第4話(6)

エピソード文字数 2,869文字

『オマエの心臓だよ!!』。
 その台詞を受け、俺は瞬時に理解をする。
 この身体にある心臓は、究極奥義を宿すもの。つまりコイツは異世界人だ!!

「もらったぁ! これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!
「っ、まだだ! 終わりじゃねぇよっ!」

 俺はバックステップで距離を取り、伸びてきていた切っ先をギリギリ躱す。あとはここから――

「ぐっ! しまった!?

 先のバックステップは、無理矢理な動作。そのため俺はバランスを崩し、尻餅をついてしまう。

「なっ、なんだねキミは! 優星君に何をする!!
「その子はただの販売員ですっ! 文句があるなら、アタシ達に――」
「その体勢だと次は避けられまい! しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 男は歯を剥いて飛び掛かり、白く光る刃が再び伸びてくる。
 や、ヤバいっ。この距離だと、『金硬防壁』が間に合わないぞ――

《ざけんなよ 思い通りにゃ させねーぞ》

 橙式ちゃんが俺達の間に割って入り、掌で凶刃を止める。
 流石は、化け物クラスの英雄様っ。距離があっても楽々防いでくれた。

「ちぃっ、『戦場空間』展開! 作戦Bを発動だっ!」
「にゅむっ、その作戦さんはさせないよーっ! 『尖光金刺(せんこうきんし)』!」

 俺の後方にいるレミアが、金色の剣・『黄金浄化』を勢いよく突き出す。そうしたら、剣先から尖った金の光線が飛び出し――

「ごはっ!」

 男の腹部に風穴が開き、ソイツは黒い煙となって死んだ。

「助かった! 二人ともサンキュー!」
「従兄くんっ、気を抜いちゃ駄目よっ。死んでも空間が解けていない――空間が引き継がれているから、敵は残ってる――」
「そうだ。まだ、十二人いるんだぜ?」

 同じくチャラい系の男達が、十数メートル前方に出現した。
 さっきまでは、存在を確認できなかったからな。コイツらは全員、車の陰に潜んでいたようだ。

「皆様、本番はここからでございます~。お互い楽しもうや」
「…………師匠らぁは穏やかな時間を過ごしよったのに、おまんらがぶち壊したがよ……! 楽しめるワケがなくて、ワシは普段以上にムッとしちゅうがよね!」
「私も、表現しきれないくらい腹が立っているわ。魂まで漆黒で染めてあげましょう」
「ふっ。残念だが、さしもの魔王達でも無理だな。オレらにはコレがあるんだよ」

 先頭にいる男が、余裕綽々で一笑。TVのリモコンに似た形の機械を挙げた。

「にゅむ……? それは、なーに……?」
「これは指定した座標にいる生物を、特定の場所に運べるマシン。要するにコイツは、オレ達とその男だけワープさせられる優れ物さ」

 俺と、敵だけ。レミア達と隔離するつもりか……っ。

「みんなっ、従兄くんに抱き付いて! 同じ座標に入れば一緒に動けるわっ!」
「はっ、おせーよ。『ムーブマシン』、起動!」

 その瞬間、周囲の景色が真っ黒になり――。その黒が消えると、俺はだだっ広い部屋にいた。

「くそっ。ここはどこだ……?」

 仲間達がいなくなった空間で、俺は呟く。

「レミアとの契約が発動していないから、違う次元ではなさそうだが……。一体、どういうトコなんだ……?」
「ここは、オレらが作った特製の空間だよ。色々な要素がプラスされた、『戦場空間』と思ってくれていい」
「オレ達『賢長族(けんちょうぞく)』は、肉体が貧弱な代わりに頭脳明晰でね。自作のマシーンで、こういうことができちゃうんだよ」

 後方にいた十二人の敵は薄笑いを浮かべ、短刀、長刀、剣、鉈などなど。懐から多種多様な刃物を出す。

「この空間に、出口はない。大人しくオレ達に殺されな」
「素直に従うなら、楽に殺ってやるよ。逃げ回るのは、百害あって一利なしだぞ?」

 賢長族の連中は余裕一杯で、一様にペロッと刃を舐める。
 俺が、色紙優星がだ。究極奥義を得た一般人だと思い込んで。

「…………お前らは、あの番組を見ていないんだな。こちらには別の力もあるんだよ」
「なに……? そんなはずが……」
「あるのさ。俺はな――」
「魔王使いで、魔王と同じく聖金術を使える。しかしながら、後者はハッタリなんだよなぁ?」

 真ん中で焦っていた男が、口の端を吊り上げた。

「全次元最強決定戦、ばっちり拝見させて頂いたよ。決勝戦で神蔵王器に大ダメージを与えたのは、勇者である魔王さんの力なんだろ?」
「なっ……。お前らは、試合を見て――それはいいっ。どうしてそうだとわかったんだ……!?

 命令は聞き取れないように『虹の増速』を使っていたし、念のため読唇されないようカメラの死角で行った。なのになぜ、聖金術を使えないと見破られた……?

「オレらは、『力』を分析できる装置も持ってるんだ。あの太陽からは『黒真レミア』のデータが検出されたんで、オマエは聖金術なんて使えないと気付いたんだよ」
「だから、な。ちゃーんと、魔王対策を用意してる」
「オマエが魔王を使役し攻撃を仕掛けた刹那、全員が別の空間にワープする仕組みになってんだ。絶対に、魔王様の御力は借りれねーぞ」

 一人が部屋の片隅にある妙な機械を指差し、ニンマリと笑う。
 ……コイツらは全て知っていて、対策を練ってきてるのか……。あの放送には必ずビビらせる効果はなく、逆に研究されて狙われやすくなるデメリットがあったんだな……っ。

「おまけに、オマエは高速で動けるんだろ? なので部屋を維持する装置を壊せないように、賢長族以外が触れたら別の場所にワープするようになっておりますよー♪」
「そして、おまけその2。『力』でオマエの居場所を特定できないように、ここは特殊な電波で覆っておりますですー」
「そしてそして、まさかのおまけその3っ。この空間にいる間オレらは3倍の強さを得られるから、貧弱でもオマエ如きには負けませんぞー」
「………………っ、最悪だ。絶体絶命、ってやつだな……!」

 とことん対策をされていて、多分『チェンジ・マナ』、『虹の増速』、『金硬防壁』があっても勝てない。あのお守りの件は、これを予測してたんだな……。

「かかかっ。魔王使い様よ、この世を制するのは頭脳なんだ」

 奥歯を噛んでいると、中心にいる男がせせら笑った。

「どの世界でも大抵、頭の良いヤツが上に行くだろ? 力が平凡でも類まれなる頭脳があれば、英雄だろうが何だろうが怖くないんだよ!」
「さーてぇどうするぅ、地球人さん。すぐ楽に死ぬ、少しだけ長く生きて苦しんで死ぬ、どちらを御所望ですかぁ?」
「…………粘ってたら……。何らかの形で、見つけてくれるかもしれない……」

 その可能性は、0に近いだろう。だが、0ではない。

「俺にはまだまだやりたいことがあるし、アレのためにもここで死ぬワケにはいかないかんな。無力な地球人は、第3の選択肢――」
「仲間に退治を頼む。を選ぶに決まりだね」

 不意に――。俺の声が、遮られた。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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