内川の誓い

文字数 6,937文字

黒沢(くろさわ) 俄勝大姉(がしょうだいし) 蓬艾(よもぎ)

「…塵労の穢土(えど)に、開かずの陵に、鮮血の驟雨(しゅうう)が降り注ぐ…幾億の衆生が(あや)められ、それと入れ替わるかの如く、数多の悪鬼羅刹(らせつ)が怨霊怪異する…かの日の(わたくし)が、そうであったように…でも、此度こそは…!」

 この決戦には、世界各地から義勇軍が参陣している。東京大森からも、美保関(みほのせき)天満(てんま)黒沢(くろさわ)俄勝(がしょう)を中心とするアプリコーゼン中隊が、北方戦線へと急発進している。

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黒沢俄勝(YF-23A)

「YFブラックウィドー、離陸準備完了。俄勝、出撃致します!」

 この部隊を率いる女人・黒沢俄勝は、かつて忌まわしき祟りゆえに、永く棺に封じられていたが、地球に衝突した小惑星・隕石のエネルギーを浴びて蘇った、恐るべき妖魔である…のだが、色々な事情があって、今では人類文明を守護する側の味方になっている。この戦争は、表向きには国家の政治的対立だが、実際には、敵味方の双方に異類異形の者達が関与する、もう一つの「総力戦」であった。

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「義勇軍の皆様、私達も野州(やしゅう)を突破する事ができましたので、これより最前線の援護に参ります。宇都宮三浦(みうら)フレデリック(Frederick)様は、第一陣の会津軍と御一緒に、津軽海峡を制圧し、蝦夷島に上陸なさって下さい。安房総(あわ ふさ)黒井(くろい)勇人(はやと)様は、利根川を渡河して常陸へと北上し、第二陣の星川軍と合流なさって下さい。それから…東京(アキラ)様は、十三宮教会による住民退避を指揮なさると同時に、第三陣の東海軍を誘導なさって下さい…過酷でしょうけど、死ぬまで持ち堪えて下さいね、あっくん
「…さ~て次は、西国の皆様も出番ですよ。畿内・山陽の方々は、第四陣の軍役をお願い申し上げます。和泉(いずみ)間宮(まみや)主計(かずえ)様、安芸備後(あき びんご)益田(ますだ)権納言(ごんなごん)様を司令官とし、亡命パレスチナ傭兵を指揮なさっておられる、松浦(まつら)アイユーブ(Ayyub)安子(やすこ)様にも御参加頂きます…お三方、此度は同士討ちなど犯さず、仲良くやって下さいね。そして最後に、九州の軍勢が第五陣です。火州(ひしゅう)夢宮(ゆめみや)魅咲(みさ)様は芸備(げいび)に、十三宮(とさみや)咲都季(さつき)様は美濃飛騨(みの ひだ)の増援軍へと参陣なさって下さい。夢宮(ゆめみや)乖離(かいり)様と米村(よねむら)桜華(おうか)様は、瀬戸内海の航路を支援なさって下さい。それでは皆様、最善を尽くし、必ず生き残って下さいね…」

 政府軍と義勇軍、各地に潜伏するコミューン軍が、蝦夷島だけでなく、日本全国で次々と戦端を開きつつあり、その戦火は、上空の人工衛星からも、そして黒沢俄勝の眼目にも、焼き付くほど良く見えた。彼女自身もまた、あるいは「世界最終戦争」と呼ばれるかも知れない戦いに、その身を投じようとしていた…。

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「かつて私が望んだ事、それは神人(しんじん)への復讐、世界の破滅…あれから数百年前の歳月を経た今、私に希望があるとすれば、それは…世の平安。もう二度と、あの日の罪業(ざいごう)を繰り返さないために。そして、一番の望みは…この私を受け容れて下さった、あなた様への祝福…だから、後もう少しの間だけ、待っていて下さい…必ず、あなた様の御前(みまえ)に帰るから…!」
「聖様、内川(うちかわ)まで到達致しましたよ。あともう少しですね」

 津軽海峡の決戦では、第一陣の会津軍蝦夷島に上陸し、これに第二陣の星川軍が続き、更に第三陣として、事実上の「十三宮軍」である津島三河も合流しつつあるはずだ。一方、私と姉さんは、やたら頼りになる須崎司祭に導かれ、見覚えのある場所に辿(たど)り着いた。ここは確か、あの邪馬台国事件の日に、姉さん達と出逢った場所である。あの頃が良い時代だったとは思わないが、皆が生きていた。後に権力の闇に呑み込まれた勇姉さんも、まだ学生だった。そして、私の隣には、今は亡き(めぐみ)さんも…。

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「お帰り! あれ、『ただいま』って言うのが正しいかな?」
 え…?

