第32話 『世界アシカ・アザラシ観察記

文字数 909文字

動物写真家が追う鰭脚類(ききゃくるい)の生態』
水口博也
東京大学出版会
発行日 2023年4月5日 初版

第5話の『アザラシ語入門』の水口大輔 さんとは別の人。40年あまりアザラシやアシカを観察してきた。ただし、科学者ではなく文筆家・写真家として。

世界や日本のアザラシやアシカを、豊富な写真とともに観察の経験からわかりやすく紹介してくれる。ゼニガタアザラシとゴマフアザラシとハイイロアザラシとクラカケアザラシくらいしか知らなかったが、その他の暖かい場所に住むアザラシについても知ることができた。

ドイツの『海の友だちアザラシ』にも出てきたが、アザラシたちは水銀などの毒物、寄生虫、漁師の網などで命を落としている。この水口さんの本でも紹介していたが、過去に何万頭という数でアザラシが大量死したこともある。レイチェル・カーソンの言に従えば、動物が汚染されれば、その毒は必ず人間に回ってくる。アザラシやアシカなどの鰭脚類の大量死は、人間の未来を語っている。

シベリアや南極・北極の研究者や、鰭脚類の研究者は、本を読むだけでなく、現地に行って揺れる船に3日も乗ったり、冷たい海に潜ったりと大変だ。対象、この場合はアザラシやアシカに対する愛がなければならない。

名前の通りヒョウにも似て、別のアザラシを襲って食べるヒョウアザラシは例外だが、アザラシやアシカにはおおむね可愛らしいというイメージがある。水口さんが海に潜って至近距離で出会ったアザラシたちにもそういうものも多いが、ヒョウアザラシも好奇心いっぱいに近づいてきた。

海の中で、岩や氷の上で休んでいるアザラシやアシカはのんびりと見えて癒やされるが、シャチや、子供のときは鳥に襲われることも多く、自然界は一番弱い子供が真っ先に狙われて弱肉強食そのものだ。また、水口さんも紹介しているように、アザラシやアシカは、その毛皮や油のため、過去に激しく乱獲された。その後、頭数が減って、クジラがより多く狩られることになったと言う。

私は学者でも文筆家でも写真家でもないが、アシカやアザラシたちが、岩や氷の上でのんびりと休んでいるのを見るのが好きだ。人間もアシカやアザラシたちと一緒に生きながらえていければ良いと思う。



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