第１３話　なぐり書き

　芸術作品に「奥深さ」を求めるのは止めた方がいいと思います。
　この概念は一見すると日本古来の「幽玄」という精神に繋がるものに思われるかもしれませんが、たぶん別ものです。いや、もしかしたら連歌を通じて歴史的つながりがあるかもしれませんが、江戸時代の習いものブームでいいように挿げ替えられている可能性が高い。正岡子規が否定したものはこうした気取りの精神です。これは岡倉天心が求めた不完全の美とも、その息子の九鬼周造が研究した中空構造とも意味が異なります。

　「素人は口を出すな」や、「奥ゆかしさ」、「奥さん」のような概念とつながりを持ち、「ワンオペ育児」を正当化させてきた疑いすらあります。「奥深さ」は批判すべきです。
　芸術はもっと自由で新しいものです。