第93話  白竹美優視点 真実 1

エピソード文字数 3,352文字

 白竹美優視点です。

 ※


「私は女の子に見えますか?」 


 私は何故蓮くんに、あんなことを言ったのだろう。


 私は彼に何て答えて欲しかったのでしょうか。



 女の子です。そう言われて当たり前なのに……


 あんな質問をして、蓮くんもきっと困ったと思う。



  

 急に現れた私と瓜二つ女の子。


 あの子の正体はママだと口を滑らせてから、私はずっと平常心を失ったままです。



 ありえない失態。


 白竹家のとっても深い部分にある情報をポロっと言ってしまった私は、あまりのショックでその場に倒れこみました。


 蓮くんにどういい訳すれば良いか頭の中で必死に考えていましたが、具体的な方法など見つかりませんでした。



 全く考え付かない。頭が真っ白になった。


 それなのに――蓮くんはとても優しく接してくれた。


 私は何度も内緒にして欲しいと訴えると、その度に返事をしてくれました。



 内緒にしてくれる。


 同人関係だって。蓮くんは秘密を守ってくれている。


 それならいっそ……今日起こった出来事も話してもいい。



 ……内緒にしてくれるのなら。

 

 核心に迫る話は出来ないけども、少しでも納得してもらって蓮くんに私のことを……もっと知ってもらいたいと思った。



 内緒にしてくれるのなら。


 内緒にしてくれるのなら私は……私の本当の姿を……



 その時、蓮くんと目が合った時、勝手に口に出していました。



「女の子に。見えますか?」と。



 今更ながら……私はとんでもない事を言いそうになったのかもしれない。

「女の子ですよ」

 当たり前のような返答が返って来ると、私は現実世界に戻ったような感覚を味わいました。

 だけどその後蓮くんに……




男に見えますか?

 最初。意味が分からなかった。


 今思えば、私に合わせてくれたのかなって、何となくそう思います。




 だけどあの時の表情だけは忘れられない。


 とっても思いつめた感じで、今まで見たことも無いような蓮くんの顔が、頭の中にずっと残って離れないのです。

 ※


 授業中、私はずっと考えていました。


 蓮くんに対してこれからどうすれば良いのかを。



 ちょっと考えるとすぐに一つの問題が浮上してきます。


どうしよう……

 ママの正体を話してしまっただけに、喫茶店で働いているママを見られてしまうと、説明なんて出来ない。


 その事に気が付くと血の気が引くようでした。



 一生懸命ママだと説明したつもりですが、それが全部嘘になってしまう。


 もし喫茶店にこられたら……

 蓮くんはきっと私のことを嘘つきだと思うでしょう。


 どうすればいいの? わからない……

魔優……

 ううん。ダメ。絶対ダメです。

 こんな事を聞いたらきっと……魔優は怒っちゃう。


 どのくらい怒るかなんて想像しただけで震えてしまいます。




 ママにも言えない……こんなこと。

 正直に言っても、どんな風になるか全然分からない……

うぅ……やっぱり私は……何もできない
美優! どしたの? 弁当あるんでしょ?
ふぁっ!
 気が付けば授業が終わり、お昼ご飯になってました。
は、あひ! うん。めっちゃあります。もぐもぐしましょ!

 咄嗟に笑顔を見せると、聖奈ちゃんや染谷くんが喜んでくれています。

いつもすみませんね
 そう言った蓮くんもご機嫌な笑顔を見せてくれますが、私はすぐに目線を逸らしてしまいました。


 か、顔が見れない。

 どうしよう……


 ど、どうしていいか……わからないよ。




 ※



 ママは入れ替わり体質の他に、もう一つ特殊な入れ替わり方法を使えるのです。


 自分の昔の姿に戻るっていう、そんな事が出来ちゃう人なのです。


 どうやってやるのかは知らないけど「あなたたちもその内、出来るようになるわ」と小さい頃に教えてもらいました。  


  

 そんで……私にそっくりに入れ替わって、学校に来た訳ですけど、いつも突然だし、来なくていいって言うのに来たがるから……



 だけど。今回ばかりは私の責任。

 何で。何であんな事を……必死に言ってしまったのでしょうか。



 いつもなら楽しいお昼休みも、私は笑顔を見せながら、会話の内容は殆ど頭に入ってきませんでした。



 蓮くんには……こんな説明は出来ない。


 言ったって分かってくれるハズが無いし、ちゃんと納得してもらうには……それは私達入れ替わり体質の殆どを喋らなくてはいけなくなる。

  

 考えれば考えるほど、私がしでかした事を後悔するしかありませんでした。



 とにかく。蓮くんが喫茶店に来ちゃったら……

 いい訳ができない。



 ううん。お姉さんである楓蓮さんから、蓮くんに……ママの情報が伝わったとしたら?



