1話 俺は、もう大人です(4/5)

文字数 1,200文字

翌朝、ザルイルは早速、俺とライゴの体の大きさを同じにした。
すると、ライゴはただ小さくなるだけでなく、俺にとって見慣れた人間の子どものような姿に変わった。
もふもふの耳と小さなツノは左右に二本ずつ生えたままだったが、それ以外は人間に見える。しかも、俺の勤めてた保育園の制服まで着ていた。
「え……これは……?」
「ヨウヘイが保育しやすいように、再構成のついでに、ヨウヘイの思うライゴの姿にさせてもらった」
ザルイルが、さらりと答える。
言われてみれば確かに、ライゴの姿は、もしライゴが人間の子どもだったらこんなだろうなと思った通りの姿をしていた。
ライゴはキョロキョロと自分の体を見回していたが「へー、おもしろーい」とあっさりその姿を受け入れた。
あ。しっぽも生えてるんだな。
くるりと回ったライゴのお尻からはふさふさのしっぽがなびいている。
「巣には結界が張ってあるから出入りはできない。私から巣の様子はいつでも確認できる。もしライゴが解除したいと思ったなら、いつでも合図してくれ、すぐに解除するからね」
ザルイルはいつもより小さく、毛も無くなってしまった息子に、真剣に語りかけた。
なるほど、彼なりにセキュリティには気を配ってあったんだな。
……と言うことは、今までの、子どもたちと一緒に昼寝してる俺とか、童謡を歌いまくってた俺の姿も筒抜けだったんだ?
内心ちょっと恥ずかしくなってきた俺に、ザルイルは自分の眉間から毛を一本引き抜くと差し出した。
「……これは?」
「まだその姿のままでは不便だろうから、これで私の力を使ってくれ」
差し出されたその毛に触れた途端、それはくるりと俺の首に巻きついた。
「うぇ!?」
慌てたが、首へ食い込む事はなかった。ただ外れそうもないくらいピッタリではあった。
「これでヨウヘイは、自在に物を動かせる力を使える」
試しにと言われて、説明されるままに、部屋に出しっぱなしにされていた積み木を動かしてみる。
確かに。手には触れていないけれど、握っているような感触で、それを動かすことができた。
「うわ、すげぇ……。まるで魔法だ……」
これで、ザルイル達にとっては子ども以下のサイズでも、片付けくらいは出来るかも知れないな。
俄然やる気の出てきた俺に、ザルイルは静かに続けた。
「それに、私がその気になれば、いつでもヨウヘイの首を折る事が出来る」
「……っ!」
思わず息を呑む。
あ……。そ……そうだよなぁ。……やっぱり……?
可愛い我が子を、出自不明の見たことも無いような虫けらと一緒に置いてくんだもんな?
そんくらいは、して当然だよな……。
頭でそう理解しつつも、頬を冷たい汗がつたう。
「脅すつもりはないが、子ども達の事、よろしくお願いするよ」
ザルイルがいつもの紳士的な態度で告げる。
「いえ……、俺もこれは当然だと思います。こちらこそ、よろしくお願いします」
俺がペコリと頭を下げれば、彼は意外そうに、大きな瞳を少しだけ揺らした。
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登場人物紹介

大木 洋平(おおき ようへい)男

     現役保育士だったが、保育中に寝落ち、気付けば異界に居た。

     身長178センチ。一人暮らしで料理上手、子ども好き。歌も好き。

     5話までほとんど触れられないものの、生い立ちは割と悲惨。

     暗くて狭いところに閉じ込められない限りは、明るく優しい青年。

ライゴ  ザルイルの息子、明るく素直な四歳くらいの少年。

     二つ眼のせいで保育園に入れず、二つ眼にコンプレックスがある。

     グルーグレーの体毛と羽と瞳、ツノは四本。

     アイコン絵は人型時。

シェルカ ザルイルの娘、引っ込み思案で心の優しい三歳くらいの幼女。

     虫が苦手で、虫のようなサイズの洋平を最初怖がっていた。

     パステルピンクの体毛と羽、目は紫二つ眼→成長後は四つ眼に。

     アイコン絵は人型時。

ザルイル ライゴ、シェルカの父、落ちていた洋平を子どもへの土産にと拾ってきた。

     紳士的で落ち着いた性格。子ども達をとても大切にしている。

     外見は紫の毛に覆われたモッフモフ生物。ふわふわの羽で飛ぶ。

     ツノは六本、琥珀色の眼が八つある。

     アイコン絵は人型時。

リーバ  最初は〇歳の赤ちゃんとして登場するが、途中で脱皮して二歳ほどの見た目になり、

     辿々しく喋るようになる。

     独占欲が強くて洋平に執着している。洋平の歌が好き。

     真っ白でぬめぬめな蛇っぽい生き物。血のような赤い眼。

     一見単眼に見えるが、実は単眼の中にも眼を持っている。

リリア  山ほどもあるサイズのリーバの母。サイズの割にしゃべりは軽い。

     超回復薬を提供してくれる(実は唾液)

     ぱっと見ヘビっぽい外見だけど、ヌメヌメしている。

     ザルイルとは幼なじみ。

ニディア 正統派ドラゴンであることを誇りに思っている誇り高きツンデレ娘。デレ多め。

     ボクっ娘。最初、洋平に男と間違えられていた。六歳。

     一般の保育園に通っていたが、力が強く牙を剥く度拘束されていたため、

     そうしない洋平のところへ押しかけてくるようになった。

     緑の鱗が艶々のドラゴン。金色の六つ眼。

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