プロローグ
文字数 572文字
ここは人魚の王国
その王国は静かにそこにあった
かつては繁栄を極め、たくさんの人魚達が住まう海底の王国だったが
ある日を機に、王国の住人となる子供達が生まれなくなった
人魚の寿命は人の寿命よりも長いのだが、それでも寿命は訪れる
寿命となった人魚が、一人また一人と海の泡へとなり消えていく
たった一人だけを残し、この王国の住民はすべて消滅しまたのだった
彼の名はカナロア
この王国、最後の生き残りで、最後の王である
彼は、王国と地上への入り口が開かれるこの時を待ちわびていた
地上への入り口は、4年の一度うるう年に開かれる
うるう年の年のみ、海底王国と地上への行き来が可能となるのだ
人魚達の女は、うるう年になると地上へ行き
あるものは、人間との間に子を作り
また、人間を狩るものも、人間に狩られるものもいた
人魚の男たちはというと
数が非常に少なく貴重だったため地上へ行くのは禁じられていた
王である彼もまた例外ではなかった
だが、王国の人魚たちが消えてしまってからは何度か地上へ行き
寂しさを紛らわすよう人間を攫い連れ帰ったが
人間が海底の王国で、生きられるはずもなく皆息絶えてしまった
カナロアは、絵文字が書かれている石板を胸にいだき
そうつぶやいた