第1話 第1のポエム

文字数 1,665文字

あなたのため息出るほどの美しさに時は歩みを忘れ

忘却した懐かしい思い出が鮮やかに甦り幸せの涙が止まらない










一つの命が生まれ

一つの命が消える

歓びと悲しみは交互にやってくる

人は流れに翻弄され立ち竦むだけ

いくら永遠の幸せを誓っても

時間に裏切られ愛する人の死に立ち会う

人はこの世の儚さを知り泣きながら眠りに落ちる

泣き濡れた瞼の奥で幼い頃の夢を見る

幸せに満ちた記憶が温かい涙になる















僕の愛はあなたに届かない

 いくら愛しても愛しても

僕の理想は叶えられない

 いくら願っても願っても

理想に燃えていた若い日
 
世界の人々の幸福のために
 
この身を捧げようと思っていた

 あの情熱は何処へ消えた

あなたともう一度抱き合えたら

失われた夢の名残を甦らせるだろう















高校の頃、学校の帰り道
友達と別れる時
彼はいつも言った
「生きてろよ」

そう僕は傍目から見ても
死にそうに見えたかもしれない

そんな彼の葬式に行ってきた
彼の写真は相変わらずだった
「生きてろよ」
そう言って笑っていた

僕が生き残っちゃったね
これは何の悪戯か
でもまたあの世で会おう















今はこの世にいない人達
沈黙の時を過ごしている
美しかった人も
信心深かった人も
野心家だった人も
自殺した人も
犯罪者も
殺人者も
宗教家も
政治家も
商売人も
音楽家も
女優も男優も
教育者も
警察官も
検察官も
裁判官も
みんな等しく眠っている
風が樹々を微かに揺らす
死の安らぎに眠っている














深夜に僕の詩集を読んで下さる方が何人かいらっしゃる

どういう人なのか気になる 男性か女性か

もう午前3時、本を閉じて寝られることを密かに願う

僕の詩集はTwitterから派生していて短いが凝縮している

次々と詩があるので癖になると言った友人もいた

でも眠れぬ夜に手にして下さるのは嬉しい











あなたは現実と幻想の狭間で疲れ果てていた

あなたは壊れやすい硝子の上で舞踊していた

あなたは真摯に仕事に取り組んだが心身が限界だった

あなたは様々な人生を演じるうちに自分を見失った

あなたの泣き疲れた素顔を誰も見抜けなかった

春の野原で草をはむ馬のように天国でゆっくり休んでほしい













恋をしていなければ恋の詩は生まれない
人を愛していなければ愛の詩は生まれない

だから僕にはそういう詩は書けない

だけど若い頃一生分の恋をした
だから僕は思い出して恋の詩が書ける

みんな過去の事 でも新鮮な思い出

今なら人類愛の詩は書けるだろう
でも一人の人を愛する詩はもう書けない















あの夏の日
初めて君の浴衣姿を見た

君は爽やかに微笑んでいた
僕は眩しくて正視できなかった

お祭りが賑やかになってきた
祭囃子が聞こえてくる

君は髪に飾った花を揺らし
踊りませんかと僕を誘う

君の手が初めて触れる
感動で一杯になる

好きと言ってくれますか
心の中で呟く

遠い夏の思い出















我々は天使であり悪魔でもある
我々は善良であり邪悪でもある

愛し合っていても事情が変われば憎み合う
恋し合っていても事情が変われば殺し合う

愛すると同時に憎悪でき
愛が募れば募るほど憎悪は増していく
苦しめられることでも恋は生まれる

とことん人間は不可解な生き物
人の数だけ正義がある

















時が過ぎればどんなに嫌な感情も和らいでいく
最後まで残ったしつこい感情も死と共に消える

時は癒し、死は精算
死が全てを解決してくれる

執拗な怨念も死の炎が灰にしてくれる
執念深い生への執着も灰となって舞う

生の悩みはたかだか80年くらいで終わる
慌てずとも死の方からやってくる
















人は無目的に生き、無目的に死ぬ
宇宙も無目的にあり、無目的に消える

生きることは何かのイリュージョンの中にいるようだ
人生という魔術にかけられているようだ

誰も魔術をかけた人を知らず、魔法にかかったまま
生きて死んでいく

人生はお伽話と変わらない、絵本の中と変わらない、
現実とは何だ













波間に漂う月の欠片と美しい女性
この静寂の時を愛する









通りゃんせ通りゃんせ
煉獄の門はここにある

善人も悪人も通りゃんせ
ここで閻魔様の裁きを受ける

浄瑠璃鏡がお前の罪を映し出す

良い行いをした者は極楽浄土へ
悪い行いをした者は地獄の底へ

誰も浄土には行かさせぬ
一皮剥げば悪の素顔が露出する

善意の中に悪意はあるが
悪意の中に善意はない
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み