第8話    転生呪縛と変わらぬ末路

文字数 731文字

『預け神の女神』
それが私の運命(さだめ)
任務ではない。
無論、私の地位がそうさせたのでもない。
これは、天上の奴らが決めたモノでもない。

言うなれば、世の理である。

神が地を生み出した。
神が生命を発現させた。
神が人に知恵と性と情を与えた。
ならば、神はどのような過程により存在したのか。

神は、私に言った。
『我らは、世により生成された役人。我らこの身は、全て世が創り出した土台のみにより成り立つことがかなう。それ故、世があらん事あらば、今すぐにでも我ら神々が形成して得たモノは、我らと共に形諸共消え失せよう』

神は、非常に酷な事を私に申し付けた。
そう思えればどんなに、どんなに楽なものか。
しかし、世の理は神ならざるモノが決めたこと。
ならば、神々に逆らえど意味がない。
更に仕打ちを受けるだけ。

『預け神の女神』
それは、天上界から堕ろされ、神でなくなること。
だが、惜しくも堕天とは異なる。
堕天は、もう光に交わることがない。
そして、神などのために生きなくとも良い。
『預け神の女神』とは、神の地位を失っても、未だ神のために役人として身を捧げる人間のことである。
人間でありながら、肩書きは変わることは無い。
それだけならまだしも、不老不死の人間として永久に生を謳歌しなければならないのだ。
自由に生きることも、死ぬ事も叶わぬ。

偽りの人間として、人間を助ける。
終わりなき人生。
つまらぬ人生。
意味なさぬ人生。

嗚呼、何たる苦痛。
嗚呼、何たる悪夢。

嗚呼、何故……?

『何故……私は、生きているんだ?』

肩に痛みが走る。
あぁ、そうだ。そうだったな、黒鷹。
私は、今ある使命を……――

『戻らないと、いけないんだ』
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