第3話(3)

エピソード文字数 1,644文字

「うおおおおっ! これが、噂の龍馬像ながやね!!

 1928年。青年有志の方々が募金活動を行い誕生した、坂本龍馬像。像の高さは17尺5寸(約5・3メートル)で、台座を加えると44尺5寸(約13・4メートル)。お馴染み右手を服に入れているポーズをしており、堂々と太平洋を見つめている。
 ちなみに毎年『龍馬に大接近』というイベントが開かれていて、その時は像の傍に13メートルの展望台が設置されます。つまり銅像の目線で太平洋をご覧になれるので、是非参加してみてくださいませ。

「素晴らしいっ、素晴らしいぜよっ! 坂本先生の偉大さが、ひしひし伝わってくるぜよっっ!」

 龍馬さんの像を見上げたフュルは、ぴょんぴょん跳んで武者震いをする。
 そうそう、そうなんだよね。この銅像さんはなんでか、そういうモノが伝わってくるんだよ。

「にゅむっ、これがそーなんだねー。ほんとにすごーいっ」
「生で見ると、迫力が違うわね。立派だわ」
「だね。何度も見てもいい銅像ですわ」

 特に俺は、龍馬さんの眼差しが好き。とても真っ直ぐで力強い目をしてて、無意識的に尊敬の念を抱いてしまう。
 小さな頃は、こんな男になりたいと思ってたなぁ。

『うんうん、あの時分のお前はこの像が好きだったよな。大量に写真を撮って自室の壁に貼ったり、頻繁に写生をしたりしてたっけか』

 あ~、やったやった。月に3回は連れてきてもらい、毎回1~2時間は像の前にいた。
それで満足したあとは、家族でアイスクリン(きめが細かく、さっぱりしたアイスクリーム。とてもとても美味な、高知の名物です)を食べて帰ってたなぁ。

「師匠っ、これはもう世界遺産に認定されるべきぜよっ。さあ申請するぜよ!」
「や、無理です。俺にそんな権利はありませんから」

 ゆーせー君は、地球最強になった一般人。これは高知を代表する自慢の像なのだけど、わたしにゃできませんよ。

「あらら、そうなが。でもいずれ、世界遺産先生になるやろうにゃぁ」
「にゅむむー、そだねー。この像さん、すっごいもーん」
「おおっ、レミア先生は話がわかるぜよっ。先生も、坂本先生のオーラまでしっかり感じれたがやねっ!」
「にゅっ、にゅむっ。しっかり感じれたよー!」

 レミアはやや戸惑ったのち、首が取れそうなほど前に倒す。
 あの子は、明らかに感じれていない。ていうか俺も、龍馬さんのオーラまでは感じ取れませんよ。

「そうだっ、シズナ先生知っちゅうかえっ? 坂本先生がああやって右手を隠してるのは、意味があるがで!」
「そうなの? どうしてなのかしら?」
「ふふっ、よーく聞いてや! ああなっちゅうがはね――」

 フュルが得意げかつ誇らしげに、ポーズの由来や坂本龍馬の生い立ちを語る。けどそれはネットで仕入れた月並みな知識なので、高知生まれの俺はこの時間を利用して伯父さんにメールを送信。不吉な出来事のせいで『三人増えます』を伝え損ねていたから、適当に身分を偽って連絡をしておいた。

「――と、いうワケながよ。坂本先生は脱藩する時、相当悩んだがよね」
「そうだったの。思っていたより苦労していて、波瀾万丈の生涯だったのね」
「そうながっ、そうながよ! 壮絶で――」
「すみません。そこのタンクトップの方、少しよろしいでしょうか?」

 メールを終えてスマホを仕舞っていたら、若いママさんが近づいてきた。
 むむむ? どうしたのだろう。

「タンクトップは、ワシのコトやね。どういたが?」
「その言葉遣い、あなたは地元の方ですよね? この近くに水族館があるそうなんですが、どんな生き物がいるのか教えて頂きたいんですよ」
「つぎのよてーってのがあるんだけど、ボクねっ、すっごいのがいたら入りたいのーっ! おねーちゃん教えてっ」

 幼稚園児くらいの男の子がフュルの服を掴み、無邪気に引っ張る。


 ジャジャン!
 旅の思い出、その1。勇者魔法使い、現地民に間違えられる。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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