新しい朝と君

文字数 776文字

ジャーーーーーーーーーー

突然意識が覚醒する。
浴槽に倒れる体を冷水のシャワーが襲う。

「ブーっ、ゲッホゲッホ」
慌ててシャワーを止める。
濡れた顔を拭い、目を見開く。

「ゲホっ、ゲホっ」

信じられない。シャワーを浴びている間に意識を失っていたのか。
冷水で叩き起こされたせいで息が上がる。
呼吸が整う内に少しずつ冷静になる。

(マジかよ、なんて夢だよ)

シャワーカーテンを開け、ユニットバスを出る。
寒気を感じ、リビングで暖房をつける。
外は白み始めていた。

TVをつける。ニュース番組をボーっと眺めながら頭を拭く。

何も考えられない。体が酷く衰弱しているように感じる。現実が侵されていく、夢の螺旋に飲み込まれていく。

TVの字幕に目を疑う。
何度も同じ文字を読み返す。

「金曜…日?」

右手で顔をはたく。右頬が痺れる。分からない。

「…まだ夢か?」

リモコンでチャンネルを何周も回す。
どの番組でも今日は金曜日だという。
そんなはずはない今日は土曜日のはずだ。

「嘘だ。」
「いつだ、いつから夢だ。」

(今朝が金曜日だとすれば、木曜日に帰宅してシャワーを浴びてからずっと夢だったのか)
(あり得ない。そんな訳ない。これも夢だ。)

テーブルの上を確認する。
空き缶、空き瓶、ビニール袋に入った弁当のゴミ。惣菜の残飯。
周りもゴミだらけ。いつのものかはっきりしない。

キッチンを見る。散らかったシンク。汚れた排水口。

玄関に行きドアノブを見つめる。
恐る恐るドアノブを捻る。

ギイィッと音を立てドアが開く。
静まり返ったアパートの廊下。早朝の冷たい風が吹く。

ドアを閉める。蛍光灯がチラつく。
フラフラとリビングに戻り。TVの光に照らされながら、ただ呆然と立ち尽くす。

アラームが鳴る。世界はグルグル回るようだ。
散歩帰りの犬のような生臭い臭いがする。


若い女がこっちを見て言う。

「吉岡さん、疲れてるんですよ」


          完
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