第二章・第三話 熾仁、始末【其之二】

文字数 6,478文字

 きびすを返した和宮(かずのみや)に、家茂(いえもち)崇哉(たかなり)が続く。
「……なっ、何をしてるんだ!」
 背後から、我に返ったような熾仁(たるひと)の声が上がった。
「早く和宮を捕らえろ! 将軍と側近を殺せ!!
「家茂を殺したら、あたしも死ぬわよ!」
 喚いた熾仁に、和宮が即座に反応する。とっさにだろうか、彼女は機敏に引き返し、家茂を庇うようにしてしがみついた。
「和宮」
「さっき、『妹』としての挨拶は済ませたわ。もうあんたを『兄』とも思わない。もう一度訊くけど、あんたはあたしの抜け殻が欲しいの!?
「何を」
「抜け殻でいいなら、死体でもいいわよね。分かった、殺しなさいよ。そうしてあたしを手に入れればいい」
「……だっからさぁ」
 家茂は、覚えず喉の奥から唸るような声を出してしまう。自分にしがみついている和宮の顎先を、指先で仰向かせて軽く口付けた。
「家、」
「そーゆー、お前が死ぬの死なねぇのって話は、いー加減、俺の前でするなっつってんだろ」
 口調が()になってしまうと、最早将軍ではなく、その辺の破落戸(ごろつき)と区別が付かない。
 目を丸くしている彼女に、思わず苦笑し、その額に唇を落とす。それから目を上げ、周囲の男たちを睥睨(へいげい)した。
「先に言っとくぞ。お前ら、俺らに指一本でも触れてみろ。当代将軍夫妻に無礼を働いた(かど)で、公式に罪に問うてやる。お前らの正式な(あるじ)は、この帥宮(そつのみや)じゃなく慶喜(よしのぶ)なんだからな。今、蟄居閉門中のあいつの配下が、当代将軍に粗相したら、管理責任で蟄居期間延長にできて、正直俺にはありがたいけど」
 一人一人を()め付けながら告げると、途端に男たちは色を失った。
「ついでに言うと、俺、人の顔覚えるのは得意なんだ。ここにいる全員の顔は覚えた。あとでここに正式に捜査に入っても、探し出せるから覚悟しとけよ」
 低く落とすと、一人が「ひっ……!」と小さく悲鳴を上げた。それを皮切りに、男たちはたちまち腰を引き、
「おっ、お許しを!」
 と口々に叫んでいる。
「安心しろ。今ここで下がるなら、上様は不問に付してくださる」
 崇哉が絶妙な間合いで宣告すると、男たちは大慌てで頭を下げ、その場をあとにした。熾仁は目を大きく見開き、次いで唇を噛んだが、彼らをどう呼び戻したものか分からないらしい。
 結局、一人あとに残され、忌々しげにこちらを見据えた。
「さて、どーする? 帥宮さんよ。臨時とは言え、随分まあ頼りになる護衛だったな」
「貴様っ……!」
「言う言葉が違うな」
 家茂は、それこそ悪代官さながらに返して、和宮を崇哉に預けると、熾仁に向かって歩を進めた。肉薄し、自身より上背のある熾仁の胸倉を、遠慮なく掴み上げる。
「今すぐ、一人で京に帰ります。お許しください、上様。――だろ?」
「何をっ……!」
「何を、じゃねぇよ。俺もそろそろ我慢の限界なんだよ。何度も何度もしつこく(ヒト)の女、強奪しに来やがって」
「先に強奪したのはそちらだろう!」
「あー、そーだな。最初の切っ掛けに関してそれは俺の意思じゃなかったけど、今まではその負い目があったし、(ちか)の初恋の相手でもあるから、かなり下手(したて)に出ててやった。立場が逆なら、俺だってみっともなく執着してない自信なんてないからな。けど、大目に見てやるのは、正真正銘、これが最後だ。次はねぇと思え」
