第1話 はつ恋の君

文字数 751文字

中学校のアルバムを見ると

君はあの時のままだ

そして時間だけが経っている

時間が僕を変えたように

時間は君も変えただろう

同窓会の葉書を今回も破く

君に会いたくて仕方ないけど

僕は君が思っている人になっていないんだ

僕は栄光を掴んで君の前に現れたかった

僕はそれができるものと思っていたからね

でも僕はいつまで経っても芽が出ないんだ

芽が出ないんじゃ栄光の花は咲かないだろう

僕はそれを待っているうちに何十年と経ってしまった

つまり君に会わせる顔がないんだ

君も変わったかもしれないよ

でも君は僕の中であの時のままなんだ

夢を壊しに行けないよ

それは愛のない言い方だったね

君も成長して僕と同じ歳になったんだ

何とかして会えればいいのだけれど

どうしても無理だ

僕は相反する気持ちに引き裂かれそうだ

そんな時、君が亡くなったという知らせが届いた

僕の心の痛みを想像できないだろう

僕は君のお墓に行く車に乗っている時、倒れそうだった

そして今お墓の前にいる

みよじが変わったんだね

当たり前さ、僕は何を考えている

君の写真が中学の頃と今と二つ並べられた

僕はもう涙で何も見えなかった

君の生活も子供たちも何も知らなかった

栄光などという虚像に惹かれ僕は人生を滅茶苦茶にした

プライドも何も全部捨てて会いに行ければよかったんだ

そうすれば穏やかな落ち着いた生活が送れたかもしれない

でもこれが運命だったような気がする

後から考えるとみんな運命だったように感じるようにね

でもその運命を打ち砕く言葉が一つだけあったんだ

それは「勇気」だ。全てを曝け出す勇気だ。

僕にはそれがなかったために君に会えなかったんだ

僕は泣きながらその言葉を思った。

君にお線香をあげる時

涙で滲んだ写真を顔を上げて見た

君は時を経ても変わらなかったじゃないか

変わったのは僕の方だった

ごめん、と言いながら冥福を祈った
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