間幕 在りし日の午後
文字数 466文字
カウンターに本を置くと当番が顔を挙げた。
「おぅ」
応えた声は帰宅部部長の刀根センパイだった。
「…なにやってんですか」
「当番」
「いや、先輩って受験じゃ…?」
「そうだった」
刀根センパイは慣れた手つきで本を受けとり、「返却」と言いながら、本をひっくり返す。
「群大荒牧一年間。そのあとは昭和だな」
前の日付印を取り上げて、裏表紙を開ける。
「群大って教育ですか?」
「いや。それより反省文。明日までな」
「は?」
「カードどうした?」
「はいっ?」
「貸出カード」
「えっ?」
思わず刀根センパイの手元を覗き込む。空のポケットが目に入った。たしかに入ってない。どこかで落としたらしい。
どこだ? 想いをめぐらす。
――昨日の予備校か。
駅の改札で忘れたことに気がついて取りに戻ったら、えらく綺麗な女の子が拾って渡してくれた。
――あの時か。
「期間延長の手続きとっとくから、それまでに探せ。ただし、一週間」
刀根センパイはこういう時、何も聞かない。
「すみません。助かります」
「おぅ」
応えた声は帰宅部部長の刀根センパイだった。
「…なにやってんですか」
「当番」
「いや、先輩って受験じゃ…?」
「そうだった」
刀根センパイは慣れた手つきで本を受けとり、「返却」と言いながら、本をひっくり返す。
「群大荒牧一年間。そのあとは昭和だな」
前の日付印を取り上げて、裏表紙を開ける。
「群大って教育ですか?」
「いや。それより反省文。明日までな」
「は?」
「カードどうした?」
「はいっ?」
「貸出カード」
「えっ?」
思わず刀根センパイの手元を覗き込む。空のポケットが目に入った。たしかに入ってない。どこかで落としたらしい。
どこだ? 想いをめぐらす。
――昨日の予備校か。
駅の改札で忘れたことに気がついて取りに戻ったら、えらく綺麗な女の子が拾って渡してくれた。
――あの時か。
「期間延長の手続きとっとくから、それまでに探せ。ただし、一週間」
刀根センパイはこういう時、何も聞かない。
「すみません。助かります」