第10話
文字数 2,156文字
帰りもいつもと変わらず家の近くまで車、それから歩きながら何気ない会話をした後、お互いの姿が見えなくなるまで手を振った
でも楓花は永嗣に彼の父親のことを聞くことが出来なかった。腫れ物に触れるような感じがしていた
もっと仲良くなってからでいい、もし今聞いて仲が悪くなったら…
そう思い、家に入り母親の声掛けにも気づかず、早々に部屋に入った
永嗣は店に戻ると、先ほど席を外してた雅貴と和がカウンターにいた
永嗣もカウンターに入りマスターの手伝いを始めた。そして一度キッチンに入ったかと思ったら、すぐに調理をしたものを雅貴と和の前に差し出した
「…いつの間に腕上げたんだ?」
雅貴は驚いた
「元々一人暮らし長いし、ここでは教わることばかりです」
もう箸を進めている和が
「上手いっすよ!雅さんも食べてみてくださいよ!」
雅貴は勧められ、一口食べてみた
「…すごいじゃないか、頑張ってるな」
と雅貴がほめると、永嗣も照れていた
「そういうのも楓花ちゃんに見せればいいのに…」
「いや…その…」
永嗣がたじろぐと
「何か、話聞いてて思ったんすけど、大学通ってるのさえ言ってないみたいすよね?」
料理を平らげた和がスプーンを咥えながらサラっと疑問を投げかけた
「マジか!…自分の力で学費払ったりしてるんだろ?履修以外はほとんど昼のバイトだろう?…おやっさんのスネカジリじゃねーんだから…まったく、謙虚なのか何なんだか…」
するとマスターが顔を出し
「見栄っ張りなんだもんねー!」
と永嗣に向かってからかった。永嗣は図星を刺され、何も言えず下を向いていた
「…んで?法学部から医学部の転学は決めたのか?」
「したいんだけど…それより別のところに編入してそこで医学部入試の方が楽だと言われて…そうなると金銭的にもちょっと…」
「法学部卒業してからでいいんじゃねーか?そんなに急がなくても…楓花ちゃんか?」
雅貴にそう言われ、顔を赤くする永嗣。それを見てマスターも
「そうね、兼ねてから医学部って言ってたもんね…でも何で法学部を選んだのか聞いてなかったわね?」
マスターがそう尋ねると、永嗣の表情は一変した
「………」
「………」
永嗣と雅貴が黙りこんだ
「…和ちゃん、早智子ママのところ行こうね」
「おっいいんすか?ナナちゃんに会える~」
「じゃあ店番頼んだわよ~」
二人はしばらく黙ってたが、雅貴が重い口を開いた
「…最近天竜会 で不穏な空気が流れている」
天竜会とは、代々ここ一帯を取り仕切る…言い方を悪くすると暴力団だ。雅貴はその幹部で会長の右腕的存在だ
「…サトシ、ですか」
「ああ、あいつはうちでは御法度の覚せい剤 などを売りさばいている、それを指揮している奴もいて均衡が崩れている」
「あいつを破門にすれば…!」
雅貴は煙草に火をつけ煙を吐いたあと
「なかなか足が出ないんだよ、何せ出所が分からない。売人が外国人らしく、売り子も一時的に金が欲しい浮浪者とかを使い、それを毎回人を変えてるから、雇った人物の事すら分からない状態らしい…まず証拠が見つからない。ここは警察とも連携をとっている」
「………」
永嗣は黙ってしまった。この街が荒らされるのは許せないと思ったからだ。自分の母親も繁華街での不正を正していた人間の一人だった。自分もそれを受け継ぎ守っていくべきだと考えていた
「…もう高山会長も年だ…最近ではお体にも不調が見られている。不在の若頭が後を継いでくれれば…」
煙と一緒にため息を漏らした雅貴の隣でふっと笑った永嗣は
「…そいつは後を継がないと思いますよ」
と呟いた
それを聞き、雅貴も
「だろうな、頑固だもんな」
と煙草の煙を吸いこみ上に向かって吐いた
「…てか、お前、たばこ吸ってないな?」
「禁煙中です」
「楓花ちゃんか、本当真面目だな」
「兄貴もやめたらどうです?」
雅貴は耳たぶを引っ張りながら
「その『兄貴』はやめてくれないか?何だか…」
「小さい時から面倒見てくれたんだから、兄貴同然ですよ」
「そうか…」
「それより…」
「ん?」
雅貴が永嗣の声に反応して顔を見ると落ち込んでいる感じだった
「どうしたんだ?」
雅貴が煙草の火を消して、永嗣に尋ねた。それに対し俯き加減で
「何だか…ひねくれてるんだよな…楓花がいいお嫁さんになるって…いや、それは本当に思っているけど、何か他人行儀な感じで…本当は誰よりも幸せにしたい相手なのに…」
それを聞いた雅貴は
「お前は不器用なだけで真っすぐな男だから、きっと気づいてくれるさ。あんまり気にするな」
と、ほほ笑みながら永嗣の頭に手を置いて、髪をくしゃくしゃにした
二人がやり取りしている中、一人の男がスマホをいじっていた。普通の客と混じっていたため皆が気が付かなかったが、ずっとスマホだけをいじっていた
