第13話 一つとなった力

文字数 9,546文字


【『tears』は戦いの中心に立っていた。敵を前にした時には体が自然に戦闘の構えに入っていた。】

「前方に30から40。道を開ける。 突っ切れ!」

レンとダイチが敵をなぎ倒す、その間から私たちは更に進行。

「姉ちゃんあそこ!」

「ああ。私たちの出番だ。遠距離の敵は任せな。」

前進してる私たちの横を銃弾がかすめていく。

目の前の狙撃兵たちが次々と倒れていく。

トオルとミオも持てる力で敵を打ち負かしていた。

やはり力を持たぬ民兵程度だと私たちの敵ではない。

銃の扱いも構えてるだけで撃てないものも多くいた。 

「それでも数が流石に多い。力を開放しよう。」

「ええ。いくよティナ。」

私は体に流れるあの感覚を思い出した。すると全身に力が湧き上がってきた。

(これだ。体の節々を痛めつけるような感覚。でもこの時だけは自分の体とは思えない動きができる。)

そしてミナもまた同じ感覚だった。

(この手に宿る炎。やはり熱い…。痛い…。でもこれがないと私は完全に力不足になる。だから我慢。長くは持たないからすぐにケリをつける。)

「よし…この感覚なら…いける!」

ティナは民兵に囲まれていたが一瞬でその場から消えた。

囲んでいた民兵は一瞬にして倒れていった。

ミナを狙う民兵もミナが少し触れただけで一気に点火し爆発を起こした。それに連鎖するように立て続けに爆発していった。

【まさに化学兵器を使ったような殲滅力だった。】

アイリとカイトその他の狙撃兵はスコープで敵を狙いながらもティナとミナの動きをしっかり捉えていた。

額には汗。凄まじい力を目の前に仲間で本当によかったという安心感を感じた。

「姉ちゃんティナの動き見えるか?」

「いや、見えない。 私の狙撃でも当てるのは難しい。ティナのあの動きは確実に足と体に負担をかけている。長く続ければ体の組織が破壊される。あれをリスクなしで使っているのだとしたら無敵だ。」

「ミナも点火してからの爆発。それが周りに飛び火して更に爆発。 あれではどうすることもできない。それにあの色。白の炎は7000度近くあると言われている。火が付くだけでも生きてはいられない温度。それを手に宿すということは手を失う覚悟で戦っているということ。ティナ以上にリスクが高い能力。一瞬でも気を抜けば自分も炎に飲まれる。」

「もしあれをずっと維持できるなら70万だろうが100万だろうが、相手にできるかもしれない。」

多くの民兵たちは仲間がやられているのを見て戦意喪失を起こしていた。

「ば、化け物だ…。俺はまだ死にたくねぇ…。」

「うわぁ!来るな!」

銃を乱射してきた。

「邪魔だどけ!」

(こんな無理矢理、戦わせられている奴らに負けるわけがない。)

気が付けば『tears』に忠誠を誓った民兵たちも何千人も加勢に加わっていた。 

「俺たちもこっち側につく。援護は任せろ。」

「数が多くてもこっちの意思の方が上だ。ただ銃を持っただけで強くなったと勘違いしてるやつには負けねぇ。」

アイリたち狙撃組の正確な射撃に敵の進行が難儀していた。

レンたちの動きが止まる。

「おい、あれって戦車じゃないか?」

「まずいな。近づくこともできねぇ。」

しかしティナとミナはそれに気づいていなかった。

「砲弾発射!」

「まずいぞ、ティナたちを狙っている!」

「おいティナ!戦車が来ている!一旦退け!」

だが声は届いていなかった。

「間に合わねぇ!なんとしても発射させるな!」

レンとダイチは走った。

その瞬間一発の弾丸がレンたちをすり抜け、ティナの横をかすめる手前で弾丸が速度を落とした。ティナはそこで気付く。

(これはアイリの弾丸…?)

弾丸の飛ぶ方角を見た。 

(戦車?気付かなかった…。)

でも私より先に気付いていたのはミナだった。 

その弾丸に触れ火を纏わせていた。

(この一瞬でアイリの弾に細工をした…?)

