犯人からのプレゼントボックス

エピソード文字数 3,745文字

 五分も経たず、紅月が七星を連れてきた。七星が現れたことによって、フードコートは多少なりとも静かになり、落ち着きを取り戻した。七星は死亡した女生徒と同じテーブルに座っていた女生徒を除いて、自分の部屋に戻るように指示を出した。フードコートにいた人間がそれぞれ自分の見た光景について話しながら、自室へと戻っていくあいだ、紅月が七星に聞いた。
ここにいた人間を帰しちまっていいんすか?
これだけの人数だ。ここにいた奴らを全員尋問したところで、どこかで口裏を合わせられて誤魔化される。被害者と同じテーブルにいた人間が犯人だとは言わないが、彼女たちに話を聞けば、今回の事件で用いられているコンプレックスの手がかりを何かしら掴めるだろう。
 死亡した女生徒と同じテーブルについていた三人の女生徒への尋問はそのままフードコートで行われた。死体から離れた席で行われたとはいえ、そちらに視線を向ければ、その死体が目に入ったために、紅月は別の場所で尋問を行うことを提案したが、七星は移動する時間が惜しいと言って却下した。また三人の女生徒に必要以上に威圧を与えないようにするために、楓子と犬童にはこちらに来るなと使い走りを寄こした。三人の女生徒がテーブルにつき、その正面に七星が座った。銀太と紅月は七星の後ろで立ったまま控えていた。
それでは彼女が自殺するに至った経緯を教えていただきたい。
 三人の女生徒は明らかに七星に対して怯えていたが、そのうちの一人が代表して状況を話し始めた。
本当に唐突だったんです。彼女はいきなり立ち上がると、銃口を口の中に入れて、そのまま引き金を引いたんです。私たちが制止しても、彼女は聞きませんでした。食事のあいだ、自殺しようとする素振りなんてまったく見せなかったのに。彼女が立ち上がると、いつの間にか拳銃を握っていたんです。どこかから取り出した気配もありませんでした。あれはシンボルだと思います。
けれども彼女のシンボルは拳銃ではありませんでした。どういうわけか、他人のシンボルが彼女の手に握られていたんです。彼女は明るい子で、学園が封鎖されてからも極端に思い詰めているという様子はありませんでした。自殺する理由なんてなかったと思います。
なるほど。彼女が拳銃の引き金を引く直前、あるいは立ち上がる直前、何か変わったことはなかったか? 普段なら気にしないような些細なことでもいい。
 七星の言葉を聞き、三人の代表を引き受け話をしていた女生徒が少しのあいだ考え込んだ。そして話を続けた。
確か、私がスプーンを落としたんです。はい。確かにスプーンを落としました。それで私たちはその音に驚いたんです。私がスプーンを拾おうとして、身を屈めたときには、すでに彼女は拳銃を握って立ち上がっていたと思います。
 七星はそれからもいくつか質問をしたが、それ以上目ぼしい情報は手に入らなかった。三人の女生徒を解放してからも、銀太、紅月、七星の三人はその場に残った。無論、彼女たちを解放する前に、そのシンボルを具現化してもらったが、その中に拳銃はなかった。
被害者が自殺する寸前、同席の一人がスプーンを落としたと言っていた。それ自体はまったく何でもないことだ。しかしコンプレックスは何が発動条件になるかわからない。前後の状況から考えて、スプーンが落ちたことが発動条件になったと考えて間違いない。
 七星は今では席に座っている二人に向かって話しかけた。
犯人は間違いなくフードコートにいた。自分の能力によって死亡する人間の姿を確認することは当然の行動です。そして能力の発動条件には、スプーンを落としたことによって誘発される何かが必要である。発動条件そのものが、相手の近くでスプーンを落とすということは考えづらい。あの人がスプーンを落としたのは偶然ですから。現状でわかっているのはこれくらいですかね?
