調査レポート
文字数 1,979文字
則子は隣で黙々とサラダをつまんでいる陽生 に言った。
二週間後、同じ居酒屋で……
取り皿にサラダを盛りつける陽生を則子は一瞥すると「ちょっとトイレ」といって立ち上がった。
美味しそうにサラダを食べる陽生に、香代子はためらいがちに聞いた。
陽生は、ミニトマトを刺したフォークを置いて香代子を見つめた。
物心つき始めた小さい子が、家の外の怖さを知る。そういう時に、見守ってくれる大人の安心感が妖精というイマフレを作る、とも言われています。
だから、自分で自分を守れる大人になると、妖精を見なくなるんですよ。
家に帰った陽生は、電気をつけようとした手を止めた。
外は満月。ベランダからの光だけで部屋の中は歩ける。
冷蔵庫から出したサラダボウルに手をかざすと、サラダボウルから立ち上った
三日前、眠る愛梨に囁いた言葉を呟いた。
香代子の彼氏は、重度の小児性愛者だった。若作りの香代子だけではなく、愛梨にも、香代子の留守を狙って暴行をした。
幼い愛梨はその衝撃に耐えられず、一時的な記憶障害を起こした。それが「妖精との遊び」だった。
それを突き止めた陽生は、男を車道に突き飛ばし、意識の奥底に香代子と別れるよう植え付けた。
陽生の姿は女性にしか見えない。大人になった妖精は、人間社会の片隅でひっそりと生きていく。
陽生は月光を浴びながら、愛梨の笑みを浮かべた寝顔を思い出していた。