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「め…仁!」
「仁様? 御無事だったのですね!」
 仁さん…いや、そんなはずは無い! 彼女は行方不明になった後、確かに「死亡」と発表された。死んだ仁さんに逢えるという事は、私達も死んだのか? 対小惑星隕石砲が着弾して、その炸裂で私は…。

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「何を戸惑っている? 早く仁さんを保護して、脱出せよ!」
「心配掛けちゃって、ごめんね…でも、約束は忘れないよ。私達はずっと一緒だもん!あなたの隣にはいつも私が…」
 仁さん、ありがとう…! 言葉を言い終わる頃には、互いを強く抱き締め合っていた。この上は、皆で生き残る以外に道は無い!

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「…はい! 皆で生還しましょう、最後まで!」
「では聖様、例のを『実験』しますか?」
「姉様・ガラシヤ様、どうするの?」
 一行に帰参した仁さんの問いに、須崎司祭が先に答えた。

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「あれの中身が放射線であれ神経ガスであれ、こういう情況では、年少の方を優先的に保護するのが原則です。加えて、例え迎撃に成功しても、高々度での核爆発に伴う電磁パルスが発生し、社会資本の破壊と、甚大な混乱が予想されます。何らかのシェルターが必要ですね」
「また、顯ちゃんに編んで貰った資料を、確実に保存せねばなりません。そこで、前にもお話し致しましたが、お二人は一時的に、宝石の中に退避して頂こうと思います。その際、お持ちの『無題文書』も御一緒に!」
「つまり宝石の中にある世界を『防空壕』にするの? でも、そんな力を使いこなせる人は…」
「はい…亜紀(あき)ちゃんも明野(あけの)様も『』に成り、もう現世にはおられません…ですがあの後、お姉ちゃんも優和様から智慧を授かり修行を積み、ある程度は使えるように成りました。私と優和様が互いの力を共鳴させれば、扉を開く辺りまでは可能かと。やって見ないと分からない部分も残りますが…」
 彼女らが話しているのは、地球のマグマなどから永い歳月で形成された鉱物が、その歴史を記憶する事で、内部に独自の「世界」を構築するという超自然観に基づく魔術である。パワーストーンの中でも、先天的な素質に左右される傾向が強く、須崎司祭はかなり前から防御手段として習得していたが、聖姉さんの能力は平均程度と言われる。過去、この魔術を極めようとした者が何人か居たが、多くは道半ばで破滅したり、不可思議な最期を迎えたりしている。

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「分かった! やって見ようよ! あなたも、良いでしょう?」
 この機に及んで魔術頼みという発想が適切なのかは疑問が残るが、それが最善の方法だと皆が信ずるならば、今更批判するのも不毛であろう。

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「あ! その前に…例の無題文書を、お貸し頂けませんか?」
 そう言われ、寿能城代の資料集を姉さんに手渡した。

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「かの小惑星は『禍津日神(まがつひのかみ)』、またの名を『石の魔女』などと謡われました。そして、その魔女を討たんとして造られたバベルのが今、対小惑星隕石砲とか言う名前で、私達人間に裁きを下さんとしています。恐らく、人の世から罪や穢れは無くならないでしょう…ですが、過去を現在から未来へと継承する中で、それらを悔い改め、禊ぎ祓う事はできます! この無題文書が、贖いの水と成り得る時を願って、私が題名を名付けようと思います。皆様…石の魔女が始めた神話に終止符を打つ覚悟は宜しいですか?」

「もちろんだよ!」
「言う迄も無く」
 仁さんと須崎司祭、そして私が頷く。

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「かつて円卓の騎士は、物語の作者である同時に登場人物でもありまた聴衆とも成ったそうです。その意味で、これは地球世界と極東の神国を舞台とした、現代における騎士道物語なのかも知れません。それゆえ、本書の名前は…」
 そして姉さんは、表紙の空欄に筆を乗せた。