そしてミナは私の顔をみて軽く頷いた。 

後は任せたという表情で。 

私はその弾丸をナイフの先端で弾いた。威力をつけるように。

すると弾丸が勢いよく戦車の方向へ飛んでいった。

発射と同時に戦車の発射口に直撃した。

すると大きく爆発した。

爆風で吹っ飛ぶ兵士たちが複数人いた。

「ティナ!ミナ!大丈夫か?」

「ええ。アイリの銃弾のおかげで壊せた。」

アイリはグッドサインを出していた。私もそれに返した。

「この一瞬で連携を組むとはな。」

(仲間の力を信じていたからこそできたこと。ほとんどが賭けに近い行動。一歩間違えていたら私たちが爆死していた。)

(生きるか死ぬかの戦いにおいて可能性があるなら全部そっちに賭けるだけ。アイリは私たちに賭け、ミナは私に賭けてくれた。信じてるからこそ出来た。)

「よしこのまま前進する。ほとんどが戦意喪失してる今しかない。」

(手はもうほとんど限界にきている。この戦いに勝ったとしても私はもう力を出すことも出来ないかもしれない。だけどもう少しだけ耐えて。)

戦いは2時間近く続いた。

ウルハ、トオル、イオリ、ハヤトのように直接的な戦闘能力を持たないものたちも銃とナイフで応戦した。

戦いながら進みを繰り返してるからか体力の消耗も激しい。ついてきていた「tears」の民兵も沢山倒れていった。

するとティナも倒れた。

「おい!ティナ大丈夫か?!」

「はぁ…はぁ…体が重い…。それでも立たなくちゃ。」

「無理をするな!おい、お前ら足を止めるな!前進して敵の数を少しでも減らせ!」

「そうよ。ティナは十分やった。私たちが敵を食い止める。」

「ミナごめん。もう少ししたら動けるから。」

「う、うん…。」

「いいえ、もうティナもミナも戦えない。」

ウルハが言った。

「ティナの体は完全に限界を超えている。立っているだけでやっとのはず。それにミナあなただってもう手は使い物にならなくなっている。そうでしょ?」

「…。その通り。」

ミナは腕をみんなに見せた。

皮膚がほとんど焼けただれていた。まだそこに手があるのが不思議なくらいに。

「おい、まじかよ。」

「ごめんこの先戦えないって考えたら黙ってるわけにはいかなかった。」

「私のせいだ。私がもっと早く気づいていれば。こうなる前に止められた。」

「それは違う。ティナ。私も『tears』として国を止めたいって誓ったから。だから勝利するまでは絶対に諦めないって思いで戦ってた。これは私の戦いでもあるの。」

「…。」

「ティナこそ私に黙っていた。そこまできつかったのに話してくれなかった…。私以上にボロボロになっているのに。」

「ごめん。ミナの言うとおりだ。私はいつも他人を守ることばかり考えて自分のことなんて後回し。その結果迷惑ばかりかけている。だけど戦うためにはこの力がなんとしても必要なんだ。 無茶しててでも。」

「ティナ…。」

(私が一番足を引っ張っている。私のせいで『tears』を壊滅に追い込んでしまう…。それだけは避けたかったのに。)

「くそっ!」

私は地面に拳をぶつけた。

アイリの前に女が横切った。

「ティナたちはどうしたんだ?ん?あれは?」

「ティナちゃん!ミナちゃん!みんな!」

私は涙を流しながら振り返った。

「ヒマリ?」

「遅れてごめんなさい。もう傷は完全に治った。ここからは私も戦う。」

「ヒマリごめん。私もミナも、もう戦えない。」

ヒマリは2人の負傷した姿をじっと見つめた。

「わかってる。だから私が来たんだよ。2人とも私の近くに。」

私たちはギリギリの体力で言われるがままに側へ行った。

「今からすることはただの治癒ではない。2人の体に力を使っても耐えられるだけのオーラを纏わせる。それにはとんでもなく大きな精神力とそれに耐えられるだけの忍耐が必要になってくる。」

