第4話(10)

エピソード文字数 2,871文字

「にゅむー、シズナちゃんニコニコだねっ。何か幸せなコトがあったのー?」

 テーブルについてすぐ、レミアちゃんが首を右に傾けた。
 ソレは、俺もずっと気になってたにゅむ。どーしたんだにゅむ?

「うふふ、幸せなことがありまくりよ。従兄くんが、私の太腿を触ってくれてたんですって」

 ゲ。その話をしたかったから急いでたのか。

「うふっ。従兄くんってば、私の身体に興味があったのね」
「ぁー、いやー、そのー。フトモモが柔らかそうだったから、気になっててつい触っちゃったんだ」

 ここで否定したら、この人はデニールさんを殺しに行く。彼女が罪を犯さぬよう、僕は身を挺します。

「そう、なんだ。貴方なら許します」
「あはは。ありがとぅ」

 嬉しくねー。こんな変人がお触りOKしてくれても、嬉しくねーよー。

「ところで、従兄くん。あのさ」
「はい?」

 変人なーに?

「太腿を触ったって事は、私の下着も見たのよね? もぅ、スケベさんなんだからっ」
「おいなんでそうなるんだよ! フトモモと下着は関係ないだろっ!」
「あふんっ。いつも最高で――えっ? ……え?」
「え?」

 ペロリんで、目をパチパチさせる俺とシズナ。
 ????? この人、どしたの?

「私って、下はパンツだけで寝ているのよ? 布団を捲ったら見えるはずなのだけど」

 しまった! コイツ、そんな格好で寝てるのか!

「……なんか怪しいわね……。もしかして私を大人しくさせる為に、ファーストって嘘をついてるんじゃ……」
「な、なななな何を仰る兎さんぜよっ。師匠はそんなコトしにゃいぜよ!」
「そーだよそーだよっ! ゆーせー君は、たひかに触ってたひょ!」

 余計な援護射撃が来たっ。キミらは芝居が下手糞なんだから、無理しないで!

「……ますます怪しいわ……。従兄くん、法螺なの?」
「んなはずないでしょっ。コッソリ布団を捲って撫でたよ!」
「……だったら、下着の色を言えるわよね? 今朝は何色だったか教えて頂戴」

 ぐ、これは弱った。触っていないのだから、こんなの答えられない。
 だけど…………答えないと、殺人事件発生になっちゃうからな……。ここは――

《2人ともっ。コイツは何色を穿いてた?》

 ――超高速かつシズナに見えないように、口パクで質問をする。
 キミらふざけて布団に潜り込んでたから、知ってるでしょっ。早く教えてっっ。

《えっとね。シズナちゃんのは、ピンクだったよ》

 ピンク色か。サンキューレミア――

《師匠っ。シズナ先生のは、白やったがよ!》


 うそんっ。色が増えたっっ。


《違うよーフュルちゃん。ピンクちゃんだったよー》
《いんや、ありゃホワイトぜよ。師匠信じてや!》
「従兄くん? お返事はまだ?」
「ちょ、ちょっと待って。急に、大事な考え事を思い出したんだ」

 吾輩はこのように時間を稼ぎ、心の中で顔を顰めるであります。
 ど、どうしよう。どっちを選べばいいんだ?

《あたし、確かに見たよーっ。お布団を捲ったら、黒い――にゅむ? 黒色、だったかも……?》
《むぅ。そう言われたら、ワシもそうだった気がしてきたぜよ》

 初めて二人の意見が揃った! 正解は、黒だったんだなっ。

《でもそれって、この前のお泊り会の色じゃなかったー? 朝はピンクだよっ》
《いや先生、今朝は水色やなかったかえ? ほら、あれよあれ》
《そーだったっけ……? にゅむ…………そんな気がしてきたよー》

 コイツら役に立たねぇ! なぜ、十数時間前のことを覚えていないんだ!

「……従兄、くん。レミアさん達に、聞こうとしてない?」

 ギクッ ギクギクッ

「私は、疑惑を抱きました。それを払拭したければ、私の目を見て十秒以内に答えてください」
「は、はい。畏まりました」

 こうなると尋ねられないし、そもそもアイツらは当てにならん。こうなりゃ、自分の勘を信じるより他ない!

「従兄くん。私のは、何色でしたか?」
「……。それは、ですね…………………………」

 ……………………。……………………………………。
 無理だっ。絞り込めないっっ。だって下着ってあらゆるカラーがあって、おまけにストライプとかあるんだよっっっっ? こんなの当たるはずがないでしょっっっっっ。

「? 従兄くん?」

 …………………………。こうなったら、しゃーない。あれ、でいこう。
 さっき一肌脱いだ時より辛いけど、ホントにしゃーないですからね。ぼくはやります。

「い・と・こ・く・ん。な・に・い・ろ・で・し・た・か?」
「…………シズナ、そんなことはどうでもいいじゃないか。それよりまた楽しませておくれよ」
「ひゃっ!?

 俺は、彼女の太腿を優しく撫でた。

「キミのフトモモは美しく、このように我慢できなくなるんだ。この俺が、触ってないはずないだろう?」
「け、けど――」
「お前のフトモモは、スベスベでモチモチ。最高の手触りだよ」
「――も、もぅHなんだから……っ。従兄くん…………こっちより内側の方が、もっとふにふによ?」

 シズナはうっとりして俺の手を掴み、内に持っていく。
 よーっしゃぁ! 思った通り気が逸れた!

「ねえ。どう、かしら?」
「そうだね。ふにふにだ」

 なにを言ってるのかな、俺は。わけがわかんにゃい。

「……私は貴方からの怒られで、貴方は私の太腿で気持ち良くなる……。私達、似た者同士ね」
「アンタ似た者同士の意味を知らないだろ――そ、そうだな! 似てるねっ!」

 ツッコミ衝動を抑え、ナデナデナデ。ぼくは今以前父さんが愚痴ってた、嫌な仕事をしてる時の気持ちが分かりますた。

「怒られてる時も好きだけど、好きな人を気持ち良くしてる時も好き。満足するまで撫でてね」
「う、うん……」

 俺、ちっとも気持ちよくないんだけどなぁ。むしろ苦痛で、鳥肌が立ってるんだけどなぁ。

「あでも、私は貴方の従妹。付かず離れずの距離で支えないといけない者が、こんな事をしていいのかしら……」
「それはいけないと思うなっ。もう終わりにしようよ!」
「だけど従兄と従妹は結婚できる! こういう関係に発展するのもありよねっ」

 うわぁ自己解決しやがった! もーやだよーこの子ー。


『レミア先生、ワシら暇ぜよ。真似して、太腿触り合ってみるかえ?』
『そーだねー。やってみよー』
 サワサワサワサワ
『『あはははははははは! くすぐったいー!』』


 心で嘆いていたら、視界の隅で魔王と勇者が転げ回っている。アイツらは――ううん。アイツらも、超々バカだ。

「うふふ、二人は子供ね。従兄くん、私達は大人の時間を過ごしましょう」
「あ、あぁ。うん。そだね」

 このあと俺達(実際はシズナだけ)は準決勝が始まるまで、アダルトなタイムを満喫。『撫でる』と『怒る』を繰り返したのだった。


 ……あのぅ。これって、大人の時間ですか?
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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