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Planet Blue Ich-Roman
 「イッヒ ロマン」は「私小説」「一人称小説」のゲルマン語で、姉さんは本書に「私達の物語」という意味を込めた。あとは、これを持って…。

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「対小惑星隕石砲が東京方面に接近! 地上に残っている区民は、大森大隊の誘導に従い、一刻も早く退避して下さい!」
「聖様、急ぎましょう! 今の私達には、単独でのフィールド展開に限界がありますので、少し強引な方法ですが、複数のパワーストーンを共振させピラミッドを築きます。私は左に、海底のアクアマリンを配置します。全ての慟哭を、この藍玉(らんぎょく)に込めて…!」
「あ、そうやるんですか…それでは、私は司教の紫水晶を右に捧げて…何か強そうな事を申せば良いのですか? あ…浅き夢見じ、アメジスト!」
「…あ、駄目ですね」
「あれ、どうしちゃったの?」
 私とその隣の仁さんが困惑するが、すぐに分かった。

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「私と聖様がを二つ置いても、にしか成りません。を開くには、もう一つの点で3角形を創らなくては…」
 当然の真理に今更気付き、落胆する一同。打開するには、能力者があと一人必要なのだが、思い当たる人物は、もうこの世に…。

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「伝令! 津軽海峡にて星川軍苦戦中、玉砕の恐れあり! 東海鎮台は津島三河の進軍速度を上げると共に、可及的速やかに増派願いたいとの事! 以上の件、大森から転送致します!」
 寿能城代はいつの間にか平和島司令官を気取っているが、指揮命令系統が崩壊するほど苦戦しているのか? しかし、あの星川軍が全滅寸前とは…ん? 星川?

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「ああ! そうです、その手がありました!」
 姉さんはそう言うと共に、お気に入りのタロット カードを取り出した。『クリスタルタロット』と書かれているが、トランプ占いをしている場合だろうか? そんな疑問をよそに、姉さんは手馴れたカードをシャッフルし、三つの束にカットする。

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「仁、この中から一枚選んで下さい!」
「あ、はい! えっと…これにする!」
「十三番『』の逆位置、さすが仁ですね! では、あなたが二枚目を!」
 そう言われ、私もカードを一枚引く。それを裏返し、描かれていたのは…。

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「素晴らしいです! 十七番『』、これならできます! 二人とも、そのカードを十字に重ねて下さい!」
 良く分からないが、望ましい結果らしい。「星」はともかく、「死」って良いカードなのか? 取り敢えず指示通り、私と仁さん、互いのカードを重ねる。すると姉さんは、先程の紫水晶とは別に、もう一つの鉱物…どこか見覚えのある薔薇水晶を取り出した。そして…。

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「南無や…至りし者の御霊よ、天の叡智のもとに蘇り(たま)え! せいやーっ!」
 十字展開したカードに薔薇水晶が触れた刹那、火花放電の如く生じた光が輝き、間も無く柱を描いた。やがて光の中から、人影らしき形が…。

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星河(ほしかわ)亜紀(あき)

「…ん? あら、ここは…?」

 聞き覚えのある声…いや、まさか…?

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「あ…あっちゃん!」

 私と仁さんが、一斉に目を丸くした。現れたのは星河(ほしかわ)亜紀(あき)、またの名を「青薔薇」と俗称された。今は亡き星川家総帥の、分家の姪に当たる。また、先ほど姉さんと須崎司祭が実行しようとして失敗した魔術の真理を、誰よりも知り尽くした者(の一人)である。そして…数年前の不幸な戦争に際し、敵の大軍に包囲された母校、渋谷七宝院(しっぽういん)学園に籠城し、将軍を戦死させるなど敵方に一矢を報いた後、自身も星夜へと消えた、紛う事なき故人である。

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「えーっと…私は確か、トキ愛美(あゆみ)夢有(むう)を先に逃がして、私と椿(つばき)(みなと)渋谷に残って、結のもとへと向かう政府軍を足留めするために、最期の手段を…」

「亜紀ちゃん! 永眠中の所を強引に召喚してしまい、申し訳御座いません…ですが、お力を貸して頂きたい事が…」
「…ああ、結の家出先の…あの怪しい教会の皆さん? 聖さんに、『グラなんとか』さん。あなたは…『ひとみ』よね?」
 仁さんが、庖丁を突き立てた…。