「オーラを纏わせる…。それだったら力を使っても反動がない…?」

「耐えられたらの話。もし耐えられたら力を制御できると思う。でも出来なかったら…。」

「この力を今後使うことは出来なくなる。」

「う、うん。だからどうするか決めて。やるか、やらないか。」

「答えはもう出てる。わかってるでしょ?私たちの答えは。ヒマリはそもそもそのつもりで急いできてくれたんでしょ?」

「…。わかった。ウルハちゃん。2人の力を最大限に引き出して。そこに私の力を埋め込む。」

「それだとあなたも反動で体をもっていかれる危険があるよ。」

「わかってる。でももう決めたから。2人が望むことに私は力のすべてを注ぐだけ。『tears』の希望だから。」

「…。わかった。 時間がない。一気に行くよ。」

「お願い。ウルハちゃん!ティナちゃんたちも行くよ!」

「ええ!」

「お願い!」

ウルハが2人の胸に手を当てると光る玉のようなものが出てきた。

「くっ!」

「これが2人の能力…!すごい力だ…。」

心臓が引っ張り出されるような感覚と全身が引き裂かれそうな痛み。

ウルハも反動を受けていた。少しでも集中力を切らすと吹き飛ばされそうなぐらいに。

「ウルハちゃんそのまま耐えて。」

ヒマリが手にオーラのようなものを纏わせそれを光る玉に埋め込んだ。

「あと少し…。」

ティナが感じた全身の痛みミナが感じていた火傷の痛みをヒマリとウルハも感じていた。

「くっ。なんて痛み…。意識が飛びそうになる。」

2人も力の重みに倒れそうになる。

するとセイジが駆け付け2人を支えた。

「耐えろ。こんなとこで終われないだろ?お前たちは俺の希望だ。その力を物にしてやつらにぶつけてやれ。」

「セイジ…。」

「ミナ…。力を受け入れるんだ。この力を体の全身に。命と同等に。」

「わかった。私の体に取り込んで。痛みも悲しみも全部受け入れる。」

「うん。いくよ。」

ヒマリとウルハは玉をティナとミナの体に戻した。

(体が物凄く熱い。意識が飛びそうだ。)

私たちは叫んだ。 

すると遠くから男が突っ込んできた。

「させるか!!」

「あいつ病院近くにいたやつか。ウルハが最後に何かを仕掛けた奴だ。まだ生きていやがった。」

「ティナたちを守れ!」

「レンたちはその男の進行を止めようとした。」

男が力を使った。レンは宙に吹き飛ばされた。

「そうだった。こいつは何でもかんでも吹き飛ばす力があったんだ。」

「やべぇティナたちが…。」

アイリもその男を視界に捉えていた。

1発、2発と撃ち込んだ。

だが、男に当たる寸前で左右に流れていった。

「な!私の弾丸が弾かれただと…?!それにあいつ…どこかで。」

「ティナ!ミナ!何やってるんだ!男が接近しているぞ!」

「だめだ。声が届いていない…。 あのままではやられるぞ!」

「死ね!『tears』!」

するとその一瞬光輝いたと同時にヒマリ、ウルハ、セイジが襲い掛かってきた男もろとも吹き飛んだ。

「ぐはっ!」

間一髪でセイジはヒマリとウルハを受け止めていた。

「ティナ!ミナ!大丈夫か?!」

「なに?今の光は…煙で何も見えない。」

スコープでのぞき込むアイリ。

(2人の女…あれはティナとミナ?それに前に立っているのはエイタ?!)

