【昔話】 ✿ 西方ヒストリア4

文字数 1,053文字

やはり山賊は、水を確保できる場所の近くにねぐらをかまえているようだ。


蛇渕(じゃぶち)にやってきた彼らを、忍者・忠平(ただひらと、家臣・黒木は、そっとうかがう。

若い者ばかりか。数は20人・・・

鹿を抱えているな。なんと、まだ子鹿ではないか。今、獲ったばかりのようだ・・・。


あやつら、蛇渕(じゃぶち)の水を(んでおる

獣を獲り、水を汲み、今からねぐらへもどるのでしょう

忍者・忠平と、家臣・黒木は、彼らのあとをつけた。

いい鹿が取れたなぁ、おかしら?

ああ。いくら狩っても、文句一つ言われないしな。


ここには殿様がいるそうじゃが、わしらには手足も出ない様子。くくく・・・

ふぅーん、殿様のこと、おかしらは知っているのか?

うそかまことか、風の噂でな。


この里にゃぁ、西の将軍がいなさったらしーぞ

なんねぇ、それ? 西の将軍なんて、おいら聞いたこともねぇ
 山賊たちの会話に、忠平と黒木は耳をすませていた。
どこの風の噂やら・・・
賊を見る黒木の顔が、たちまち険しくなる。
・・・・?
黒木の横顔を、忠平はしばし見つめた。
おー!! おかしら、帰ったか!

ねぐらには、他に10名の仲間がいた。


忠平と黒木は、忍者の顔ぶれや、武器などを物陰から探る。


日が沈み始める頃、二人は山を下り、お殿様の屋敷へ真っ先に向かった。

狩りに出ていたものが20人、ねぐらにいたものが10人。


敵の数は合わせて30人


他にも狩りに出た者がいたとしたら、それ以上でしょう

なんと! いつの間にそのような数が・・・

誰もが刀をたずさえております。


どれも、なまくら刀ですが、里人を傷つけるやも知れません。

賊は、いつ里を襲うとも知れぬゆえ、ねぐらへ攻め入るのがよろしいかと

されど、数が数じゃ。


村の男を集めれば、その倍以上の数にはなろうが、なにぶん刀に慣れぬ者たちじゃ。


下手に戦って、怪我をするやもしれん

でしたら、百の雷銃(らいじゅう)が狙っているように思わせればよいかと
百の雷銃?

百雷銃(ひゃくらいじゅう退()、といいます。本来は遁走術、忍びの逃げの技です。


この術を応用し、賊の不意を突けば、一網打尽にすることも、蹴散らすこともできます。

賊を捕らえても、数が数。牢も足りぬし、こちらには不利益じゃ。


蹴散らしたとて、のちに逆恨みされてものう・・・

水に落ちた犬は打てといいますぞ、殿


ここは情けをかけず、ひと思いに・・・

それを誰がするというのじゃ


殺生を行う者の身になると・・・

ですが、逃がすわけには参りませぬ

長い沈黙のあと。

賊を生け捕りにせよ。1人足りとも逃してはならぬ
承知仕り候
御意
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色