第1話

文字数 977文字


 今から千年後・・・
 人類は広い宇宙に進出し栄えた。千年の時代の変化とともに、分断された音信不通の星や町、廃れて使われなくなった人類都市が増えていた。
 地球では、人類の離散を防ぐため、また、滅亡した人類の文明が滅びるままに放置されているのを危惧し、人類の歴史を採集するため、人類都市滅亡と勃興の実態調査隊が作られた。
 調査隊にはさまざまな専門家の老若男女が集められた。
 記録と採集の保存官として勉学を積んだ学士のヤマトは、やんちゃでギャグが好きだが、記録の細かさと、細部まで数値を集める力は優れている。
 人類宇宙領土的生態学の博士草彅教授のお付きとして、ヤマトは第一回目の人類盛衰記録採集へと旅立つ。
 

 最初は木星の衛星タイタンでの滅亡記録だ。さびれた鋼鉄ビル、苔むした道路、乾いた風が吹く衛星タイタンの都市は、惑星上にドーム型の居住可能空間が作られていたが、空気の循環維持装置が壊れかけていた。
 そこで生きる動物たちは一匹もいない。植物も草木も。ただ、小さな虫と苔や菌類がわずかに生きているだけだ。
 滅亡都市タイタンとして、ヤマトは都市の崩壊状態や滅亡状態を記録した。
 宇宙船のパイロットとして教授の専属となって働く女の子リボンは勝ち気でそそっかしい。教授とヤマトが細心の注意を払いながら調査していく中、リボンがうるさく騒いで足止めをする。移動型宇宙船のAIレイはナビゲータ役としてリボンを監視し、なんとか一難を取り留める。調査は毎回、邪魔とレイの指令で何とか進む。
 

 都市の中枢地区まで行くと、滅んだ都市の運営者、ハード船長からロボットを通じてメッセージが流れた。
「この町を訪れた人に言おう。この町は生きてない。多量の放射能により、生物が生息不可能となった。この町は死んだ。この町に居残ることは推奨しない」


「都市は、その土地や気候、風土により、さまざまな理由で滅んだ。それを知ることが我々の使命だ。いつか、我々の地球も滅ばぬように」
 草彅教授はヤマトに言う。
「次は、人類が築いた優れた町が見たいものだ。行こう」
「はい」
 尊敬する教授に言われて、博士の言葉を記録するとともに、地球のために人類盛衰の研究をせねばと、気持ちを新たににするヤマトだった。
 教授とともに、ヤマトは次の調査地へ旅立つ。
 次には、栄えた人類の都市がある惑星があると信じて。
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