第34話 迷探偵の父は語る

文字数 1,027文字

…あ、あの…僕は、
…あいつの事が知りてぇんだろ?俺も、あいつの近況は何も知らねえからな。教えてやるよ。入んな。
…あ、はい…ありがとうございます…。
Thưa tôi đã về.
最雅さんがそう言うと、家の奥から中年女性が出てくる。

最雅さんと女性は、何か話している。

…すると、

あんらまァ、なんて可愛い坊やなんでしョ。おめェ、サイガのムスメの友達なんだっテ?
(女性は、さっきの男よりも上手な日本語で僕に話しかけてくれた。)
はい、僕が、家並 最雅さんの娘さんのクラスメイトです。
ワタシは、ジエウ。んデ、あちはチン。よろしくナ。
ジエウさんは、さっきの男を指して言う。
…あ、はい。よろしくお願いします。
(万が一困ったら、俺が二人の言葉をお前の言葉に、お前の言葉を二人の言葉に変換してやる。)
(通訳してくれるって事かな…?)

…ありがとうございます。

【おい、チン!…全く、あんたって子は!ダメじゃないか、サイガの娘さんのお友達に怒鳴りつけたんだって!?今すぐ謝んな!!】
【でもよ、母ちゃん。あいつが…】
【早く謝んな!!】
…ゴ、ゴメン…ナサイ…
(…なんだ、思ったより悪い人じゃなさそうだ。)
…ところで、最雅さん。なんでジエウさんのお宅に住んでいらっしゃるんですか?奥さんも心配してるみたいですし、たまには家に顔を出せばいいのに…
…菫(すみれ)の事か。あいつにも、紗音にも、長い間寂しい思いをさせて、悪いと思ってるよ。だが、色々あって、家には帰れねえんだ。
…ジエウさんは、俺の会社の顧客でな。厚意でここに住まわせて貰ってる。
会社って…あの、もしかして最雅さんって、社長さんなんですか…?
…まあな。
ところでお前、あいつは…紗音は元気か?


あ、まさか娘に手ェ出したりしてねえだろうな?

してたら崖の上から自由落下させんぞ。

(…突き落とすぞって言いたいのかな。)

まさか。むしろ家並さんには、いつも振り回されてばっかりで…
少し変わってて、気が強いけど…誰かが困ってたら、その人のために頭をフル回転させてくれる…僕の、自慢のクラスメイトです。
…ッ、ははは!そうか、あいつが!

いやぁ、3年も経てば人は変わるもんだな。

…と、いうと?
…多分、俺の知ってる紗音は、お前の知ってる紗音とは真逆の人物像だよ。
…へえ。…ところで、そろそろ話して頂きたいんですが。

家並さんが、どうして探偵になろうと思ったのか。

…そうだな、そろそろ本題に入ろうか。

教えてやるよ。あいつの、探偵としての原点(はじまり)をな。

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登場人物紹介

和戸 尊(わと たける)

14歳。中学3年生。

通称ワトソン君。

転校生の紗音に振り回される苦労人。

家並 紗音(やなみ しゃのん)

14歳。中学3年生。

御簾照中に転入してきた迷探偵。

厨二病を拗らせており、自身をシャーロック・ホームズの生まれ変わりだと信じ込んでいる。


天明 一才(てんめい かずさ)

14歳。中学3年生。

イケメンで文武両道の生徒会長。

とある事件に巻き込まれてしまい…?

樋貝 芽亜里(ひがい めあり)

14歳。中学3年生。

紗音たちのクラスメイトの女の子。

双子の兄がとある事件に巻き込まれてしまい…?

林野 幸(りんの みゆき)

23歳。自称王子様。

謎多き青年。

とある事件で、紗音たちと出会う。


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