 冷え切った声音で告げて、締め上げる力を強める。
「けじめはけじめだ。経緯(いきさつ)がどうあれ、(ちか)はもう俺の妻だ。名実共にな。婚儀から(じき)に一年も経つ。あんたもいい加減、古い(えにし)にしがみついてないで切り替えろよ」
「違うっ! 宮は、私の女だ! 私だけの!」
「そこまで言うなら、何で(ちか)が駆け落ちしようって言った時に、(こた)えてやらなかった?」
 そこは、熾仁の正確な急所だったらしい。無意識にといった様子で、息を呑んだ。
「……それは……宮も、分かってる。仕方なかったんだ。あの時点で駆け落ちすれば、私や宮の家族に累が及ぶから」
「だからって、(ちか)に何もかも引っかぶせて、彼女が傷付かないとでも?」
「宮は分かってくれてるさ! それが仮初めの……降嫁推進派を欺く為の演技だってことくらい」
 縋るように和宮を見た熾仁に釣られるように、家茂は背後を振り向く。だが、彼女の視線は冷え切り、熾仁を見てさえいない。
 それは、熾仁にも分かったらしい。家茂が熾仁に視線を戻すと、彼は虚を突かれたように瞠目している。
「……いいか。繰り返すが、これが最後の警告だ。大負けに負けて、あと三日だけ猶予をくれてやるよ。その間に荷物纏めて江戸から出てけ。そんで二度と、死ぬまで江戸に足を踏み入れるな」
 家茂は、締め上げるようにして掴んでいた熾仁の胸倉を、突き飛ばす勢いで解放する。熾仁は、フラフラと二、三歩後退(あとじさ)り、力なく尻餅を突いた。
「分かったな。破ったらこっちももう遠慮しねぇ」
「……君も中々おめでたいね」
 クス、と俯いた熾仁は小さく嘲笑を漏らす。
「どうやって、私が江戸を去り、二度と足を踏み入れないか分かるというんだ?」
 家茂も、フンと鼻を鳴らし返した。
「何の為の関所だと思ってる? 三日したら各関所に通達を出す。あんたが、二度と江戸に足を踏み入れないようにな。江戸を去ったかどうかは、信用できる忍びがいくらかはいるから、まあ心配無用だ」
 (はじ)かれたように顔を上げた熾仁は、またも悔しげに唇を噛んだ。家茂は、それ以上熾仁の言葉を待たず、口を開く。
「崇哉」
「は」
「あとは任せる。丁重に京まで送ってやれ」
(かしこ)まりました。つきましては、御台(みだい)様」
「何?」
「この場の後処理(あとしょり)に、桃の井殿をお借りしても宜しゅうございますか」
「構わないわ。帰り道は上様が一緒だし、大丈夫よ」
「恐れ入ります」
 家茂とすれ違うように崇哉が熾仁の元へ向かった、直後。
「和宮!」
 金切り声のような叫びに、家茂と和宮は、同時に振り返る。
 崇哉の足下で、突いた片膝の脇に片手を置いた熾仁は、凄まじい形相でこちらを睨み据えていた。
「私は、君を諦めない……どんなことをしても、生涯懸けても君を取り戻してみせる!!
 和宮は、瞬時(おび)えるように表情を歪めた。山桜桃(ゆすらうめ)の唇が、何か言いたげに震えるが、結局言葉を発することなく引き結ばれる。
「……行こ、家茂」
「ああ」
 再度、元通りきびすを返した和宮の肩先を抱き寄せ、歩き出す。
「和宮!! 戻れ!! 今なら間に合う!! 私も手荒な真似をせずに済む!! 私に、余計な手間を掛けさせるな――」
 背後から、往生際悪く追い掛けて来る熾仁の叫びから、身を縮めるように和宮が家茂の背に回した手に力を込める。
「聞かなくていい。大丈夫だから」
 家茂は、そっと囁いて、彼女の耳を塞ぐように掌を添えた。

