第5話 どっかで会ったことある?

文字数 2,469文字

思わず、冬月さんの笑顔に見とれてしまっていたが。お昼休みが終わるチャイムが鳴り我に返る…
お昼、食べた?
この状況で食べれたと思う?


あ〜マジで最悪。

これ、よかったらどうぞ。
俺は食堂に併設された売店で焼きそばパンを後でお腹が空いたら食べようと思って、買っていた。


ポケットから出すと差し出したのはいいけど潰れていた…


(あ!こんなのあげられないか(汗))

慌てて引っ込めようとすると
ありがとう。もらう。


昼休み終わったのに戻んねーの?

さっき争ったから、ごめん、潰れたみたいだけど…


いいよ。真面目で平凡しか取り柄ないけど、今戻っても、どうせ怒られるし(笑)

そう言って再度差し出し渡す時に、冬月さんと手が触れてしまった…
うわ、どさくさに紛れて手触ってきたし!キモっ!


でも、助けてくれてありがとう。

(傷つくからやめてくれよ…物もらう人の態度じゃないし…でもちゃんとお礼は言える人なんだね…)
冬月さんからしたら、キモいかもしれないけど、俺は神谷みたく目立ちもしないけど、キモいってはあんまり言われたことないんだけど…
あ〜マジで?ごめん。悪気あるわけじゃないから。


記憶ないから、わかんないんだけどさ、アイドルだったんでしょ私?


多分握手会とかそういうのあったのかな?


身体が男の人になんか拒絶反応示すんだよね(汗)


神谷ってあのキザやろうのこと?


あいつにも私は拒絶反応出んだけど?

焼きそばパンを頬張りながら冬月さんがそう言った。
(え?神様にまで拒絶反応出んの?!だから、キモいって言ったのか(汗))
なるほどね。記憶はなくても、身体が覚えているみたいな?


思っても口に出さない方が良いこともあるんだよ?(笑)


神谷だって冬月さんが困ってるのを助けてくれたんだから、助けてくれた人には、今みたく素直にありがとうって言えたら、誤解されないと思うよ?


きっと白石 千春だった頃に色々嫌なことあったんだろうね。


でもさ、白石 千春は確か清楚系だったよね?金髪ギャル風にはいつからなったの?

お前、良いこと言うな。そう出来るように努力してみる。


そうだね。記憶を無くして、ちょっとしてから、人に寄られて、それが嫌で、自分に誰も知らない人が近づいてくるのが嫌で金髪にした。


そしたら、少しは近づいてくる人が減った。


中学3年生の頃に事故にあって、それから記憶が戻らない。


もう2年以上。高1からしか記憶がない。だから、勉強もわからない。


もともといた高校、凄い頭良いところらしいんだけど、記憶無くしてから、全然ついていけなくなった。

俺はお前じゃなくて上田 龍一。お前とかあいつとかじゃなくて、名前で呼んであげたら、もっと周りといい関係築けるんじゃないかな?


神谷だって冬月さんが困ってるのを助けてくれてくれたんだから、今みたいに素直にありがとうって言えたら、もっと仲良くなれると思うよ。


もともといた高校凄い頭の良いところなら、冬月さんはきっともとは優秀なはずなんだろうから、勉強俺で良ければ教えるからさ。


席も隣だしさ。


この高校は普通かそれ以下だから、俺なんかで力になるかわからないけど…

俺がそう言うと少し間があいた…


(なんか余計なこと言ったかな?(汗))


不安に思っていると

ありがとう。龍一。


龍一は昔、私とどっかで会ったことある?

いきなり冬月さんに名前で呼ばれたからドキッとしてしまった…
俺?んなわけないでしょ(笑)


白石 千春時代、冬月さんは東京に住んでたんじゃないの?


アイドルのときだって出身は東京都じゃなかったっけ?


冬月さんに会うの初めてだよ(笑)


握手会とか行ったことないから安心して(笑)

じゃあ焼きそばパン食べたし、戻んぞ。
冬月さんがそう言った時、屋上のドアが開いて、先生が来た…
二人とも!何してるの!え?他にも倒れてるのみんなうちのクラスの子たち?!


どういうこと?!

倒れていた奴らが意識を取り戻すと、走って逃げていった…


俺と冬月さんはこのあと生徒指導室に呼ばれて、事情を聞かれた。


冬月さんは二重人格のように先生に自分が物凄い被害者のように語り、俺はそれを助けた人物として説明された。


俺達の後に呼ばれた笹川達は凄く怒られたようでその日はそれ以降大人しくなった。


体育の授業の時間になり、男子も女子も体育館でバスケの授業となった。


女子達は神谷のいるチームが試合になるとキャーキャー騒いでいる。


神谷は部活何も入ってないけど、バスケ部のやつよりバスケが上手い…

俺は明と同じチーム。体育館の端で座って次の自分たちの番に備えているが、明からは質問攻めにあっていた。
何かあのあと、冬月さん、お前のことだけ龍一って名前で呼んでるしさ、何があったんだよ?!


教室戻ってきたら、神谷にもありがとうって言ってただろ?


なんか尖ってたのに、少し人変わったみたいでびっくりなんすけど!


てか、お前は坂木さんじゃなかったのか?

色々あったんだよ。そうだよ。俺は昔から愛だよ。


片思いのまま何年も何も変わらないけどな(泣)

俺とお前のいるチームが神様のいるチームに勝つことはまずないだろうな(笑)


スポーツ万能で見た目も中身もイケメン。神谷が羨ましいしよな。


去年はクラスの女子全員が神様に惚れた事件。今年もかな(笑)

そう言って、明が指を差したのは、ネットが引かれた隣のコートにいる女子達…


自分達の競技そっちのけで、神谷のプレーに夢中…

女子の方を見ると、冬月さんは男子のバスケに全く興味なし。


高校に入ってから仲良くなった酒井さんと一緒に愛も試合を見ていた…


酒井さんは神谷ファンなのか楽しそう。愛は酒井さんに色々話しかけられているようだった。

愛まで、神様ファンとかやめてくれよ…(泣)
さぁ、平凡な龍一と俺の出番ですよ〜(笑)
明にそう言われて俺はコートに入る…


さっきの試合は神谷のいるチームの圧勝…


ジャンプポールは明達に少し身長が高い俺がやらされるはめに…


相手のジャンプポールは神谷…

チラッと女子の方を見ると、愛が見ている…


普通に試合をしても、多分俺にいい場面なんてやってこない。


今ここでしか俺にチャンスはない…

そう思っていると神谷に話しかけられた…
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

上田 龍一(うえだ りゅういち)

城西高等学校2年生

成績、スポーツ、容姿全てが平均的男子。同級生で同じ高校で同じクラスの坂木 愛(さかき あい)に恋をしている。

冬月 千春(ふゆつき ちはる)龍一のクラスへの転校生。

両親離婚前は白石 千春(しらいし ちはる)

元アイドル。そして記憶を失くしている。

坂木 愛(さかき あい)城西高等学校2年生。龍一と同じクラス。


目立つタイプではなく、あんまり人の輪に入ることが得意ではないが、容姿が良いため男子から密かに人気がある。

酒井 真美(さかい まみ)。龍一のクラスメイトで、愛の親友。

佐藤 明(さとう あきら)。龍一のクラスメイトで親友。

神谷 俊(かみや しゅん)。龍一と同じクラスで学年一のモテ男。性格もイケメン。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色