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「めぐちゃんだよ! め・ぐ・み!」
「あら、そう…隣のあなたは、誰…かしら?」
 誠に遺憾である

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「亜紀ちゃん、お願いしたい事があるのですが…」
「入信の勧誘ですか? 私、神話には多少関心もありますが、形骸化した在来の教会には…」

「信じて下さらなくても構いませんので、とりあえずお聴き下さい。まず、あなた様はもうお亡くなりになっています。次に、かつてあなた方が『メモリア(MEMORIA)』などと呼んだ魔術は、まずカール(Karl)様があなた様に討たれ、次いで明野様も蒸発し、最期にはあなた様自身がああなった結果、今や禁忌と化し、生き残っているのは、この唯一神グラティアただ一人と…」

 弁論術に定評のある須崎司祭が(論理を飛躍させながら)懸命に説得を試みている。青薔薇は、馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの態度で聴いているが、少なくとも私達を「味方」だと認識してくれたようだ。

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「…つまり、たった1回のメモリア展開のために、私を叩き起こして、ここまで引き摺り出してくれたわけ? そもそも、3人なんて必要ないわ。私一人で充分よ…でもまあ、試して見ましょうか? 聖さんと須崎さんが底辺を支えてくれれば、一人よりは長持ちするかも知れないし」
「…来た! 迎撃開始の電報を受信! 間もなく、伊豆反射砲がレーザーを発射する! 閃光に注意して下さい! 繰り返す…」
「さあ、急ぎましょう! 優和様・亜紀ちゃん、皆の力を一つに!」
「はい! では改めて第一、悪魔の左手!」
 須崎司祭が、左下にアクアマリンを。

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「えっと…じゃあ私は第二、神の右手!」
 姉さんは、右下にアメジストを。あとは、青薔薇が頂点に第三の宝石を…。

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第七の部屋!」
「えー! あっちゃん、数字幾つか飛ばしちゃったよ…」
「死ぬ前に一度やって見たかったのよこれ、ピラミッド!」
 この情況でも遊ぶのは彼女らしいが、しかし、薔薇水晶の頂点を遂に得た三角形は、点から線へ、線から面へと次元を昇華させた。やがてその面は現世から遊離し始め、局所的な擬似ブラックホールの如き様相を呈した。

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「…開けましたね! 優和様、それに亜紀ちゃん! ありがとう御座います! そして、亜紀ちゃんを呼べたのは、あなた方のお蔭ですよ^^」
「はーい!」
 しかし姉さん、タロット カードから一体どういう因果で、星河亜紀の幽霊を呼び出したの?

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「簡単な事ですよ。『』の逆位置…つまり死とは逆の事象を、『』に対して奏上申し上げた次第です。なお、『死』のカードには『扉を開く』という意味が御座います。また、星座惑星などの『星』は、その子弟である守護石と密接に関わると、太古より信じられて参りました。私達が認識する宇宙の中で、これらに惹き寄せられるお方と言えば…」

「私と、七星(ななせ)くらいしか居ないわね…まんまと釣られたわ。さあ二人とも、時間切れになる前に、さっさと入りなさい。私も早く還りたいんだから…」
「水底にて天主の恩寵を賜り、早数十年…この上は私、須崎グラティア優和、しぶとく見届けさせて頂きましょう! 全てが終焉した後、聖杯を手にする騎士はどなたなのかをね…」
 上空には対小惑星隕石砲と、それに対する迎撃ミサイル、ついでに緊急発進した戦闘機、更にはレーザー光線までもが飛び交っているらしいが、もはや自分の眼中には入らない。宝石の中に構築されたもう一つの世界において、私自身と、ついでにこの『プラネット ブルー』とか言う偉そうな資料を保護しなければならない。それが短期的な「避難」で済むか、長期的な「封印」と化すのかは分からないし、鉱物の「内部」も未知数だ。ただ、地球の歴史を身に刻んだ宝石の中に、「私達の物語」と銘打ったばかりの文書を持参するのだから、それは必然的に、この世界における一切の存在、その記憶の欠片を辿る旅になるであろう。その中には、自分自身の姿もあるかも知れない。

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 さあ、突入だ…と前に進み始めた時、片腕を抑えられた。振り向いた、後ろの正面には…。

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「一人で抜け駆けしちゃ、駄目だよ? 初めて出逢った時も、あの年の夏にも、約束したでしょ? 私の隣にはあなたがあなたの隣には私が居る…私達は、ずっと一緒だって!」
 仁さん…あなたの瞳には、今日という時も見えていたの?