段々と煙が晴れてきた。

「姉ちゃんティナとミナの様子なんだかおかしくないか?」

「なに?あのオーラみたいな煙は…。」

「ちっ間に合わなかったか…。」

「おい ヒマリ、ウルハあれは成功したのか…?」

「ええ。ティナとミナは乗り越えた。自分自身に打ち勝った。」

「力を使ったあとどうなるか…。ここから先は未知の領域…。」

吹き飛ばされたレンたちもティナたちを見ていた。

「ミナ、体はどう?」

「痛みが全部吹き飛んだ気がする。それに手に纏わりついてるオーラのおかげで炎が全然熱くない。ティナは?」

「いい意味で自分の体ではないぐらい痛くない。これが覚醒した真の力…。自分の体の一部として使うってことなんだ。」

「戦いはまだ終わっていないよ。目の前のあいつを倒して先に進む。」

「じゃあさっさと終わらせよう。こんなやつに時間を割いてる暇なんてない。」

「このクソ野郎が!お前らはここで死ぬんだよ!」

「レンあいつはティナたちに任せて俺たちは民兵のやつらを一掃するぞ。」

「ああ。俺たちも負けてられねぇ。」

「何が起こってるのかわからない。エイタまで敵だったなんて。頭が真っ白になりそうだ。でも今はそれよりもティナたちの戦いを邪魔するやつを阻止する。」

男は落ちていた物を浮かせ投げてきた。

ティナとミナはそれをかわしながら距離をつめる。

「おい、お前ら突っ込め!」

突撃してくる民兵たちはティナの動きを追うことすらできず、無防備に切られていく。

ミナに攻撃を仕掛ける民兵たちは次々と炎に包まれていた。そして爆発する。

「くっ! なんて早いんだ…。前までのあいつの動きではない…。これほどまでに強いとは…。上の連中が脅威に感じていたのはこれだったのか。」

男は持っていたサバイバルナイフを2本構えた。

「本気を出す。ここで食い止められないようでは俺も国にどうせ殺される。せめて致命傷だけでも。」

ティナは男を捉えナイフを振った。

カキン!

男は蹴り上げた。

「くそ。また消えた。」

「こっちだ!」

またナイフとナイフが擦れ合う。

ティナの力の方が何倍も上だった。

男のナイフを弾き飛ばした。

「ナイフが触れ合うごとに力を増してやがる。」

「これで終わりだ。」

ティナが踏み込んで切りつける。

それを5回以上繰り返した。

男は立ったまま吐血をした。

「ちっ。俺の負けだ…。」

男は崩れた。

「この辺り一帯はもう組織の連中も捨てている。お前たちの力が開放された時点でもう負けていた。それを一番わかっていたのは国の連中だ。俺はそれを阻止するための捨て駒に過ぎない。」

「あんたは強かったよ。ウルハにかけられた能力を背負ったまま私と互角に戦ったんだから。」

「そうだな。あれがなければ俺も、もう少しまともに戦えていたかもな。だが、この数で戦って負けるようではどっちにしても俺に勝ち目はなかった。」

「その先に待っている希望があれば人はどこまでも強くなれる。あんたは国に忠誠を誓い、自分の意思でここに残って私たちの進行を阻止しようとした。だからこそ強かった。」

「…。ただ俺は生まれ育ったこの町を離れたくなかっただけだ。守りたかった…だけだ。」

「すまないこっちの話だ。三重へ行け…。お前たちならできるはずだ…。それとまだ3人の仲間がいる。あいつらは俺よりも強いから…きをつけ…ろ…よ。それからアイリごめん…な。」

男は静かに息を引き取った。

(アイリ…?)

(何かを得るためには何かを失う。どっちも守ることは本当に難しい。戦いというのはそうゆうものなんだと改めて実感した。)

