1−1:絶対小説 序文
文字数 327文字
なぜなら小説を読むという行為そのものが、現実から逃避するための、およそ不幸な人間が、自らの境遇から目を背けんがために行われるものであるからだ。
では幸福を得るために、君はなにをすべきだろう?
もちろん小説を読むことではない。
私が書いているような小説は、とくに読むべきではないだろう。
読むのではなく、書きなさい。
現世から受けた折檻によって醜く腫れあがった己が心を癒やすために、ただひたすらに物語を紡ぎ、目に見える世界を虚構の色に染めあげるのだ。
文字の羅列に魂を売り渡し、佇立する肉体を記述せよ。
それこそが真なる幸福に至る唯一の道。
すなわち、絶対小説である。