猫社会

文字数 2,128文字

 女性の幸福度チェック。女性のファッション診断。輝く女性のどうのこうの。
 世間巷のすべては女を中心に回っているってのは、そんなこと俺にもわかってる。それで、それは実はどんな業界でも当てはまってて、ニッチなところでもその方程式は当てはまるのだ。
 で、そんな経済、だけでなく文化にも影響を及ぼす女性という生き物がやっかいなところは、そいつらの動向があの気まぐれな猫と性質が同じだってところだ。
 猫みたいなやつらは、自分の気が向いたときに笑い、気が向いたときに怒り、気が向いたときに泣く。それはまるで世間ってものから乖離してしまった一つの世界を形成していて、猫である一匹一匹に世界があるんだから、それこそ付き合うこちらの身になってもらえば分かるが、正直めんどい。どれくらいめんどいかというと、それはもう頭が分裂しそうになるくらい面倒くさい。
 特に喧嘩した時などは、まず問題の所在がどこにあるかというところから、探索しなければならない。
 まず始めに行うこと。それは問題についての質問を、既にこじらせている本人から、あるいは、その周辺の登場人物や状況証拠から類推し、想定問題を設定し、それをダメ元で猫様に提出する。
 それが通らなかったらもう一度過程を見直しながら同じルーチンを繰り返し、固まったものを再提出。それが通って初めて回答についてのフェイズに移行できる。
 想定回答は勿論のこと、それを猫様に宛てるときは、まず想定回答を聞いて頂くためにこちらは、持ち前のうんちくをふんだんに散りばめた為になる話をし、思いつく限りの美辞麗句を駆使し、良い感じになってきたところを見計らって想定回答を宛てる。という順路を踏まなければならない。ここまでが、件の猫様がへそを曲げたときの対処の流れと相成るのである。ここまで説明しているだけで、俺は本当に疲れてしまった。しかも、この工程が喜怒哀楽すべての工程であるからね。
 というわけで、つまり奴らはすこぶる面倒な生き物であると言わざるを得ない。
 件のように奴らは面倒な手続きで包まれた生き物なので、そこに含まれる様々な工程の色々な部分でトラブルや不具合が生じる。世の中の賢人たちは、それを言い換えて経済や文化、取り分け、文化を更に分解してみれば、音楽や映画や詩や文学や、なんというか、そのような色々に言い換えているのである。つまり賢人というと聞こえは良いが、やつらは俺から言わせればごりごりのフェミニストなのであった。
 なので、昭和平成令和ってって、時代が移り変わってもワイヤレスイヤホンで未だに関白宣言を聞いている俺は、芸術なんてものは点で分からないと思っているのだ。関白宣言は音楽ではなくて昭和の宣言書なのですよ。というと、同僚は、違うよきみ、あれこそフェミニストの代名詞ではないか、なんて言う。同僚君、それは断固として違うと思うよ。俺はそう信じたいね。さだまさしは胸に潜んだ猫の幻影に脅かされて心の叫びを宣言したのだ。つまり俺と同じなのだ。
 なので、もっと経済って良くなると思うなぁ。もっとこう、良い感じに効率化して自動化して改善してリモート化してサテライト化して。なので、昨今の状況って良い兆候なのかもしれないな。思ったとおり。で、俺がそういう色々を考えてるのはなぜかというと、外でふぎゃぁ!って深夜。猫が喧嘩をしているから。喧嘩するなよ、大声で。心配になるではないか。心配になるっていうのは誰のことかというと、俺は俺にびっくりしているから。こういったことをツラツラっと考えている俺についてなのであった。
 つまりその件の猫ってのは所謂生粋のヤンキーという人種であって、初めてあったときに君は
 「鉄筋食らいますかぁ?」
 て言った。
 「鉄筋食らいますかぁ?」多くの人々は、恐らくほとんど言われることがないままその人生を終えると思う。それはきっと俺についても言えたことだったはずで、俺はそれまでの経歴、つまり小中高大とエリート街道を進み、今は国に使える公務員。俺はまさしく国の為に生きていくのを決めたのであって、この猫が支配する日本国に生じる様々な問題を、根本的に解決できないから一個づつ片づけるために日々残業残業と心をすり減らす生活を行っているのであり、だけれどもそれは一つの使命感に燃えてのことで、そんな、猫の心理探求なんてものに時間を費やしてる暇はない。のであるはずなのに、先ほどの
 「鉄筋食らいますかぁ?」
 といったその言葉と態度はそれこそ、通常の人生を歩んだ者にとっては衝撃的であって、俺の頭の中はまだ鉄筋を食らっているわけではないのに、既に鉄筋を食らっているように、今まで習った物理や数学などなどの方程式はぶっとび、というか、それでは太刀打ちできない。きっと、この状況については、身体的な物理的な何かでないと、きっと太刀打ちできないのだろう、ってところまではなんとか自分自身の頭で導きだした答えであった。んで、「鉄筋食らいますかぁ」ってのは、それはまぁ彼女なりの冗談だったわけだけれども。それについても俺は本当に驚いていて、その姿は本当にまるで、猫に翻弄された社会の一人だったである。
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