詩小説『消えゆく夏』3分であの夏大切な誰かを失った人へ 

エピソード文字数 367文字

消えゆく夏
あの人の言葉は蚊取線香の匂いがする。
どこか懐かしく、それでいて真新しい。
そんな人でした。
グラスの底に残された、
氷に薄まる梅酒の様に。
音も立てずに消えゆく夏。
打ち上げられた音だけする。
開け放った縁側で。
柔らかい風、髪を掻き分け、甚平は。
衿元、奥の、心をあやす。
あの人の嘘は、ラムネの味がする。
甘い香りがするけれど、何故か潔く。
そんな人でした。
白紙の空に残された、
千切れる飛行機雲の様に。
気づかないうちに消えゆく夏。
線香の香りに誘われて、
真白な盆灯籠が咲きました。
やけにおとなしい心で、
唇に乗せ、手を合わせた。
あの人の命は、部屋の隅に仕舞ったいつかの手持ち花火。
火をつけようとも紙は湿気て焦がすだけ。
 
だが、この胸の中咲いている。
静かに燃えている。

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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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