聖なる夜の甘美なる歌声
文字数 1,868文字
聖夜。それは大切な人と過ごす特別な一日……
ハァーイ！ せっかくの聖夜なのに一緒に過ごす恋人も居ない寂しいみんなーっ！
ウオオオオ！！ エリスちゃーん！
悪魔ちゃああんー！ 誘惑してくれーっ
元気ーッ！？
うおおおおお！！
今日だけはあたしが皆の恋人になってあげる♡ これでもう寂しくなんかないでしょ？
街の噴水広場で……なんですか、これ
心の隙間をアイドルという偶像で埋める哀しい集団ね
それじゃあ早速１曲目『クリスマスなんてブッ飛ばせ！』いくわよーっ！
【番外編.聖なる夜の甘美なる歌声】
あっ、ちょうどいいところに！ ロン君こっち上がって来てくれる？
？
…………ロンって論外のロンか！？ だから僕はヒュウだって言ってんだろっ！
よかったぁ～、セットの一部が壊れちゃって困ってたの。ハイこれ頭の上に掲げながらあの赤いテープで印のところに立って回しててね
……
くるくるくるくる ぺかー
リーダー、輝いているぞ！
ブフゥぅ、人間ミラーボール……くっ、くくっ
セットに紛れて本体が目立たないのがすごいな
うるせぇぇぇ！ 何さりげなく最前列に陣取って満喫してるんだアンタら！
だって招待されたんだもの、ほらチケット
同じく
特等席Ｓチケ
リーダーである僕の立場は！？
悪いなヒュウ太、このチケ３人分なんだ
うわーんリリえもーん！ ってことでエリスさんちょっとぉ！？
（何よぉ、今ＭＣ中なんだけど？）
（どうして僕だけ手伝いなんですか！）
（あー、えーと、それはほら、アレよ！ 舞台上であのコをサポートしてもらおうと思って）
あわわわわ……
（え、もしかしてフィン君！？）
（せっかくだしユニットで出ようかと思ったんだけど、あの子極度の上がり症らしくて、開幕からずっとあんな調子なの。お願い♡ 話し掛けてリラックスさせてあげてくれない？）
（ううう、仕方ないなぁ）
人なんてカボチャ、カボチャ集団、数多に広がる大宇宙の前では全ての有象無象……塵芥に等しい、そうゴミ……彼らはゴミ……
（自己暗示で何か怖いこと言ってる……）フィン君フィン君
ひゃあ！？ その声はヒュウさ――まぶしっ
あ、ごめん。大丈夫？ だいぶ緊張してるみたいだけど
うぅぅ～、恥ずかしいんです。ぼくにこんな女の子らしい服なんて似合いっこないんです、絶対みんなおかしいって思ってます……お姉ちゃんの引き立て役なのは分かってますけど、でも僕は魔王候補なんです。こんなことしてるってデモン族に知られたらバカにされる……
そんなことないよ、その服すごい似合ってて可愛い
ふぁっ！？
さぁ背筋を伸ばして堂々としてごらん。せっかくなんだし、こんなところぐらい魔王の肩書きなんて忘れて楽しんじゃいなよ
背筋を伸ばして……
フィン君かわいいーっ
俺どっちかって言うとフィン君派だな！
わかるわかる、あの初々しさがたまんないよな
ホントに可愛い子ね～、おばさん応援してるからね、頑張って！
（みんなのあったかい気持ちが伝わってくる……お姉ちゃんはこれを僕に感じさせたくてステージに引きずり出したの？）
わ、わかりましたっ！ 精いっぱいやってみます！
うん、その調子
ん？
むい……
どうしたリリ君
ヘンね、アンドレがすごい脅えてるの。どうかした？
むぅぅ
さぁ次はフィンちゃんとのツインボーカル！ いっくわよーっ
（アイドルでも魔王でも、誰かを惹きつける魅力は笑顔から――）
すぅっ
＊＊＊
ええい、イヴだと言うのになぜ私が出動しなければならない！ はいはい、どうせ予定が無いのは私だけですよ！ 今年も独り寂しくホールでケーキを抱え込んで食べる予定のマルカですが何かぁ！？
ダンッ
待たせたな馬鹿共！ 無許可でライブなんぞしおって、まとめて牢獄にブチ込んでやろうかオルァ！！
ア、アァァァー……
うごぉぉぉ
耳、耳ガガガガ
は？
あぁっ！ あなた確かソラリス教の人！ お願いします街の人たちを助けてくださいっ
いや……これは何があった？
わかりません、だけどみんなぼくの曲が始まった途端のた打ち回って苦しみだして……ぐすっ
（一人残らず耳から血を流している……それに皿や通りの窓ガラスが全てひび割れている）
まさか目に見えない魔物の攻撃か！ わかった応援を呼んでくるっ
お願いします～～
エリスさん……
何よ……
フィン君の歌声で世界征服できたんじゃ
……
二度とステージに上げないでくださ……がふっ
了……解、ゴフッ
フィンの特殊スキル『甘美なる悪魔の歌声-デスボイスソニック-』が解放されました
称号『歩く破壊兵器』を獲得しました
マルカが称号『ボケ殺し』を獲得しました
チーム【毎日が地獄】の名声が５００アップしました
信用が２０ダウンしました