***

 敷地に入る時には、崇哉が塀を飛び越え、裏門の(かんぬき)を外してくれた。それを、帰りは内側から家茂が外して扉を開ける。
 未だ、熾仁の声高な叫びは聞こえていた。
「早く戻れ、宮! 今戻るなら許してやるぞ! 和宮! 和宮――――!!
 門の外へ出るなり、和宮は脇の壁へ背を預け、両耳に手を当てる。
(気持ち悪い)
 あんなに――まさかここまで話の通じない人間だとは、思ってもみなかった。
 熾仁は、自分の言い分に従う人間には大らかで優しい。けれど、相手の自主性をまったく重んじない、そんな男だったと今にして分かったのは、本当に幸運だった。
 もしもあのまま熾仁の妻になっていたら、今頃どんな結婚生活を送ることになっていたか、想像するのも怖い。
 こちらの言葉が、まるっきり通じない人間を相手にするほど恐ろしいことはない。下手(へた)な夏の怪談のほうが、まだ聞いていられるくらいだ。
「……(ちか)
 そっと左手の甲に触れられ、いつの間にか閉じていた目を開ける。視線の先に見慣れた美貌が、心配げにこちらを見ているのを確認した途端、出し抜けに涙がこぼれた。
 ホッとしたのか何なのか、よく分からない。
 家茂は、黙って和宮の頬を両手で(つつ)むようにして引き寄せた。額、頬、瞼と、顔中に柔らかく降らされる彼の口付けが心地いい。不思議と、熾仁の声(ざつおん)が耳から遠退く。
 ドクドクと落ち着きなく暴れていた心臓が、普段通りの脈動を刻み始める。
 和宮が落ち着いたのを見計らったように、家茂はその唇で短く和宮のそれを啄んだ。
「……落ち着いたか?」
 優しく抱き寄せられた胸元に、頬をすり寄せるようにしながら小さく頷く。それに応えるように、家茂は和宮を抱いた腕に力を込め、和宮のこめかみに口付けを落とした。
「だから、来ないほうがいいって言ったろ?」
 そう、家茂は、城を出る直前までそう言って、待っているようにと和宮に念押ししていた。それを強引に無視して付いて来たのは、和宮の意思だ。
「……っ、……だって」
「ん?」
「……ちゃんと、話せば……分かってくれるんじゃ、ないかって」
「……そうだな。そう思いたい気持ちは、分からなくもないけど」
 苦笑混じりに言った家茂は、抱き締めていた腕を緩めて、和宮の頬に両手を添える。自然、上げた格好になった顔に、家茂が自分のそれを伏せた。
 宥めるように重なった彼の唇が、次第に深く和宮のそれを貪る。
「ッ……家茂」
 足の力が抜ける寸前で、和宮は唇を離すよう家茂の胸元を軽く叩くことで訴えた。それに応じた彼の黒い瞳が、ヒタと和宮の目を除き込む。
「……俺は、死んでもお前を手放さない。前にも、確認したと思ったけどな」
「……?」
 口付けの所為で整わない呼吸に、言葉が乗せられない。
 けれど、家茂の言うことは、和宮こそが彼に確認したことでもある。今更、改めて言われるまでもないのだが。
「お前が死んだって、俺は遺体を誰かにくれてやる気はないぜ」
「えっ……?」
「お前はどうだ? 例えば、もし柊和(ひな)が生きてたとして、俺が先に死んだとしたら、そのあと『せめて遺体くらいくれたっていいじゃない』ってお前に言ったら、お前は俺を柊和に渡すのか?」
「そんなことっ……!」
 和宮は即座に首を横へ振った。
 自分たちの婚姻で、柊和を死に追いやった負い目はまだある。けれど、彼女が仮に生きてどこかにいたとしても、もう今更家茂を彼女に返す気なんてない。
 そんなことを言う権利がないのは、理性では分かっていても、いざその可能性を提示されると、答えは『否』としか出て来ない。
「……嫌よ。死んだってあたし、あんたをほかの女になんか渡さない」
 たとえ、それが柊和であってもだ。
「だったら、二度と有栖川宮(ありすがわのみや)に妙なこと言うなよ」
「へ?」
 何か言ったっけ、と和宮はキョトンと目を(またた)く。その視線の先で、家茂はその黒い目を、呆れたように細めた。
「……さっき、あいつに言ったろ。殺して死体を手に入れればいい、とか何とか」
「あ」
「俺の目の前なら、お前を殺させたりしないけどな。下手(へた)打って先に死なせたとしても、死体だってあいつには渡さない」
 家茂、と呼ぶ前に、唇は荒々しく塞がれる。
 長く激しい口付けの末に、名残惜しげに唇を離した家茂は、「早く城に戻るぞ」と告げ、今度こそ力の抜け切った和宮の身体を抱き上げた。

