1.ルワンダ国内視察準備

文字数 1,276文字

1994年7月28日木曜日、午後2時
ACESンガラ事務所

 ベンからのルワンダ行きのゴーサインが出たのでじっとはしていられなかった。
 まずはルワンダ行きに必要な情報を入手することにした。

「せっかく来てくれたのに、ごめん。今度ルワンダから帰ったらゆっくり話そう」 
 うらめしそうに見るミキをおいてンガラのUNHCR事務所に向かった。
 
 車に乗り込み「ふーっ」と、大きなため息が出た。

 それにしても、彼女は何で自分がンガラにいると知っていたのだろう。
 きっと、日赤派遣のナース経由だろう。医療支援調整会議で見かけ、あいさつ程度はしていた。ナースのネットワークは密だから得心がいく。
 
 アンワルと出向いたUNHCR事務所では、国内避難民に関する情報やUNHCRキガリ事務所に関する情報はあったが、ルワンダ入国に関する情報はなかった。確かにンガラ事務所からルワンダ国内に行くこともないので仕方ない。

 しかし、ICRC・国際赤十字委員会がタンザニアからルスモの国境を越えて援助物資をルワンダ国内に送っているという。その担当者を教えてくれた。
 早速、ベナコ・キャンプより国境方向に進んだ場所にあるICRCの複合施設に向かった。

 赤十字にはICRC・国際赤十字委員会とIFRC・国際赤十字連盟の二つの組織があるが、各国の赤十字社で構成されるIFRCの方が気さくだった。ICRCのスタッフも親切なのだが、スイス人を中心とした赤十字活動の基礎となるジュネーブ条約を遂行する集団という側面が強く、その中立性保持のため敷居が高かい感じがした。
 
 巨大な白い布製の倉庫の群の中に目当てのICRCの女性はいた。大きな赤十字のマークがドアに描かれた白い大型トラックがところ狭しと並んでいる。彼女はそれらのトラックに赤十字のマークがある段ボール箱に入った支援物資を積込む指示をしている。

 この人ならルワンダへの道路事情など知っていそうだ。
 キガリに行く目的を簡単に説明して現地の状況を尋ねた。
 
「キガリに向け、ほぼ毎日支援物資のコンボイを出しているわ。ルスモからの入国は特に問題はいないみたい。道路状態も良いから、キガリまでは乗用車だったら4時間はかからないと思うわ」
 イギリス英語の女性はそう教えてくれた。欲しい情報をあっさり言われ、少し拍子抜けする。

「あと、向こうでクリスティーンに会うといいわ」 
 礼を述べて倉庫を出ようとすると、言い足した。ただ、詳しいことはクリスティーンに会えば分かると言うだけで教えてもらえなかった。

『クリスティーンとは一体誰なのだろう?』

 雲をつかむような気がしたが、とにかく現地で役立ちそうな情報を得られた。
 キガリまでは4時間で道路事情も問題ないと聞けば、まるで、もうキガリに着いたような気になった。

 その後、K9に事務所で幾つかの国際NGOにも回って確認するが、ルワンダ国内への支援はウガンダから行っているという。それに、まだタンザニアからの支援活動は行っておらず、逆に状況を聞かれた。彼らにはルワンダからの帰国後に出張報告会を開くことを約束した。

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