シマリス……そして伝説へ

文字数 1,125文字

「暑いな」


 生ぬるい風が頬を撫で、照り返しの日差しが肌を焼く。じわりと噴出す汗が地味に不快だ。


 ……もうこっちは夏なのか。やけに煩い蝉の声に思わず耳を塞ぐ。


「うーん……やっぱりこっちもちゃんと時間が進んでたんだなぁ」


 背伸びをする俺の目の前には、まさに夏の主役とでも言いたげな向日葵が、大輪の花を咲かせこちらを向いている。


 ……暑いな。


「帰って麦茶でも飲むか」


 そう呟いた俺の声は、突然響いたクラクションの音にかき消された。


 音に一瞬遅れて、強い衝撃が体を襲う。手振れのひどい動画のように視界が定まらない。


 あ、そうだ……確か前回も大きなドングリを拾おうとしてここで轢かれたんだった。


 華奢な俺の体は簡単に吹き飛ばされ、アスファルトに転がったまま、走り去るトラックを見送る。


 ナンバーは……よし。生き返った時には覚えてろよ。


 ……それにしてもトラックで転生なんてまたベタな……。


 いや、今回は流石に……駄目か? ……わからない。


 不思議と痛みは無い、がアスファルトから伝わる熱が不快でしょうがない。転生でも天国でもどちらでもいいから早く送ってくれ。


 俺はノア以外の神にそう願った。


 ………………………。


 ………………。


 …………。


 ……。




 


 


 

お主さぁ、舐めてる? ワシのこと
そんなこと言われてもよお……
って今度はハムスターかよ!
せっかく生き返らせたのに数秒で戻ってくるんじゃないよ……まったく
ていうか、また俺の能力どこでもチャットか
無限頬袋も一緒じゃよ
とりあえず……タケシ!
お前……また……
しかも、今度はハムスターだぞ。作戦は? 可愛さは上がったが、口の大きさは小さくなったぞ
ない。そもそもまた魔王を倒すのか?
知らないけど……ノア
どーしよーかのー……もう魔王はおらんし……というか魔族自体、アブソリュートゼロとワールドエンドオーダーの対消滅に巻き込まれて滅んだし……
うーん、まあ神とか魔神とかがベタじゃないですか?
じゃあ、ワシかのう
ていうか、なんでラスボスみたいなの倒したら生き返れるようになってんだよ
……長いぞ?
じゃあいいわ
間に合ったようだな
いや、いきなりなにこれ? 何でみんな不吉なセリフ言ってるの? ていうか、一番右誰だよ!
次回予告だ
む。なぜワシの全身写真が……
我がおらぬ……
あら、私の若い頃の奴ね
ていうか、俺のセリフがねえ
じゃあ、何か決め台詞言えよ
ふむ。じゃあ、ワシが次回予告のナレーションするから最後に決め台詞じゃな。いくぞ?
大切な人を守る為、必ず生き返ると両親と親友に誓ったタケルは、絶対的創造主ノアに戦いを挑む! 次回、ハムスターにも出来る女神討伐!
え? えーと……
傲慢なる女神よ! 我が血肉の糧となれ!
じゃ、次回も見ーるのじゃぞー!
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