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「どうなんだろう? その答えはきっと、この先にある旅で、分かるんじゃないかな? さあ、一緒に行こうよ! そうだ、昔みたいに腕を組んでもいーい? だって…大好きだから^^」
 私は深く頷き、二人で共に歩み始めた。開かれた「門」へと近付くに連れて、視界が光で満たされて行く。支えて来てくれた皆と共に友との約束を信じた未来を忘れ去られつつある全ての大切な記憶を守り続ける。私の前には、いつも聖姉さんが居てくれた。彼女の胸には、勇姉さんの想いも。そして、私の隣には…。

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キミの声聴かせて

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登場人物紹介

【久遠実成】とさみや かんなぎ めぐみ

十三宮 巫部 仁

関東州 相模県 箱根町


・一人称「私」「めぐちゃん」

・二人称「あなた」「君(キミ)

・地位 同級生

・専攻 日本文化史(国語・日本史・倫理)

・属性 

・武技 庖丁・雷撃

・愛機 SCPX-02「自転火車(クラスター爆弾)


 主人公「あなた(夢小説)と共に箱根東京大森で幸せに暮らす、清純な巫女さん。母は十三宮命、姉は十三宮聖十三宮勇


「私、めぐちゃん! 大好きなあなたの、お嫁さんだよ^^」

【救世菩薩】とさみや いずのかみ ひじり

十三宮 伊豆守 聖

東海州 駿河県 伊豆郡 伊東市


・一人称「私」

・二人称「あなた

・地位 お姉ちゃん

・専攻 宗教哲学(神学修士)

・属性 

・武技 クリスタルタロット・雷撃

・愛機 SCPX-01「飛行箒木(大型爆弾)


 あなたの優しいお姉ちゃん、伊豆などで日本帝国自由天主教会(十三宮教会)を率いる神官(司祭→主教。母は十三宮命で、双子の十三宮勇、妹に十三宮仁が居る。


「あなたのお姉ちゃん、十三宮聖ですよ^^」

【正教非戦】すざき Gratia ゆうな

須崎 グラティア 優和

関東州 相模県 小田原市


・一人称「私(わたくし)

・二人称「使徒様

・地位 修道院長

・専攻 海洋学

・属性 

・武技 パワーストーン(アクアマリン)


 相模湾修道院で働く司祭だが、理系出身で海洋学にも詳しい。


「神様、お金が欲しいです…!」

【心焔文殊】みほのせき だざいのしょうに てんま

美保関 大宰少弐 天満

関東州 東京府 東京市 大森区


・一人称「あたし」

・二人称「分隊長

・地位 下級生

・専攻 軍事学

・属性 

・武技 レーザー剣

・愛機 ステルス戦闘機ラプター(高機能ミサイル)


 隕石による出雲 松江市の壊滅後、十三宮聖に保護されて東京大森へと移住。アプリコーゼン義勇軍の第三中隊(ポタージュ中隊)を率いる、正義感(と色情欲)の強い爆乳美少女。


「胸の豊かさは心の豊かさ、あたしなら隊長の期待に応えられますよ!」

【戦原維新】あららぎ むきょう

塔樹 無敎

関東州 東京府 東京市 大森区


一人称「自分」

二人称「隊長

地位・後輩

専攻・情報数学

属性・

武技・電磁レイルガン


 元来は「蘭木 訓」という学生だが、自らの存在をサイバースペースへと移す実験に成功した「バーチャロイド」であり、アプリコーゼン義勇軍の第四中隊に所属。


「世界の未来を、隊長と共に…!」

【五族協和】だいかくじ きらひめ

大覚寺 雲日女

関東州 東京府 東京市 麹町区


一人称「予」

二人称「あなた様

地位・女帝

専攻・経済学

属性・

武技・パワーストーン(ダイヤモンド)


 大覚寺元化の皇女、日本帝国の初代皇帝「光復女帝」。

法と民意に基づく議会政治を尊重し、必要に応じて助言する。

臣民との交遊を楽しむ爆乳お姫様。


「あなた様のお体、予の胸に包み込んで差し上げます…

【天道顕現】ひもと だいしょうこく たける

日基 大相国 建

関東州 東京府 東京市 麹町区


一人称「私」←(俺)