 そう考えた時、もう無理だと……そう思った。


ああっ、何故私は……あんなことを……

 考えれば考えるだけ、自分のやったことを後悔するのでした。


 どちらにせよ。私は蓮くんに嘘をつくことになるのが、すごくつらくて……

 


 ※

じゃ~ね。また明日
 聖奈ちゃんの元気な掛け声が聞こえてくると、彼女は一目散に教室から出て行きました。
帰りましょうか
そだね。一緒に帰りましょう

 いつも誘ってくれる蓮くんと染谷くん。

 たまに西部君も一緒に帰るんだけど、魔樹が来るとここでお別れです。



 私は魔樹と一緒に廊下を歩きます。前には仲良く喋る二人の背中。

 すると魔樹の小声が聞こえてきます。

参ったねほんと。高校まで邪魔しにこなくていいのに
 魔樹はママに対してめちゃ怒ってます。
これじゃ……私が男になった意味がないじゃない
 顔にはあまり出さないけど、すごい怒ってるのが分かると、私が怒られているような錯覚に陥りました
まぁいいわ。もう帰ろう。頭痛い……
うん……

 魔優は魔樹でいられる時間は短い。

 だから放課後になるといつも頭痛を訴えるのです。



 制限時間一時間超過はいつものこと。

 下手すれば……喫茶店に戻る前に二時間が経過してフラフラになることもあるの。


 


 魔優には喋れない。

 魔優には……これ以上私の為に迷惑をかけたくない。

 


 いつもいつも、私のせいで……大変なことを代わりにやってくれて、何も出来ない私を助けてくれる……だから……



 

 ママの件は……私がどうにかしないと。

 そう決意した瞬間でした。



 グラウンドを歩く蓮くんと染谷くんがこちらに振り向いた。


 すると……その向こうには……




 

 校門の前にいる人がママだと認知した瞬間――


 私は頭が真っ白になってしまった。



 ※


美優っ! 魔樹っ! む~~かえに来たわよっ!

 いつものママ。喫茶店で働いてる本当のママの姿です。



 な、何で? 何でその姿で……

あれが白竹さん家のママかよ。くっそでけーおっぱいだ。


 いつの間にか西部くんが横にいました。
黙れってお前。頼むからその下品な呼び方やめようぜ

何だと黒澤。おっぱいを下品呼ばわりするとは……お前なんて友達じゃ……


ん? あ、あれわまさか! マジ魔乳だと?

あれ。ママが迎えに来たんだね

 染谷くんは知ってるよね。いつも喫茶店に来てくれるから。



 そして……私は蓮くんと目が合いますが、彼は何も喋らなかった。


 即座に下を向く。

 私はもう――彼の顔を見ることなんて出来なかった。

あ~ら。美優。魔樹。学校のお友達かな?

あ、君は喫茶店にも来た事があるよね?


みなさんど~も。初めまして。私は二人の……ママなのよぉ!

 クルクル回ってるママの足元しか見れない。


 こんな簡単に……バレちゃうなんて……


 これで蓮くんはきっと……私のことを……

え? 美優? ちょっと!
 私はその場にいられなかった。すぐに走り出したら、魔樹が追いかけてくる。

どうしたの美優? おいかけっこ?


みゆ~~ちゃ~~ん! 待ってぇ!

 ママまで追いかけてくるのが分かると、私は一生懸命逃げるように走り出しました。
美優! どうしたの?
うぅ……は、離してっ
 魔樹は私が泣いているのが分かると、すぐに手を離してくれた。
美優。何かあったの?

 ママも心配してくれている。

 でも私は何も喋れず、そのまま一心不乱に走って、家まで戻ってきました。


 泣きながら自分の部屋のベッドに飛び込んだ。



 暫くして魔樹が入ってくると、ママも部屋に入ってきます。

美優。一体どうしたの? お願い。ちゃんと教えて
何があったの? ママに話しなさい
 二人とも心配そうな顔を浮かべて、声を掛けてくれると、私は観念して……今日の出来事を二人に話しました。
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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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