収穫物
文字数 1,166文字
カレタカはこの世界へ突然やってきて、どうやって生きて行けばいいかわからない人たちに冒険者ギルドで働いてみないかと声をかけている。
ギルドで働くのならば寝床や食事が提供されるし、もちろん給料だって支払われる。だから仕事をしないかと誘われて断る者は少ない。
生活が保障されること以外にギルドで働くメリットは他にもある。
それは同じ境遇の者がギルドには数多くいることだ。
同郷の者が近くにいるのはなにかと心強いし、悩みの相談もしやすい。
慣れない世界で生活を始める者たちにとって、この冒険者ギルドはある種理想的な職場なのだ。
しかし、ここで生きていく自信をつけた者はギルドでの仕事だけでは満足できなくなる。そしてスタッフを辞めて自力で生きる方法を模索するようになる。
せっかく新しい世界へ来たのだから今までとは異なる人生を歩みたいと願う者は多い。そしてそれをカレタカは祝福する。
お店を始めるという者には相談に乗った上で資金援助をするし、農業をやってみたいという者には農地の確保を手伝ったりもする。
開墾をしなければならないのならそのための道具や人足の手配などをしなければならないが、それにはかなりまとまった資金が必要だ。その資金をカレタカは貸してくれる。
当然、利益が出るようになれば借りたお金は返さなければならない。カレタカもボランティアをしているわけではないのだ。
ちなみに冒険者ギルドを辞める者が次に選ぶ職業の多くは冒険者だった。
命の危険がすぐそばにある生き方なのだが、だからこそなりたいのだという。
ようやく最初の話題に戻った。
ラクリマの視線がロセスから外れる。
ラクリマの指差した先には、曲がった背中に巨大な荷物を背負った老女がいた。明らかに自分の身体よりも大きい荷物だ。
駆け寄ったカレタカがホールの一角へと誘導している。