第9話(最終話・蛇足エンディング)

文字数 1,087文字





「あ、そうだ。写真は? いっぱい撮ってくれてたわよね?」
 俺はスマホを取り出して多恵子に渡し、あの時写した写真を見せた。
「ほら、なーんにも写ってない」
「本当だ。ただ真っ暗なだけね」
「おかしいよなー。あの場で確認した時にはちゃんと写ってたのに」
「あら? これは? 何か写ってる。お尻?」
 パラパラと画像を見ていた多恵子に言われ、俺はドキっとした。
 ヤバイっ! 忘れてたっ!!
 俺は多恵子似の金髪モデルの十八禁写真集を持ち出せなかった事を、せめてあの時見て脳裏に焼き付けておくんだったとの後悔で頭が一杯でうっかりしていた!

「これってわたしのお尻? 下からのアングルのアップ写真が沢山あるけど」
「あ、いや、それは違うんだっ!」
「何が?」
「あ、あれだよ。いつでも幽霊が撮れるようにスマホを手に持っていたからだよ! 緊張して握りしめてたから勝手にシャッターが切れてっ」
「ふーん、ホントかしら。まあいいわ、昨夜の記念に残しておきなさいな」
 あー、よかった。心の広い多恵子様に感謝!
「じゃあ、こっちの写真は? 罰野君って、こういう趣味があったの?」
「ああっ! それは見ないでっ!」
 俺は多恵子からスマホを奪い返そうとするが、多恵子はクルっと俺に背中を向けたり、手をあちこちに動かしたりして奪還を阻止する。
 強引に奪おうとすると多恵子を抱きしめる形になってしまう。抱きしめないまでも、多恵子の体のどこかには絶対に触ってしまうがどうしよう。まさかとは思うが、多恵子はそれを誘っている、なんて事は有りや無しや?
 うううう、うーんっ、多恵子の薄着のやわらかそうな体に障ってしまったとしても、それは事故だ! 事故なら仕方がないっ! 事故ならやむをえまいっ!
 と、覚悟を完了した途端に多恵子がスマホを返してくれた。えええーっ、事故は……。

「罰野君に猫や犬の写真を撮る趣味があったとは知らなかったわ。それに人間の赤ちゃんの写真も。罰野君って可愛いものが好きなの?」
「カっ、カワイイは正義だっ!」
「へー、それって女の子に対して使うだけの言葉じゃないのね」
「いいだろ別にっ。だけどあんまり他の人には言わないでくれよ」
「可愛い物好きだからって恥ずかしがる事ないのに」
「俺は恥ずかしいの!」

「ねえ罰野君、せっかくここまで来たんだし、公園の中を見ていかない? あのアスレチック施設とか面白そうだし」
「あ、うん、そうだな。じゃあ遊んでいこう」
「ササラちゃんも来れば良かったのにね」
「また今度一緒に来ればいいさ」
 ササラよ、多恵子と二人っきりにしてくれてありがとうっ!
 そのうち何か甘い物でも買ってやるよ!



【END】
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