第4話(3)

エピソード文字数 1,777文字

 ああ、そういうことか。コレって生きてたのね。

『優星……。お前、強くなったな……』

 色々、ありますからねぇ。このくらいはもう余裕ですよ。

「アタイは二万年後に、太陽系――地球の傍に誕生する『俳句世界(はいくわーるど)』から召喚された、タンザ・クー。タンザが姓で、クーが名だよ」

 なるほどなるほど。地球の近くにある世界が出身地の、タンザのクーさんですか。

「にゅむむっ、エイリちゃんは召喚士(しょーかんし)さんだからねーっ。召喚獣(しょーかんじゅー)さんがいるんだよー」
「うん。それは道理至極なんだけど、遠くから喚びすぎ。それと、未来には『俳句世界』ってのがあるんですな……」

 この世界すげぇ。そして、そんなトコから招いた伝説の召喚士もすげぇよ。

「…………ねえ、タンザさん。質問よろしい?」
「構わないし、アタイのことはクーでいいよ。で、なんだいボウヤ」
「その『俳句世界』って、さ。どんなトコなの?」

 ボウヤは、気になって問うてみた。どんな世界なんだにゅむ?

「『俳句世界』は俳句が生活の中心になっている、俳句に溢れた世界だね。ただ基本的な文化、地形、各地の名前なんかは地球そっくりで、高知にあたる場所には『句雅美野公園(くがみのこうえん)』や『句生雅洞(くうがどう)』ってのがあるよ」
「へ~。ホントそっくりだね」

 高知にあるのは、『鏡野公園(かがみのこうえん)』と『龍河洞(りゅうがどう)』。鏡野公園は日本さくら名所100選に選ばれた素敵なトコロで、龍河洞は日本三大鍾乳洞であり国の天然記念物になっている有名な場所でございます。

「ちなみにアタイは、そこの第一王女。次期女王だね」
「ぉぉぅ、英雄を超える身分が登場だ……。橙式ちゃん、どうやればそんな御方を召喚獣として喚べるの?」
『適当に ノリでやったら 出てきたな』

 あーね、そっかそっか。やっぱこの子も英雄だわ。

「じゃあ今度は、クーさんや。本物の姫様が、どうして召喚獣として契約したの?」
「アタイはこの子の、俳句に対する想いに惚れたんだよ。エイが一人前になるまでは、傍で支えてやろうと思ってるのさ」

 なんとまぁ。王女様は、お母さん的ポジションにいらっしゃるようです。

「アタイの中にはそんな気持ちがあるから、今ここにこうしているんだよ。ボウヤ、他に質問はあるかい?」
「う~ん、もうないかな。このあたりで充分です」
「そうかい。だったらこれで終わりで、これからよろしく頼むよ。普通の人間が居ないところでは、遠慮なく話しかけて頂戴」
「了解で、こちらこそよろしくっス。仲良くしましょう――」

 ヒュン!
 不意に、ポケットから音がした。
 全員で見てみると、今朝新しくもらったお守りが消失していた。
 泣きそうになった。

「にゅ、にゅむ……。ドンドン破壊度がアップして、ついになくなったよー……」
「どう見ても、次はない。もうすぐ何か起きるだろ……」

 心臓が異常な速度で、拡張と収縮を繰り返している。これって今迄で一番ドキドキした、高校の合格発表より速いぞ。

《不穏だな なにがあったよ 知りたいぜ》
「従兄くんのお守りだけが、たびたび壊れているのよ。私達が居て『金硬防壁』があるから、心配は要らないと思うんだけど……」
「ここまで来ると、不安になるぜよ。守りきる自信はあるがやけどねぇ」

 フュルは俺のポッケを見つめ、眉根を寄せる。
 消滅、まで進んじゃうとなぁ。英雄と究極奥義があっても、安心できないよね。

「……ふむ、そんな事が発生してたのかい。だったらアタイらも、何かしらの問題が解決するまで同行するよ」
「っ! いいのっ?」
「この子は義務教育の真っ只中で、そこまで仕事に縛られないのさ。数日間は可能よね、エイ?」
《おういいぜ 優兄(ゆうにぃ)の護衛 引き受けた》

 橙式ちゃんは句を詠み、親指を立ててくれる。
 まさかまさかの、英雄+1。化け物人間が4人いるってのは、めちゃんこ心強いな。

「これなら、負傷や死亡の危険はなさそうだ。これまで以上に心置きなく過ごせるよ」

 俺は新たな仲間やレミア達に謝意を告げ、少し喋って育月のもとに戻る。そのあとは販売会の支度をし、俺らは車に乗って目的地へと発ったのでした。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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