遊宴の刻

文字数 809文字

200を軽く超える数の人々が一堂に会していた。

だがしかし、誰も私たちに敬意を示さない。

彼らにとって私たちはただの飾り、華やかな遊宴の席を彩る欠片に過ぎないのだから。


―――――――――――――――――

煌びやかなシャンデリア。
スーツを身にまとったきらびやかな淑女、色とりどりのネクタイを身に着けた紳士たち。

語り合う彼らの言葉には、いくつものの思惑が混ざり合う。

尊敬、嫉妬、打算。

暖色を装ったとしても、奥底に佇む灰色は覆い隠せない。
人間たちは気付かないそんな感情も、私たちは感じ取ることができる。

灰色の思惑を包んだ言葉を発する両唇に、私たちは飲み込まれていく運命なのだ。

もう何度目だろうか。輪廻を繰り返しても、食べられる瞬間の激痛に慣れることはない。

しかし、それが私たちの使命だ。人間たちの胃袋を満たし、食事を通して幸せを味わってもらいたい。

飽食の現代、そんな願いを理解してもらうことは、簡単ではない。


―――――――――――――――――

淑女や紳士たちにとって、目の前の飲食物は飾りにすぎない。
立食というのはそういうものなのかもしれない。

私たちが山盛りに盛り付けられている理由は、見栄えのためなのかもしれない。

いいや、違う。そんなはずはない。

私たちは、人々に満足してもらうために調理されたはずなのだ。


代わるがわる壇上に立つ`お偉い方々`の話は、彼らにとって有益でかけがえのないもののように思える。

いや、本当か。

私にとっては、`お偉い方々`のスピーチは、耳障りだけは立派だが、自己保身と権力誇示に満ち溢れた中身の薄い言葉にしか聞こえないのだ。

そんな薄っぺらい言葉に対して、人々は感嘆の声を上げる。


「エイエイオー!」

「オー!」

壇上の男性の上げる気勢に従って、誰もが腕を上げた。
ジークジオン?いや、ここはホテルの一室だ。

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