***

 その後、熾仁が本当に京へ発ったらしい、ということを、和宮は邦子から聞いた。
 あの日、崇哉と彼(いわ)くの後処理に当たった邦子は、信用できる土御門(つちみかど)の手の者を数名、護衛兼監視役として熾仁に付けたようだ。
『本当は、わたくし自身が参れればよかったのですが……宮様のお側を離れるわけにはいきませんゆえ』
 というのは、邦子の(げん)だ。
 けれども、これで終わったなどという甘いことは、和宮は考えていない。二度と顔を合わせたくはないが、熾仁が諦めていない以上、いずれどこかでまた会い、一悶着(ひともんちゃく)起きる気がした。
 それまでに、もっと強くならなければと、和宮は邦子に請うて、本格的に武術の修練を開始していた。
 思えば、熾仁と最後に悶着した二月(ふたつき)前からこっち、家茂に頼りっ放しだった。
 あの日の夜は、情けないことに、結局は和宮のほうから家茂を求めた。彼の肌の温もりに溺れて、すべてなかったことにしたかった。
 家茂も生来が優しい性格だから、何も言わずに応じてくれたが、実際はどう思っていたやら、和宮には分からない。
 とにかく、知らなかった熾仁の一面が、その執念が怖くて恐ろしくて、考えないようにしようと思えば思うほど、却ってあの日の熾仁の叫びを反芻してしまっていた。
 幼子のように、それを会う(ごと)、バカ正直に家茂に訴えれば、その(たび)に彼は和宮をとことん甘やかしてくれた。
 そうして一月(ひとつき)ほど経ったらさすがに落ち着いたが、落ち着いたら今度はまた、自身の行動があり得ないほど恥ずかしくなっていた。やっぱり、鬱陶(うっとう)しい女の典型ではないだろうか。
 それをウダウダと悩んでいたことは、早々に見抜かれていたのだろう。痺れを切らしたらしい彼に、(とこ)の中で洗いざらい白状させられる羽目になった。

「――お前さぁ。自己肯定感、低過ぎんじゃねぇ?」

 一頻(ひとしき)り、互いの温もりを共有したあと、出し抜けに問われて、和宮は唇を(すぼ)めるように尖らせた。
「……どういう意味よ」
「だって、そうだろ。お前が何したって、別に俺、呆れたりとか怒ったりとか、最悪愛想尽かしたりとか、そんなこと絶対ないって、いつも言ってるのに」
 覚えず、言葉に詰まった。
「別に……そういうわけじゃないけど……」
「言っとくけど、あんな変態相手にしたら、多分俺だって参るぜ? 怖くて引き籠もってもおかしくないのに、お前はよくやってるよ」
「引き籠もるって……家茂が?」
 驚いて問い返す。和宮の知る彼は、精神的にも強くて、そうそう寝込んだり引き籠もったりする人種には見えない。
 他方、当の家茂は、口を滑らせたという表情で苦笑した。
「……んー、まあ……柊和が亡くなった時に、ちょっとな。俺が相手にしてたのは、権力欲にまみれたおっさん連中と、場数だけは踏んでる悪賢い女狐だったけど……話が通じないって点では、あのバカ宮と一緒だし」
 最早、正式な名称でなく『バカ宮』になった熾仁の呼称に、和宮は覚えず吹き出す。
「……やっとマトモに笑ってくれた」
「えっ?」
 和宮は、目を(みは)った。パチクリと目を(しばたた)く間に、彼の片手がそっと頬へ触れる。
「この二月(ふたつき)くらい、うっすらとでも笑った顔、見てなかったからな。ちょっと心配してたんだ」
 彼の目が、痛ましいものでも見るかのように細められた。
「……やだ……あたし、そんなだった?」
「ああ。最悪、無理してでも京に連れて行こうかと思ったくらいにな。目ぇ離すの、不安だったから」
 あれから二月(ふたつき)、家茂はほとんど毎日のように奥に来てくれていたし、和宮が求めれば必ず応じてくれた。
 てっきり、京行きが三日後に迫っている所為だと思っていたが、それだけではなかったらしい。
「……ねぇ、家茂」
「京に連れてけってのは却下だけど、明日は少し、二人で出掛けないか」
 機先を制されるような格好で遮られ、和宮はまた少し唇を尖らせた。
「……京行きのこと、誤魔化す気なら行かないけど」
「……じゃなくて。明日、何の日か忘れた?」
「明日?」
 何の日だっけ、と和宮は記憶を手繰(たぐ)る。
 明日は、家茂が京へ発つ日の二日前だ。日付は、二月十一日――
「あっ……婚儀の日?」
「そ。俺らが一緒になった日だよ。色々あったから忘れてたろ」
「う、んー……」
 またも、言葉に詰まる。まったくその通りだった。
 あれから、早くも一年が経つのか、と思うと、何やら感慨深い。
「……第一印象、最悪だった」
「俺もだ」
 クス、と互いに小さく笑い合って目を合わせたあと、ごく自然にどちらからともなく唇を重ねる。
 あの日はまさか、一年後には相手にベタ惚れになっているなんて、想像もしなかった。
「……ッ、家茂」
「ん……もっかい?」
「バカ。そろそろ寝るのよ。明日、出掛けるんでしょ?」
 ペチ、と軽く彼の頬を(はた)くと、家茂は瞬時目を丸くした。そして、しばらく目を泳がせていたかと思うと、「そだな」と吐息と共に短く言って、和宮を抱き寄せる。
「お休み」
 耳元で囁かれる挨拶も、もうすっかり日常だ。彼の肩先に額を預けて、和宮も「お休み」と返しながら目を閉じた。

