「真夏のゴッドフェス」為ニキ

文字数 767文字

『真夏のゴッドフェス』『為ニキ』


 とある夏の日、ぼくの前に神様が現れた。

「あなたは勇者に選ばれました」

「マジで? じゃあ最強スキルを」

「中世ファンタジー的な冒険ではなく、夏祭りの人手が足りないので。みこし担いだり太鼓叩いたりするボランティアです」

「神様がみこし……? ていうかめっちゃ地域色強いな」

「なので半裸のふんどしルックになってください」

「ちょっ……」

 次の瞬間、ぼくは天界にいた。

 わけもわからず立ち尽くす中、ゼウスっぽいおっさんとオーディンっぽいおっさんがやってきて、

「お前さんが今年の勇者か」

「若いのに行事に参加するたあ、感心感心。ほい、これグングニル」

「え、いきなり伝説の武器」

「はよイージスの太鼓叩いてこいや。祭りをはじめる合図だかんの」

「でもぼく、伝説の武器なんて使ったことないよ!?」

 しかしあれよあれよという間にジャガーノートみこしに乗せられてしまう。

 そして目の前には、金糸で『威偉慈須』と刺繍された太鼓。

(――力が欲しいか。ならば太鼓を叩け)

「うっ! 頭に直接、声が……!」

(さあ、身も心もお祭り気分になるのだ)

「か、身体が勝手に……うおおおおっ!!」

 太鼓のビートに合わせて、浴衣姿の天使と悪魔がジャガーノートを担いで天界を練り歩く。

 エルフとドワーフが笑いながらコキュートス水をぶっかけ、数多の神々とともにみこしの列に加わっていく。

(――この役目を終えたとき、神々はお前に褒美を授けるだろう)

「なんだって!? じゃあ張り切っていくか!!」

 天界にかけ声がこだまする中、ぼくは必死に太鼓を叩く。

 我は選ばれし勇者なり。踊れ踊れ、神よ悪魔よ。


 ワッショイ!(ハッ!) ワッショイ!(ハッ!) 

 ワッショイ!(ハッ!) ワッショイ!(ハッ!)


 そして現実に戻ったとき、ぼくは焼きそばとビールを手にしていた……。


2018/06/21 07:56

yuruhuwa

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