第2話
文字数 1,186文字
おばあちゃんが、花の種を蒔き始めたのは、
3人の息子が反対を押し切って家を出て行ってからでした。
寂しさを忘れたくて、雑草だらけの空き地を毎日1人もくもくと耕し畑にしたのです。
最初は野菜を作っていました。
でも、野菜を作り食べても何故か心が満たされませんでした。
ある時、今まで気にもしていなかった隣家の畑に花が咲いているのを見て、おばあちゃんも花をつくりたいと思ったのです。
その頃のおばあちゃんは、まだへの字口ではありませんでした。
まだまだ若くて気が強く頑固だったおばあちゃんは、まだまだ若くて一本気なおじいちゃんと毎日毎日ケンカをしていました。
ケンカをしない日が無いくらいでした。
花の種を蒔いた時も、野菜の方がいいじゃないか食べられるんだからと、まだまだ若い頃のおじいちゃんに言われましたが言う事は聞きませんでした。
そして、種をまけどもまけども咲かない花畑を見て、いいかげん近所の笑いの種だから止めろ!と何度も何度も言われました。
でも、何と言われようと知らん顔で、まだまだ若かったおばあちゃんは畑に向かいました。
2年、5年、10年、毎日毎日畑に通い続けて、 花の咲かない畑をみている内に、おばあちゃんの口はいつしか への字口になってしまったのです。
ご近所さんや、おじいちゃんに対して意地のような気持ちもあり、毎日通っていた花畑でしたが、
1年間だけ畑に行かない年がありました。
ケンカばかりしていたおじいちゃんが病気で亡くなった時です。
おじいちゃんが亡くなっても、への字口のおばあちゃんは少しも悲しくないと思っていました。
お葬式の時も 口はへの字のままです。
ても、何故かおじいちゃんが亡くなってから畑へ行く気がしなくなってしまったのです。
ちょっと吊り上がっていたおばあちゃんの目じりが少しだけ悲しげに下がっていました。
おじいちゃんが亡くなってから1年がたった頃、少し痩せたへの字口のおばあちゃんは、また畑へ向かいました。
硬くなった畑に鍬を入れ耕し、2週間後にようやくチューリップの球根を植えました。
そして、これでもかと言うほど水をあげました。
でも、やはりその年もチューリップは咲きませんでした。
実はその時、初めて茶色の地面の片隅に
小さな白い花が一輪咲いていたのですが、
への字口のおばあちゃんは気づかなかったのです。
その花は、への字口のおばあちゃんに気づかれる事なくずっと枯れないまま、畑の隅で咲き続けていました。
でも、小さな白い花の他は相変わらず静かな茶色の地面のままです。
月日は流れ、への字口のおばあちゃんの
腰は曲がり膝も曲がり杖が必要になってきました。
朝、起きるとめまいがして、ふらつきます。
食欲も落ちて痩せて来ました。
いったい、私の体はどうなってしまったんだろうと思っていましたが、畑に行くのをやめませんでした。
そして、ある日とうとう畑で倒れ救急車で運ばれてしまったのです。
3人の息子が反対を押し切って家を出て行ってからでした。
寂しさを忘れたくて、雑草だらけの空き地を毎日1人もくもくと耕し畑にしたのです。
最初は野菜を作っていました。
でも、野菜を作り食べても何故か心が満たされませんでした。
ある時、今まで気にもしていなかった隣家の畑に花が咲いているのを見て、おばあちゃんも花をつくりたいと思ったのです。
その頃のおばあちゃんは、まだへの字口ではありませんでした。
まだまだ若くて気が強く頑固だったおばあちゃんは、まだまだ若くて一本気なおじいちゃんと毎日毎日ケンカをしていました。
ケンカをしない日が無いくらいでした。
花の種を蒔いた時も、野菜の方がいいじゃないか食べられるんだからと、まだまだ若い頃のおじいちゃんに言われましたが言う事は聞きませんでした。
そして、種をまけどもまけども咲かない花畑を見て、いいかげん近所の笑いの種だから止めろ!と何度も何度も言われました。
でも、何と言われようと知らん顔で、まだまだ若かったおばあちゃんは畑に向かいました。
2年、5年、10年、毎日毎日畑に通い続けて、 花の咲かない畑をみている内に、おばあちゃんの口はいつしか への字口になってしまったのです。
ご近所さんや、おじいちゃんに対して意地のような気持ちもあり、毎日通っていた花畑でしたが、
1年間だけ畑に行かない年がありました。
ケンカばかりしていたおじいちゃんが病気で亡くなった時です。
おじいちゃんが亡くなっても、への字口のおばあちゃんは少しも悲しくないと思っていました。
お葬式の時も 口はへの字のままです。
ても、何故かおじいちゃんが亡くなってから畑へ行く気がしなくなってしまったのです。
ちょっと吊り上がっていたおばあちゃんの目じりが少しだけ悲しげに下がっていました。
おじいちゃんが亡くなってから1年がたった頃、少し痩せたへの字口のおばあちゃんは、また畑へ向かいました。
硬くなった畑に鍬を入れ耕し、2週間後にようやくチューリップの球根を植えました。
そして、これでもかと言うほど水をあげました。
でも、やはりその年もチューリップは咲きませんでした。
実はその時、初めて茶色の地面の片隅に
小さな白い花が一輪咲いていたのですが、
への字口のおばあちゃんは気づかなかったのです。
その花は、への字口のおばあちゃんに気づかれる事なくずっと枯れないまま、畑の隅で咲き続けていました。
でも、小さな白い花の他は相変わらず静かな茶色の地面のままです。
月日は流れ、への字口のおばあちゃんの
腰は曲がり膝も曲がり杖が必要になってきました。
朝、起きるとめまいがして、ふらつきます。
食欲も落ちて痩せて来ました。
いったい、私の体はどうなってしまったんだろうと思っていましたが、畑に行くのをやめませんでした。
そして、ある日とうとう畑で倒れ救急車で運ばれてしまったのです。
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