©️神蔵 眞吹2024.
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登場人物紹介

【和宮親子内親王《かずのみや ちかこ ないしんのう》(登場時、7歳)】


生年月日/弘化3年閏5月10日(1846年7月3日)

性別/女

血液型/AB

身長/143センチ 体重/34キロ(将来的に身長/155センチ 体重/45キロ)


この物語の主人公。


丙午生まれの女児は夫を食い殺すと言う言い伝えの為、2歳の時に年替えの儀を行い、弘化2年12月21日(1846年1月19日)生まれとなる。

実年齢5歳の時、有栖川宮熾仁親王と婚約するが、幕閣と朝廷の思惑により、別れることになる。

納得できず、一度は熾仁と駆け落ちしようとするが……。

【徳川 家茂《とくがわ いえもち》(登場時、15歳)】

□幼名:菊千代《きくちよ》→慶福《よしとみ》


生年月日/弘化3年閏5月24日(1846年7月17日)

性別/男

血液型/A

身長/150センチ 体重/40キロ(将来的には、身長/160センチ、体重/48キロ)


この物語のもう一人の主人公で、和宮の夫。


3歳で紀州藩主の座に就き、5歳で元服。

7歳の頃、乳母・浪江《なみえ》が檀家として縁のある善光寺の住職・広海上人の次女・柊和《ひな》(12)と知り合い、親しくなっていく。

12歳の時に、井伊 直弼《いい なおすけ》の大老就任により、十四代将軍に決まり、就任。この年、倫宮《みちのみや》則子《のりこ》女王(8)との縁談が持ち上がっていたが、解消。


13歳の時には柊和(18)も奥入りするが、翌年には和宮との縁談が持ち上がり、幕閣と大奥の上層部に邪魔と断じられた柊和(19)を失う。

その元凶と、一度は和宮に恨みを抱くが……。

【有栖川宮熾仁親王《ありすがわのみや たるひと しんのう》(登場時、18歳)】


生年月日/天保6年2月19日(1835年3月17日)

性別/男


5歳の和宮と、16歳の時に婚約。

和宮の亡き父の猶子となっている為、戸籍上は兄妹でもあるという不思議な関係。

和宮のことは、異性ではなく可愛い妹程度にしか思っていなかったが、公武合体策により和宮と別れる羽目になる。

本人としては、この時初めて彼女への愛を自覚したと思っているが……。

【土御門 邦子《つちみかど くにこ》(登場時、11歳)】


生年月日/天保13(1842)年10月12日

性別/女


和宮の侍女兼護衛。

陰陽師の家系である土御門家に生まれ、戦巫女として教育を受けた。

女だてらに武芸十八般どんと来い。

【天璋院《てんしょういん》/敬子《すみこ》(登場時、25歳)】

□名前の変転:一《かつ》→市《いち》→篤《あつ》→敬子


生年月日/天保6年12月19日(1836年2月5日)

性別/女


先代将軍・家定《いえさだ》の正室で、先代御台所《みだいどころ》。

戸籍上の、家茂の母。


17歳で、従兄である薩摩藩主・島津 斉彬《しまづ なりあきら》(44)の養女となる。この時、本姓と諱《いみな》は源 篤子《みなもとのあつこ》となる。

20歳の時、時の右大臣・近衛 忠煕《このえ ただひろ》の養女となり、名を藤原 敬子《ふじわらの すみこ》と改める。この年の11月、第13代将軍・家定の正室になるが、二年後、夫(享年34)に先立たれ、落飾して、天璋院を名乗っている。

生まれ育った環境による価値観の違いから、初対面時には和宮と対立するが……。

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