「ティナ。民兵はもうほとんど戦う意思を失っている。これ以上やる必要はないかもしれん。」

「ええ。組織はもう滋賀を捨てた。」

「こいつが死んだことでもう滋賀の民兵は行き場を失ったって感じだな。」

「大丈夫。居場所は『tears』がある。もしまだ間に合うなら生きて一緒に戦えばいい。分かり合えないなら戦うまでだ。」

「そうだな。」

「ティナ、体は大丈夫?」

「ええ。今度は嘘偽りなしで体のダメージはない。」

「私も。能力を自分のものに出来たって実感がある。手の痛みも消えた。ヒマリの治癒で火傷も治ってる。ヒマリも前より力が上がってるね。」

「うん。これで私もようやくみんなと肩を並べるぐらい戦うことが出来る。」

戦いが終わったことをアイリたちに合図を送る。

「勝ったんだな。あの数に勝てるなんて思わなかった。」

そしてアイリは私が倒した男を見た。

「エイタ…。」

「こいつは私の幼馴染でね。昔よく一緒に遊んだ友達なんだ。まさか敵側についているなんて思わなかった。」

「最後に生まれ育ったこの町を守りたかったって。それにアイリに誤ってたよ。」

「馬鹿な奴だ。自分も守れないくせに何かを守ろうとすんじゃねーよ。」

「…。」

「いや、いいんだ。私たちの敵は国だ。それに忠誠を誓ったものに幼馴染もくそもない。でも今は友人として埋葬してやりたい。」

「わかった。明日の朝方にはここを立つ。それまでは各自、自由行動で。」

「すまない。」

私はかける言葉がこれ以上に見つからずそっとその場から離れた。

(これからもこういった悲しみが増えていくんだ。争いがなければこうはならないと口では簡単に言えるが誰かが止めないと更に多くの涙が流れる。私は少しでもそれを減らそうと動いているだけ。)

(今はただそれが本当に正しいことなんだと思い込むしかない。それ以外の事を考えると怖くなって立ち止まってしまうから。だから振り返らず前だけを見る。)

私たちは大きな焚火を囲い、一時的な休息を過ごした。

この戦いで何万という数の死者と負傷者を出した。

だが、幸いにも駆り出された民兵たちはほとんど生きていた。 

国に尚、従うものは既に滋賀を離れ東京へと移動したらしい。

それでも滋賀には20万近くの兵が『tears』への忠誠に名乗り出た。

次なる地での戦いにみんな備えた。

私はミナ、ヒマリ、ウルハの側に行った。

「…。」

「あ、ティナちゃん。」

「みんなありがとう。さっきの戦い本当にお疲れ様。」

「ティナちゃんもミナちゃんも能力を自分のものにできて本当によかった。これで次も戦えるね。」

「うん。ウルハとミナがいなければ私たちは完全に能力に飲まれていた。」

「ティナたちの精神力が強かったおかげ。私は引き出しただけ。あとは全部ヒマリがいたからだよ。」

「それでもウルハがいなければ能力を使うことすらできなかった。だからウルハがいてくれて本当によかった。ありがとう。」

「…。うん。」

「ティナ。私の能力、ティナの役に立ってる?」

「ミナの能力は強すぎる。あの力があったおかげでこの戦いにも勝てた。ミナこれからも私の力になってね。」

「任せて。ティナとこの力で勝利をおさめる。」

私は大きく頷いた。

「じゃあみんな今日はゆっくり休んでね。明日朝から出発だから。」

「うん。ティナちゃんも体をちゃんと休めてね。」

周りを見渡すとすごい戦いをしたことが一瞬でわかった。

レンたちを見るとナイフを研いでいた。常に戦いを始められるように。

「ミオとハヤトはもう寝ているのか。それもそうだよね。病院でてからまともに休息なんて取ってこなかったから相当疲れているはず。」

「あれはセイジとダイキ?何か話してるのかな?」

2人で酒を飲んで何か話していた。私は隠れるように2人の話を聞いていた。

「酒なんて久しぶりに飲んだな。」

「俺もだ。ここのとこずっと戦いばかりだったからな。」

「セイジは元組織側の人間だったんだろ?」

「ああ。最後の任務がティナの始末だった。」

「ティナの始末か…。それで果たせなかったと?」

「完敗だった。16の子供にやられたんだからな。。」

「お前が弱かったわけではない。ティナが強かっただけだ。」

「そうだな。それで俺は自害しようとした。ティナを始末できなかった俺はもう組織としても人としても生きていくことはできない。」

「でも生きている。何故だ?」

「最愛の娘を組織に奪われた。」

「…。」

「復讐してやろうと言うのが真っ先に思い浮かんだ。でも冷静に考えると俺の力ではどうすることもできないのは組織にいたおれだからこそ一番よくわかっている。でもこのまま死ぬのは違うって思ったんだ。」

「それでティナについていこうと?」

「ああ。ティナについていけばその組織に近づくことすらも可能だと思った。あわよくば娘を殺したやつに触れる事すらも叶うと思った。だがそれだけでよかったはずなのに新しい国を作るという目的に変わっていた。」

