十三、
文字数 539文字
十三、
弟の告白を受けて、私はひどく哀しくなった。そしてその理由を逡巡する間もなく、先ほど口にできなかった残酷な答えが、私の心臓へ烈しい痛みを伴って降り立った。
私たちは姉弟なのだ。いくら互いに愛し合っていようと、決して結ばれぬ関係。周囲からの理解も得られず、永遠に容認され得ぬ間柄。天地が覆ろうと私たちは男女として契ることは出来ない。二人の間に流れる血が語る、自然の道理。それをとっくに知っているから、私は涙を流したのだ。それをずっと分かっていたから、弟はこんなに哀しい顔をしていたのだ。
私はそんな悲痛な感情を抱きながら、弟の顔を見つめ返すことしかできなかった。弟もそれを受けて特に落胆した様子もなく、とうに心得ていたかのように哀し気に微笑んだだけだった。弟が己のすべてをかけた告白は誰にも受け止められることはなかった。宙に浮いた覚悟が重い岩壁に染み入る音を私は聞いた。開け放たれた窓から、冷たい夜風が二人の間に吹き渡った。
長い間黙ったぎりでいた二人はどちらからともなく抱擁を交わした。上背のよく似た二人はともすると取り違えそうなほどにそっくりな形を腕に抱き締めていた。そうして互いの温度を感じている内にこみ上げる衝動が抑えきれず、気づけば私と弟は身を震わせて泣いていた。
弟の告白を受けて、私はひどく哀しくなった。そしてその理由を逡巡する間もなく、先ほど口にできなかった残酷な答えが、私の心臓へ烈しい痛みを伴って降り立った。
私たちは姉弟なのだ。いくら互いに愛し合っていようと、決して結ばれぬ関係。周囲からの理解も得られず、永遠に容認され得ぬ間柄。天地が覆ろうと私たちは男女として契ることは出来ない。二人の間に流れる血が語る、自然の道理。それをとっくに知っているから、私は涙を流したのだ。それをずっと分かっていたから、弟はこんなに哀しい顔をしていたのだ。
私はそんな悲痛な感情を抱きながら、弟の顔を見つめ返すことしかできなかった。弟もそれを受けて特に落胆した様子もなく、とうに心得ていたかのように哀し気に微笑んだだけだった。弟が己のすべてをかけた告白は誰にも受け止められることはなかった。宙に浮いた覚悟が重い岩壁に染み入る音を私は聞いた。開け放たれた窓から、冷たい夜風が二人の間に吹き渡った。
長い間黙ったぎりでいた二人はどちらからともなく抱擁を交わした。上背のよく似た二人はともすると取り違えそうなほどにそっくりな形を腕に抱き締めていた。そうして互いの温度を感じている内にこみ上げる衝動が抑えきれず、気づけば私と弟は身を震わせて泣いていた。