二人称「貴様

地位・太政大臣

専攻・政治史

属性・

武技・鉄剣

愛機・F/A-22A「ラプター」ステルス戦闘機(高機能ミサイル)


 日本人民共和国に従っていたが、アメリカ連邦に亡命し、米軍と共に人民共和国を崩壊させた、現代日本の英雄。

自由党を結成し、日本帝国の最高権力である太政大臣(大相国)を務める。

敬虔なキリシタン信仰に基づく、強固な使命感を持った政治家だが、自己だけでなく他者にも厳しい性格。


「私が切り開く新時代、それこそ貴様が物語るべき神話だ!」

【偶像崇拝】よしの Iolite すみれ

吉野 アイオライト 菫

西海道 筑紫県 筑前郡 大宰府


一人称「菫(ちゃん)」「アタシ」

二人称「プロデューサーちゃん

地位・西海道首相

専攻・芸術学

属性・

武技・両手剣

愛機・F-15S/MTD戦闘機(高機能ミサイル)


 九州グラビアイドルであり、日本帝国の西海道首相(民主社会党)なども務めた。

どんな仕事も真剣に取り組むが、自身の爆乳ボディーを人気獲得の武器として積極的に利用し、ファンへの大胆なサービス(枕営業)など、極めて開放的な性格を魅せるポピュリスト。


「菫の体、好きなだけ揉んでイイよぉ♪ プロデューサーちゃん

【青鳥開眼】とさみや Maeterlinck いさみ

十三宮 メーテルリンク 勇

関東州 禍津日原総督府


・一人称「私」

・二人称「分隊長君

・地位 中隊長

・専攻 航空工学

・属性 

・武技 銃剣

・愛機 艦載ステルス戦闘攻撃機ライトニング(対艦ミサイル)


 十三宮命の娘、十三宮聖の双子(当時はトサミヤ教団内の極秘出産で、厳密な姉妹関係は不明)十三宮仁の姉。宗教的平和主義者の聖よりも現実的・右翼的な思想を持っており、津島長政から軍事訓練を受け、禍津日原総督府駐屯軍に仕官し、航空戦部隊と特務機関に所属、後には東京政府の権力にも影響を及ぼす女傑となるが、全ての勝利は天下泰平のためであり、最期には自身の生命さえも捨て駒にした。敵・味方を瞬時に識別する能力があり、落合航ラズール中隊で活躍した後、自らサフィルス中隊のリーダーを拝命し、艦載ステルス戦闘攻撃機「ライトニング」を駆使して戦い、遂には彼女専用の試作機「アスウェル零式」までもが特注されるエース。主人公に悪戯をしたりするが、カップ麺も調理できないほど壊滅的に女子力が低く、政治・軍事以外は色々と抜けているのが不安。


我抗うならば

【暴飲愚者】AWACS Krystalos

空中警戒管制機 クリスタロス

関東州 禍津日原総督府


・一人称「私」

・二人称「分隊長

・地位 指揮官

・専攻 情報工学

・属性 

・武技 電子戦

・愛機 パシフィック管制機(ECM)


 旅客機を軍用に改造した空中警戒管制機で、日本国民軍の禍津日原総督府駐屯軍に所属。小惑星の破片が衝突した隕石クレーター(禍津日原)の上空を哨戒しており、有事には落合航十三宮勇などの部隊を指揮する。敵軍の攻撃が届きにくい高度を飛行しており、地上の司令部が壊滅しても上空から作戦を継続できるほか、敵のレーダーや無線通信を撹乱する電波妨害(電子戦機)機能も搭載できる。一見、冷静に任務を遂行する生真面目な性格だが、正体は割と優しい豊乳お姉ちゃんであり、頼めば(色々と)遊んでくれるらしい。


「分隊長、交戦を許可する」

【海天富猫】おちあい Lazur わたる

落合 ラズール 航

関東州 禍津日原総督府


・一人称「俺」

・二人称「貴様

・地位 司令官

・専攻 戦史

・属性 

・武技 機関砲

・愛機 スーパートムキャット艦載戦闘機(長距離高機能ミサイル)


