間幕 在りし日の午後

文字数 466文字

 カウンターに本を置くと当番が顔を挙げた。
 「おぅ」
 応えた声は帰宅部部長の刀根センパイだった。
 「…なにやってんですか」
 「当番」
 「いや、先輩って受験じゃ…?」
 「そうだった」
 刀根センパイは慣れた手つきで本を受けとり、「返却」と言いながら、本をひっくり返す。
 「群大荒牧一年間。そのあとは昭和だな」
 前の日付印を取り上げて、裏表紙を開ける。
 「群大って教育ですか?」
 「いや。それより反省文。明日までな」
 「は?」
 「カードどうした?」
 「はいっ?」
 「貸出カード」
 「えっ?」
 思わず刀根センパイの手元を覗き込む。空のポケットが目に入った。たしかに入ってない。どこかで落としたらしい。
 どこだ? 想いをめぐらす。
 ――昨日の予備校か。
 駅の改札で忘れたことに気がついて取りに戻ったら、えらく綺麗な女の子が拾って渡してくれた。
 ――あの時か。
 「期間延長の手続きとっとくから、それまでに探せ。ただし、一週間」
 刀根センパイはこういう時、何も聞かない。
 「すみません。助かります」
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登場人物紹介

草壁 はるか(くさかべ はるか)

県立東陵高校の2年生

放送部副部長、図書委員会所属

感情に正直な17歳

この間「恋」を「変」と書いて、母親にあきれられた。

誕生日は3月28日

神宮 御古都(じんぐう みこと)

県立東陵高校1年生


図書委員会所属

放送部では録音や効果音を担当

手書きの文字のクセがある感じが好き


誕生日は2月12日

深町 美帆(ふかまち みほ)

県立東陵高校の1年生


はるかに振り回されぎみ

学年上位を常に取っている秀才

得意科目 技術

苦手科目 英語 国語 世界史


誕生日は4月1日

七五三木文乃(しめぎ あやの)

朔風女子高の2年生

おっとり穏やかな性格で、暴走ぎみ


誕生日は11月3日の文化の日

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