男はLINEを送っていた。内容は永嗣の事だった。そして楓花の事も書かれていた
送信先はサトシだった
でも楓花は永嗣に彼の父親のことを聞くことが出来なかった。腫れ物に触れるような感じがしていた
もっと仲良くなってからでいい、もし今聞いて仲が悪くなったら…
そう思い、家に入り母親の声掛けにも気づかず、早々に部屋に入った
永嗣は店に戻ると、先ほど席を外してた雅貴と和がカウンターにいた
永嗣もカウンターに入りマスターの手伝いを始めた。そして一度キッチンに入ったかと思ったら、すぐに調理をしたものを雅貴と和の前に差し出した
「…いつの間に腕上げたんだ?」
雅貴は驚いた
「元々一人暮らし長いし、ここでは教わることばかりです」
もう箸を進めている和が
「上手いっすよ!雅さんも食べてみてくださいよ!」
雅貴は勧められ、一口食べてみた
「…すごいじゃないか、頑張ってるな」
と雅貴がほめると、永嗣も照れていた
「そういうのも楓花ちゃんに見せればいいのに…」
「いや…その…」
永嗣がたじろぐと
「何か、話聞いてて思ったんすけど、大学通ってるのさえ言ってないみたいすよね?」
料理を平らげた和がスプーンを咥えながらサラっと疑問を投げかけた
「マジか!…自分の力で学費払ったりしてるんだろ?履修以外はほとんど昼のバイトだろう?…おやっさんのスネカジリじゃねーんだから…まったく、謙虚なのか何なんだか…」
するとマスターが顔を出し
「見栄っ張りなんだもんねー!」
と永嗣に向かってからかった。永嗣は図星を刺され、何も言えず下を向いていた
「…んで?法学部から医学部の転学は決めたのか?」
「したいんだけど…それより別のところに編入してそこで医学部入試の方が楽だと言われて…そうなると金銭的にもちょっと…」
「法学部卒業してからでいいんじゃねーか?そんなに急がなくても…楓花ちゃんか?」
雅貴にそう言われ、顔を赤くする永嗣。それを見てマスターも
「そうね、兼ねてから医学部って言ってたもんね…でも何で法学部を選んだのか聞いてなかったわね?」
マスターがそう尋ねると、永嗣の表情は一変した
「………」
「………」
永嗣と雅貴が黙りこんだ
「…和ちゃん、早智子ママのところ行こうね」
「おっいいんすか?ナナちゃんに会える~」
「じゃあ店番頼んだわよ~」
二人はしばらく黙ってたが、雅貴が重い口を開いた
「…最近
天竜会とは、代々ここ一帯を取り仕切る…言い方を悪くすると暴力団だ。雅貴はその幹部で会長の右腕的存在だ
「…サトシ、ですか」
「ああ、あいつはうちでは御法度の
「あいつを破門にすれば…!」
雅貴は煙草に火をつけ煙を吐いたあと
「なかなか足が出ないんだよ、何せ出所が分からない。売人が外国人らしく、売り子も一時的に金が欲しい浮浪者とかを使い、それを毎回人を変えてるから、雇った人物の事すら分からない状態らしい…まず証拠が見つからない。ここは警察とも連携をとっている」
「………」
永嗣は黙ってしまった。この街が荒らされるのは許せないと思ったからだ。自分の母親も繁華街での不正を正していた人間の一人だった。自分もそれを受け継ぎ守っていくべきだと考えていた
「…もう高山会長も年だ…最近ではお体にも不調が見られている。不在の若頭が後を継いでくれれば…」
煙と一緒にため息を漏らした雅貴の隣でふっと笑った永嗣は
「…そいつは後を継がないと思いますよ」
と呟いた
それを聞き、雅貴も
「だろうな、頑固だもんな」
と煙草の煙を吸いこみ上に向かって吐いた
「…てか、お前、たばこ吸ってないな?」
「禁煙中です」
「楓花ちゃんか、本当真面目だな」
「兄貴もやめたらどうです?」
雅貴は耳たぶを引っ張りながら
「その『兄貴』はやめてくれないか?何だか…」
「小さい時から面倒見てくれたんだから、兄貴同然ですよ」
「そうか…」
「それより…」
「ん?」
雅貴が永嗣の声に反応して顔を見ると落ち込んでいる感じだった
「どうしたんだ?」
雅貴が煙草の火を消して、永嗣に尋ねた。それに対し俯き加減で
「何だか…ひねくれてるんだよな…楓花がいいお嫁さんになるって…いや、それは本当に思っているけど、何か他人行儀な感じで…本当は誰よりも幸せにしたい相手なのに…」
それを聞いた雅貴は
「お前は不器用なだけで真っすぐな男だから、きっと気づいてくれるさ。あんまり気にするな」
と、ほほ笑みながら永嗣の頭に手を置いて、髪をくしゃくしゃにした
二人がやり取りしている中、一人の男がスマホをいじっていた。普通の客と混じっていたため皆が気が付かなかったが、ずっとスマホだけをいじっていた
男はLINEを送っていた。内容は永嗣の事だった。そして楓花の事も書かれていた
送信先はサトシだった