第31話

文字数 639文字


 川を渡る間に起きた出来事に、三人はしばらく声も出なくなっていた。

「ふう……まったくよお! ただの田舎旅行だと思っていたら、とんだ展開だったな、マル」

「……うん、特に誉田の老人パワーには感心させられた」

「私も。あんな風に素敵に年を取りたいって思っちゃった」

「今から理想の老後の話かよ」

「別にいいじゃない。本当だもの」

「そういえば、今度はいつ誉田に戻ってくるんだ?」瀧が鼻をすすった。

「へえ、これはこれは。着いた時とはだいぶ態度が違いますなあ。辺鄙(へんぴ)な所はお嫌いでは?」小夜がねちっこい言い方で瀧を責めたてた。

「そんなことないって! 田舎とは言ったけど、嫌いだなんて言ってないぜ」

「はいはい」

「聞けよ!」

「私たちが次に誉田に戻る前に、ネットニュースで余一さんたちの顔を見られるかもしれないね」

「それ、あり得るな」

「あの業務用のドローンを使って、ほんとに自分たちで機械の森っ子を作っちゃうかもしれないよ?」

「それ傑作!」

「十分可能だと思う。少しぐらい重くたって、あの大きなドローンを飛ばせる電気さえあれば――」

「ちっちっちっ。違うだろ、マル。この場合はぁ~?」

 キョトンとしていたマルと小夜だったが、ニヤニヤする瀧を見て膝を打ち、座席から立ち上がった。

「そう! 元気(・・)があれば……」
 
 三人の呼吸はぴったりだった。

「「「何でもできる!!!」」」




(誉田の森    おわり)
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