第271話 『にごたん』の話。
文字数 3,032文字
南ノさんからいただいたレターの返信に、僕は謎の受け答えをしてしまったと思ったので、解説の必要性が出た。ので、ここで解説したいと思う。
変な話かもしれないけど、僕は常に、「もう自分は小説が書けなくなるのではないか」という不安と戦っている。もう一文字も書けない、そんなときが突然来るのではないか、という不安が常にあるのだ。今、僕はいろんなタイプのコンテンツを観賞し、これからに役立てようとしているのだけど、入出力の切り替えが上手くいかなくなるので、「さ。なにか書くか」ってときに筆が止まる。その書けなくなった瞬間に、ぞくっと背筋が凍る。「書けなくなった!」と思ってしまうのだ。よく、机の前に座ってワープロソフトを開いて一日中、なにも思いつかずなにも書くことが出来なかった、という話を聞く。が、僕は、そんな状態になったことはない。むしろ、そんなのは笑い話か、もしくは本当にそんなことがあったら、そいつは「ヌルいな!」とさえ思ってしまう。
昔、三題噺のお題を出された直後からスタートして5000文字の小説を2時間半以内に執筆、推敲、アップロードして、制限時間のその直後から、アップロードしたみんなで作品を批評し合う、という企画に参加していた。そのときのメンバーのほとんどは、今では商業作家や書籍化作家と呼ばれる作家になってしまった。アマチュアなのは、僕くらいのものである。そんなことをやっていたので、正直、お題が出されて「なにも書けない」は、ただの甘えのように思える。それは「なんでもいいからとにかく書く」ことの場合で、もちろんクオリティなどを考えるから、書けないってことは十分にある。ただ、書けないって言うひとは、おそらくは自分は偉大な作品を必ず書けると思い込んでて逆に書けないというジレンマに陥っているのではないか、と思うのだ。
今は、僕はnoteの自主企画に参加しているけど、それだって、年に二回、レギュラーメンバーでお題企画がある。そこのメンバー、僕よりみんな年上でじゅうぶん鍛えてきた人間なので、僕も本気で書いている。なので、「書けないよー」と悩むけど、当然だが締め切りには間に合わせている。
NOVEL DAYSのコンテストに、数年前と比べて今はあまり参加しないのは、「なんでもいいって言うならいくらでも即座に書けるから」である。今日、ちょっとだけ思ったのは、お題が出された日から一日一回、必ず一作品を投稿し、一ヶ月で31作品を書く、という案だ。一回のコンテストで31作品投稿、そんなの無理すれば可能である。やろうかな、と思ったが、さすがにそれは運営にとっても迷惑なのではないか、と思って却下した。まあ、そんな案配である。
と、そんな風に、書けないってことはないのだが、だからなのか、この自信が反転して、「一文字も書けなくなったらどうしよう」と思うのだ。いや、対抗策はある。エディタを起動させたら、てきとーに一文字、「あ」とかなんとか入力するのだ。で、その「あ」から連想して、ワンセンテンスの文章をつくる。例えば、「ああ、愛してる」など。で、さらに連想ゲームで「ああ、愛してる。でも、すでに君はここにいない」とかなんとか、繋げていくのだ。これで、書くことはいくらでも可能だ。
そう、小説が書けなくなることって、ないはずなのだ。なのに、不安は常にあって、僕を苦しめるのだ。
南ノさんからいただいたレターの返信に謎の「書けなくなったらどうしようという不安がある」って内容を書いたけど、それは詳しくはこういうことだったのである。
2023/01/15 16:43 コメント(-)| 対話篇
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