文字数 243文字



「また来年、この月の下で」
 その言葉が終わらないうちに、ユウのからだは闇に融けて消えてしまった。
 いつものように。
「ユウ、またね」
 わたしの頬をつたう涙は、手に持つ小さな花束にしたたりおちて夜露とまじりあっていく。
 ユウがくれた黄色く可憐な菜の花。わたしの名前「花菜」の字をひっくり返した花。
「元気いっぱい」
「快活な愛」
「豊かさ」
 そんな花言葉まで逆さまだった。
 勉強も運動も、自信あることなんかひとつもない、痩せっぽちで気弱な女の子。それがわたしだった。


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