 世界大戦に出征後、中南米(ラテンアメリカ)に亡命していた落合翔(かける)の子で、昼は『新約聖書』と『銀河鉄道の夜』を愛読し、夜は南十字星座に瞳を輝かせながら育った。日本人民共和国崩壊後、西宮堯彦に従ってクレーター復興庁に所属(少佐)禍津日原駐屯軍基地司令官禍津日原総督海軍大臣を歴任し(中佐→大佐)、退役後も羽田国際空港に勤務。アメリカ連邦で海軍訓練を受け、日本国民軍ラズール中隊(第13海上空戦隊)エースとして、空中警戒管制機クリスタロスの指揮下に配属され、艦載戦闘機「スーパートムキャット」を自在に操る。幼くして天主教会に受洗し、敬虔な騎士道を胸に戦場を駆け抜ける…が、成人男性なのに美少女にしか見えず、何故かランジェリー下着である。


「俺も貴様も、天主と共に戦う!」

【塵勞御霊】くろさわ がしょうだいし ほうがい

黒沢 俄勝大姉 蓬艾

関東州 東京府 東京市 呑川


・一人称「私(わたくし)

・二人称「あなた様

・地位 武官

・専攻 宗教哲学

・属性 

・武技 尻尾鞭

・愛機 ステルス戦闘機ブラックウィドー(高機動ミサイル)


 禍津日原総督府の特務機関に拾われている、夜叉天狗の如き爆乳妖魔。


「黒沢俄勝と申します、お見知り置きを…合掌」

【滅思颯空】けやき ながとのかみ やえ

﨔木 長門守 夜慧

山陽道 周防県 長門郡 萩市


一人称「俺」

二人称「お前

地位・後輩

専攻・芸術学

属性・

武技・付け爪・時間停止

愛機・Su-47「ベルクート」戦闘機(長距離ミサイル)・Su-37「ターミネーター」戦闘機(高機動ミサイル)


 人工爪を装着した接近戦を得意とし、時間の進行を遅らせ、敵の武器やスキルを奪い取る超能力少女。

長州の出身だが、東京大森のアプリコーゼン第三中隊に「ポタージュⅡ」として参加する事も。


「…それでも、俺は…お前と共にある世界の愛とやらを、信じてやるよ!」

【天孫射命】さいぐう ほしみ

斎宮 星見

(レミ)


―少年飛行兵は風船爆弾の夢を見ない―

 近畿地方に暮らし、伊勢天照神宮に仕えていた少女。

和国の神々を祀る立場から、関西の畿内軍閥と協調していたが、東京政府との内戦が激化する中、東海道の津島長政に保護され、関東に脱出した。

神戸生田兵庫と共に、東京大森へと移住し、地上戦を担う義勇軍第四中隊に所属。

周囲に強力なエネルギーを発生させる「電戟ラケット」を駆使して戦い、豊かな胸が激しく揺れる

【神世黙示】うらじお Michael

浦塩 ミハエル

ロシア共和国 極東シベリア管区 沿海州 ウラジオストーク市


・属性 

・武技 対戦車ロケット砲

・愛機 SCPX-01「飛行箒木(大型爆弾)


 蝦夷島(北海道)を占領するロシア軍の指導者。軍需産業「アフィリランド」を経営し、新兵器の開発・販売に取り組む。電磁レールガンレーザー兵器のほか、人工地震や「気象兵器」なども実験しており、十三宮教会の「魔法(SCP)兵器」(飛行箒木・自転火車)や、虚人東山軍の量産型ドロイドにも、彼女の機関が関与していると言われる。迷える人間達に武器を授け、それによって引き起こされた戦争を見届ける「偽の救世主(アンチクライスト)」。


「戯れましょう、始まりにして終わりの時まで…!」

【太上帝君】たきやま みき

滝山 未來

RP-MUSIC「創造主”神の右手と、悪魔の左手を持つ人間”

月宮怜


 

 

【存在不明】ぜんじょうもん ねねか

禅定門 念々佳


【造反有理】とおの Phoinix まもる

遠野 フォイニクス 衛


瀬笈《せおい》 緋夏麗《あかり》


 1300年以上も生きている天使だが、今は現世に留《とど》まって十三宮《とさみや》教会軍に属し、地上に正義を実現すべく戦っている。天使とは思えぬ長短の兵装での暗闘を得意とするが、天使なので人間の感情に疎い所がある。

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