第一幕(6)
文字数 438文字
エストラヴェンは袋を背負って出かけ、夕方帰ってきた。薄闇せまる丘を越え、スキーでひらりと滑走してきて、僕の横でぴたりと止まった。袋は食糧でいっぱいになっていた。干したパンの実、カディクという穀物、赤茶けた粗砂糖[あらざとう]の板。
彼はにこりともしなかった。ものにとぼしいこの冬の惑星では、盗みはもっとも卑劣な犯罪とみなされている。盗人[ぬすびと]より蔑まれるのは、自殺者だけだ。
夜、テントの中でエストラヴェンは、今後の全行程の距離と食糧の配分を計算した。
夜、テントの中でエストラヴェンは、今後の全行程の距離と食糧の配分を計算した。