第16話 日曜礼拝・ミッション
文字数 1,631文字
僕細石 厳央 が、後藤 伊吹 さんの魂が入れ替わって七日間が経った。
サタンの話では今日元の身体に戻して貰えるはずだ。
女の子の身体にも慣れてきたのでちょっと寂しい気もするけど、やっぱり元の身体の方がいい。
日曜日で学校が休みとはいえ、昼まで寝坊はできない。
日曜日には日曜礼拝というのがあって、みんなで集まって礼拝をしないといけない。
聖ジェルジオ女学園の敷地内には校舎の他に聖堂がある。
日曜日には生徒だけでなく、一般の信者も礼拝に来るという。
ヨシアさんと二人で聖堂へと向かう。
聖堂の真ん中にはトンガリ屋根の塔。てっぺんに十字架が掲げられており、塔を中心に切妻屋根が左右対称に広がっている。
聖堂正面の階段の前ではマリア像が出迎えてくれた。
中へ入ると正面に大きなステンドグラス。十字架に架けられたイエス・キリストが描かれていた。
建物の左右にも細めのステンドグラスがいくつか並んでいた。こちらは何やら人が描かれているがよく分からない。
まだ人が少ない聖堂の中、ステンドグラスを見ながら前の方へと進んだ。
そのステンドグラスにドラゴンが描かれていた。
「ド、ドラゴン? 聖書にドラゴンが出てくるの?」
「これは聖書のエピソードじゃなくて、聖ジェルジオの話ね」
「ジェルジオって、この学校、聖ジェルジオ女学園のジェルジオ?」
「そう。ギリシャ語だと聖ゲオルギオス。英語だとセント・ジョージ。
スペイン語だとサン・ジョルディね」
「サン・ジョルディって、四月にあるサン・ジョルディの日の?」
「それは知らない。どういう日?」
「確か、本とバラを贈りあう日だったはず。由来は何だったかな……」
「聖ジェルジオは竜退治をした聖人なの」
「詳しく教えて欲しいな」
「あるところに大きな竜がいて人々を困らせていたの。
村人は毎日羊を生け贄にしていたのだけど、羊がなくなって人間を出すことになったの。
クジを引いて生け贄を決めたところ当たったのは王様の娘。
そこへジェルジオが通りかかって竜退治を買って出たの。
竜に勝ったジェルジオは竜を手懐けて村人にけしかけて『竜を殺して欲しければ、キリスト教徒になれ』と言ったの
村人はキリスト教に改宗してめでたしめでたし」
「これ本当に聖人の話? 脅して改宗を迫るなんて」
「異教に染まっていた村人を真の救いに導いたのよ。いい話でしょ」
「……それはそれとして、今の話はスサノオの話に似ているなあ」
「スサノオ? 日本神話の? どういうお話?」
「色々あって神様の国高天原を出たスサノオは出雲国 に行ったんだ。
そこで首が八つあるヤマタノオロチに生け贄に出されようとしていたクシナダヒメに会ったんだ。
で、ヤマタノオロチを退治することに。
スサノオはヤマタノオロチにお酒を飲ませて酔っ払わせて倒したんだ。
倒したヤマタノオロチの尻尾から天叢雲剣 が出てきて、それが天皇家の三種の神器の一つになっているんだ」
「本当、似ているわね」
聖堂に人々が集まり、神父さんのお話が始まった。
礼拝が終わり、出て行くときに見覚えのある顔の男がこちらを睨んでいた。
僕だ!
細石厳央の身体ということは、中身は後藤伊吹さんか?
