猫と少女Ⅱ

文字数 541文字

 ある日、庭で一人遊んでいたときのこと。
 少女は猫の姿を見かけました。
 どこかから迷い込んできた猫だと思いました。
 猫は年老いていて、どこか足取りも重そうです。

 少女が呼ぶと、猫はとぼとぼ寄ってきて、体をすり寄せてきました。

 少女はしばらく猫と遊んでいましたが、母親に呼ばれて家の中に入りました。
 猫とはそれっきりだと思いました。

 ところがその夜、少女が眠りにつこうとしたとき、ベッドの上にぴょんと何かが飛び乗りました。
 少女がびっくりして起きあがると、昼間遊んだあの猫がじっと見ていました。

「おまえ、どうしてここに? 誰にもみつからなかったの?」

 猫は体を丸めて、そのまま眠ってしまいました。
 そのまま少女も眠りにつきました。

(明日になったら、ママに話して、この猫を飼ってもらおう……)

 ところが、朝になると、猫の姿はありませんでした。

「ママ、猫見なかった?」

「猫?」

 怪訝顔の母親に、少女は、昨日の出来事を話しました。

「……だから、ね? いいでしょ? あの猫飼っても」

「だめよ。生き物はすぐ死ぬんだから」

「嫌! 飼うの!」

「だめ!」

「何よ! ママなんて大嫌い!」

 少女は今にも泣きそうな顔で、外に飛び出していきました。

 そしてあの丘の上の木を目指して、ぐんぐん走っていきました。
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