シマリス……そして伝説へ
文字数 1,125文字
「暑いな」
生ぬるい風が頬を撫で、照り返しの日差しが肌を焼く。じわりと噴出す汗が地味に不快だ。
……もうこっちは夏なのか。やけに煩い蝉の声に思わず耳を塞ぐ。
「うーん……やっぱりこっちもちゃんと時間が進んでたんだなぁ」
背伸びをする俺の目の前には、まさに夏の主役とでも言いたげな向日葵が、大輪の花を咲かせこちらを向いている。
……暑いな。
「帰って麦茶でも飲むか」
そう呟いた俺の声は、突然響いたクラクションの音にかき消された。
音に一瞬遅れて、強い衝撃が体を襲う。手振れのひどい動画のように視界が定まらない。
あ、そうだ……確か前回も大きなドングリを拾おうとしてここで轢かれたんだった。
華奢な俺の体は簡単に吹き飛ばされ、アスファルトに転がったまま、走り去るトラックを見送る。
ナンバーは……よし。生き返った時には覚えてろよ。
……それにしてもトラックで転生なんてまたベタな……。
いや、今回は流石に……駄目か? ……わからない。
不思議と痛みは無い、がアスファルトから伝わる熱が不快でしょうがない。転生でも天国でもどちらでもいいから早く送ってくれ。
俺はノア以外の神にそう願った。
………………………。
………………。
…………。
……。