一度会って話をしてみたいと思ってはいたけど、向こうから来てくれるとは。
「お知り合い?」
ヨシアさんが不安げに聞いてきた。
「ちょっと……ね。
話があるみたいだから、行ってくるね」
「心配だから私も一緒に話をしましょうか?」
「いや大丈夫だよ。二人っきりで話をしたいみたいだし」
「そう? こじれそうだったら助けを呼んでね」
「そんなことにはならないと思うけど。でも、ありがとう。助けが必要な時にはお願いするね」
初めてイブキさんと対峙する。
お終いの時は近い。
サタンの話では今日元の身体に戻して貰えるはずだ。
女の子の身体にも慣れてきたのでちょっと寂しい気もするけど、やっぱり元の身体の方がいい。
日曜日で学校が休みとはいえ、昼まで寝坊はできない。
日曜日には日曜礼拝というのがあって、みんなで集まって礼拝をしないといけない。
聖ジェルジオ女学園の敷地内には校舎の他に聖堂がある。
日曜日には生徒だけでなく、一般の信者も礼拝に来るという。
ヨシアさんと二人で聖堂へと向かう。
聖堂の真ん中にはトンガリ屋根の塔。てっぺんに十字架が掲げられており、塔を中心に切妻屋根が左右対称に広がっている。
聖堂正面の階段の前ではマリア像が出迎えてくれた。
中へ入ると正面に大きなステンドグラス。十字架に架けられたイエス・キリストが描かれていた。
建物の左右にも細めのステンドグラスがいくつか並んでいた。こちらは何やら人が描かれているがよく分からない。
まだ人が少ない聖堂の中、ステンドグラスを見ながら前の方へと進んだ。
そのステンドグラスにドラゴンが描かれていた。
「ド、ドラゴン? 聖書にドラゴンが出てくるの?」
「これは聖書のエピソードじゃなくて、聖ジェルジオの話ね」
「ジェルジオって、この学校、聖ジェルジオ女学園のジェルジオ?」
「そう。ギリシャ語だと聖ゲオルギオス。英語だとセント・ジョージ。
スペイン語だとサン・ジョルディね」
「サン・ジョルディって、四月にあるサン・ジョルディの日の?」
「それは知らない。どういう日?」
「確か、本とバラを贈りあう日だったはず。由来は何だったかな……」
「聖ジェルジオは竜退治をした聖人なの」
「詳しく教えて欲しいな」
「あるところに大きな竜がいて人々を困らせていたの。
村人は毎日羊を生け贄にしていたのだけど、羊がなくなって人間を出すことになったの。
クジを引いて生け贄を決めたところ当たったのは王様の娘。
そこへジェルジオが通りかかって竜退治を買って出たの。
竜に勝ったジェルジオは竜を手懐けて村人にけしかけて『竜を殺して欲しければ、キリスト教徒になれ』と言ったの
村人はキリスト教に改宗してめでたしめでたし」
「これ本当に聖人の話? 脅して改宗を迫るなんて」
「異教に染まっていた村人を真の救いに導いたのよ。いい話でしょ」
「……それはそれとして、今の話はスサノオの話に似ているなあ」
「スサノオ? 日本神話の? どういうお話?」
「色々あって神様の国高天原を出たスサノオは
そこで首が八つあるヤマタノオロチに生け贄に出されようとしていたクシナダヒメに会ったんだ。
で、ヤマタノオロチを退治することに。
スサノオはヤマタノオロチにお酒を飲ませて酔っ払わせて倒したんだ。
倒したヤマタノオロチの尻尾から
「本当、似ているわね」
聖堂に人々が集まり、神父さんのお話が始まった。
礼拝が終わり、出て行くときに見覚えのある顔の男がこちらを睨んでいた。
僕だ!
細石厳央の身体ということは、中身は後藤伊吹さんか?
一度会って話をしてみたいと思ってはいたけど、向こうから来てくれるとは。
「お知り合い?」
ヨシアさんが不安げに聞いてきた。
「ちょっと……ね。
話があるみたいだから、行ってくるね」
「心配だから私も一緒に話をしましょうか?」
「いや大丈夫だよ。二人っきりで話をしたいみたいだし」
「そう? こじれそうだったら助けを呼んでね」
「そんなことにはならないと思うけど。でも、ありがとう。助けが必要な時にはお願いするね」
初めてイブキさんと対峙する。
お終いの時は近い。