上の学校には行きたい。
柄の悪い生徒がいない学校で平和な3年間を過ごしたい。
そんなことを考えていると、トンネルが見えてきた。
車がトンネルに入り、黄色い光が視界を塗り潰した。
両親と妹の声が聞こえたような気がしたが、優はそのまま意識を失った。