「『tears』…。本当にあいつらならやれそうだ。今回の戦いでわかった。国が1つの町を手放したんだ。少なからず勝ち目はあるってことだ。」

「他人事みたいに言ってるが、お前も俺も『tears』だ。ティナたちが負けないように俺たちも命をかけて戦うんだ。もうここまで来たら後には退けない。」

「そうだったな。すまない。俺たちも能力を更に高める必要も今後出てくるかもな。今のままでは戦力不足だ。」

「ティナのあの力を見たらそう思うのは無理もない。ヒマリも一段階強くなっているんだ。」

「オーラのことか?」

「ああ。あれは治癒力ともう1つの力。ヒマリはティナとミナの能力をなんとかリスクなしで使えるようにならないかをずっと考えていた。すると体が光りだして何かに気付いたのか飛び出して行った。」

「それでさっきあの場面で合流したのか。」

「ティナとミナみたいに力を引き出されて身につけるやつもいれば誰かを守りたい一心で能力を開放するものもいるってことだ。」

「俺たちも、もっと力がいるな。」

「ああ…。」

「今日は飲もう。生きてるからこそ飲めるし話すことも出来る。今しかできないことを少しでもしたいんだ。」

「とことん付き合うぜ。だが死ぬなら国を作ってから死ぬんだな。目的を果たせないまま死んだら娘に笑われちまうぞ。」

「ふっ。言ってくれるな。」

(…。)

私はアイリの元に行った。

「アイリ、カイト起きてる?」

「ああ、ティナ。カイトはもう寝たよ。もう体は大丈夫か?」

「ええ。私はもう平気。エイタだっけ?埋葬は終わったの?」

「さっき終わらせてきた。こんな状況だ。簡易的だけどこの戦いが終わったら立派な墓を建ててやるつもりだ。」

「そっか。それと今日の戦い、アイリたちの狙撃には本当に助けられた。」

「ティナたちが先陣をきってくれたおかげだ。近距離に持ち込まれていたら私ではどうにもできなかった。」

「じゃあ助け合えたってことで。」

「ああ。滋賀の人達も三重での戦いに参加してくれる。今回の戦いより少しは有利に戦えるはずだ。 この勢いで東京まで止まらずに進もう。」

「うん。明日もよろしくね。それから無茶はなるべくしないで。」

「それはお互い様だ。『tears』の主君を失えばすべて失ったのと同じ。だからティナは絶対殺させない。」

「それは私も同じ。大事な仲間を失うということは私も死んだと同じに見てるから。」

「はは。肝に免じておくよ。それじゃあ今日はもう休んで明日に備えよう。」

「うん。じゃあ、お休み。」

「私も自分の寝床に戻った。」

(みんな、明日を生きるために戦っている。自分の命より私の命を守ろうとしている。それは嬉しいことでもあり反対に私が一番望んでいないこと。私は大切なものを守る為に戦っているから。私と同じ考えの人がいるのは当然だ。だからこそお互いを守り合う。国がやっているのはその逆。命なんてなんとも思っていない。自分がよければそれでいいという身勝手で残忍な思想。ただそれを止めただけではまた誰かが同じことを繰り返す。だったら私が自分の国で塗り替えてやる。そんな思いでいま戦っている。それに賛同してくれている人達もいる。」

(ある意味それが答え。私がここで死ぬということは託されたものそしてついてきてくれた仲間を裏切ることでもある。だからみんなは私をなんとしても守ろうとする。国の王を国民、兵士がみんなで守るように。私は『tears』の王…。夢を見ているような話。まるで絵本のような話。でも…これが現実なんだ。受け入れないといけない。それだけもう大きく事が動いてるから。今日寝て明日起きたらまた戦争。これの繰り返し。今はそれだけを考える。今日いなくなった人の分まで全力で生きて戦う。そして最後はみんなでかちどきを上げる。)

『次に進むべきは三重。』

『どれだけの敵が待ち受けていて次はどんな能力を持ったやつが待ち構えているかもわからない。だがどんなやつがきても負けない。絶対負けるわけにはいかないんだ。』


【ティナとミナはウルハ、ヒマリによって覚醒した能力の玉をオーラで包み体に戻した。それにより今まで体に受けていた反動が消えた。この戦いで滋賀の民兵を束ねるエイタが死亡した。そして滋賀を完全に制圧したのであった。『tears』は次なる戦いの舞台、三重に向かおうとしていた。】
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