元冒険者、伯爵令嬢を保護する

文字数 1,320文字

 屋敷に戻ってきた俺は居間へと入りミラーゼをソファーに座らせた。
「引っ越ししてまだそんなに経ってないんだ。散らかっているけど我慢してくれ。」
「い、いえ・・・・・・。あの、此処はレッド様のお屋敷なのでしょうか?」
「あぁ、1ヶ月前にダイマン国から引っ越して来たんだ。」
 俺は簡単に1ヶ月前の出来事を話した。
 ミラーゼは「まぁ・・・・・・。」とか驚きの声をあげていた。
 そりゃあそうだろう、一介の冒険者が国を買った、なんて多分聞いた事も無いだろう。
「まぁ、俺の事情はそんな所だ。それでミラーゼはどうしてあの状態だったんだ? 何か犯罪に巻き込まれた様な感じがするんだが。」
「犯罪と言えば犯罪になるんでしょうか・・・・・・、私、ラズリ王国の王太子様と婚約をしていたのです。」
「将来の王妃様か。」
「えぇ、その為に厳しい教育を受けて来ましたが・・・・・・、それが最近、一方的に婚約破棄を告げられてしまいました。」
「また急な話だな。何か心当たりは無いのか?」
「正直わかりません。ですから王太子様に説明を求めよう、と思って会いに行ったんですが全く顔も見せてもらえず・・・・・・。」
 本当に一方的だな。
「それから暫くして私に関する悪い噂が聞こえる様になって来ました。『私が我儘を言って王太子様を困らせた』、『人を使って王太子様に言い寄ってくる令嬢に怪我をさせた』とか・・・・・・。」
「それは勿論・・・・・・。」
「嘘です。大体、王太子様と会う機会も少ないのにどうして我儘を言えるでしょうか。それにそんなに親しい友人もいませんし。でも、1度着いた悪い噂は広まるのは速い物です。お父様から『暫くは別宅に籠る様に。』と言われたその日の夜に侵入者がやって来て私を身動きできない状態にして・・・・・・。」
「あの舟に乗せられていた、という事か。」
 ミラーゼの話を聞いて彼女は多分、嘘をついてない、と思った。
 多分、ミラーゼが王妃になるのが困る輩が仕掛けたんだろう。
「ミラーゼの親は国の重要な役職に付いてないか? もしかしてライバルとかはいないか?」
「えぇ、お父様は大臣をやっております。お父様は凄く厳しい方ですからお父様を妬む方はいらっしゃる、と思いますが・・・・・・、まさか。」
「多分、ミラーゼの父親を蹴落としたい輩が暗躍していたんじゃないか、と思う。」
 貴族の世界は正直よくわからないが、冒険者の世界は手柄の横取りや裏切り行為なんて当たり前だ。
 特に高ランクのパーティーとかだったら余計にある。
 多分、貴族の世界も似たような問題、いやそれ以上の話なんてあるだろう。
「話はわかった。とりあえず事が納まるまで此所に入れば良い。」
「よろしいんでしょうか?」
「あぁ、それに国の運営方法とかよく知らないんだ。王族の教育を受けてきたんだったら知識はあるだろう。」
「えぇ、勿論。」
「だから、それを活かしてほしい。それでこの国が発展すればミラーゼを追い出した輩を悔しがらせば良いんじゃないか?」
「なるほど、それは良い提案ですね。わかりました、私この国に住みます。」
 こうして、俺は国民第1号を獲得する事が出来た。
 
  
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