 銀太がこれまでの情報を整理して、七星に聞いた。
そうだな。しかしこれだけでは犯人を特定しきれないのも事実だ。あのとき、フードコートにはここの住人のほとんどがいた。ところが問題は二人目の被害者が出たことにある。今回の件は、ショッピングモール内の反勢力が動き出した証拠だ。
最初の事件は喧嘩の延長線上にある突発的なものではない。謀殺だ。そして今回の件も。何者かが、意図的にここの住人を殺している。単独で反逆を起こすような無鉄砲な人間がここにいるとは思えない。反勢力のグループがある。反勢力側は、手始めに闇討ちするタイプのコンプレックスを持っている人間を動かした。だが直接私や幹部を攻撃しないあたり、殺す対象を任意に選べる能力ではないらしい。
常盤先輩はこのくらいのことを言われたところで、落ち込むような人間ではないと思うのではっきり言わせてもらいますけど、ここの住人の中で先輩のやり方に反感を持っている人間は少なくないっす。反勢力が生まれる要因はいくらでもあった。このような事態が起きるのは必然だったんすよ。それで常盤先輩は管理者の座を反勢力に受け渡すんすか?
瀧川は私が命惜しさにそんな真似をすると思うのか? 無論、反勢力は殲滅する。だが現時点では反勢力を炙り出すだけの手づるがないのも事実だ。三人目の犠牲者が出るのを待つ。
次の犠牲者を見殺しにするということですか?
 銀太がすかさず戒める調子で反駁した。
そのとおりだ。そして必ずそこから犯人への手づるを掴む。次の犠牲者はこのショッピングモールの秩序を保つのに必要な犠牲だ。
 そう言い放つと、もう二人と話すことはないといった態度で七星は立ち上がった。七星がフードコートから出て行ったあとも、銀太は納得がいっていない様子だった。
常盤先輩のやり方について口を出すのは控えとけ。あの人はそういう人なんだ。それに現状では犯人を特定する手がかりがないのも事実だからな。状況を覆したいなら、次の被害者が出る前に俺たちが犯人を見つけ出すしかない。
 連日で起きた殺人事件の犯人が次の行動を起こしたのは、銀太と紅月の予想よりも早かった。朝食から数時間が経ち、午後になっていたが、二人が自室で秋姫に今回の殺人事件について話し、さらには現状では対抗策が見つかっていないことを説明していると、楓子が訪ねてきた。再び幹部に招集がかけられたのだ。
 三人が呼び出されたのは、三階にある服飾店だった。そこは今朝、フードコートで死亡した生徒が生活していた部屋であり、そこには死亡事件が起きたときに、その生徒と同じテーブルについていた三人の女生徒もいた。すでに書いたことだが、三人の女生徒は死亡した生徒と同居人であり、七星から尋問を受けた生徒でもある。その部屋には三人の女生徒に加えて、七星と犬童がすでにいた。服飾店だった名残の服飾は生活しやすいように、部屋の隅に片づけられていた。楓子が二人を連れてきたのを認めると、七星は床に置いてある箱を指さした。銀太と紅月はその箱に近づいて、観察した。
 その箱は手に抱えるほどの大きさで、青い下地に水玉模様のついた紙で包装されており、桃色のリボンまで結ばれていた。そのリボンに挟む形でメッセージカードが残されていた。そこにはこう書かれていた。
拳銃のシンボルを持つ者より。これから常盤さんを筆頭とした幹部方とのますますの交友を願ってプレゼントを送ります。
 その箱は確かにプレゼントボックスを模していたが、あからさまに罠だった。メッセージカードに書かれた文字は丸っこく、女の子の書いた文字のようだ、と銀太は思った。
これはどういう経緯でここに?
 銀太が七星に聞いた。
彼女たちがシャワー室に行って、部屋を空けているあいだに置かれていたらしい。どうも犯人は二人も殺して、調子に乗っているようだ。これ見よがしに私たちを挑発している。私たち宛てと書いているにも関わらず、この部屋に置かれていることにも悦に入ったものを感じる。
それで、この箱を開けるのですか? どう考えても罠ですが。
無論、開ける。犯人は挑発のつもりでこれを渡してきたのだろうが、こちらにとっては犯人に繋がる手がかりの一つだ。だが箱を開けると同時に爆発したり、毒ガスが噴出する仕掛けが施されている可能性がある。大室、きみのコンプレックスはそのような仕掛けを発動させずに箱を開けることは可能か?
可能です。僕が箱を開けます。
 銀太は箱の前に屈み、シンボルの鋏を具現化した。『緑の家』ならば箱の内部にコードや糸の仕掛けがあるとしても、その連続性を途切れさすことなく箱を開けることができる。そのために罠は発動しないというわけだ。しかし銀太は箱を開けるのに躊躇した。自分の能力では対応できない絡繰りが仕掛けられていると怖気づいたわけではなく(そのような手管に引っかからないほどには銀太は自分のコンプレックスに自信があった)、単純に罠とわかっているのにわざと引っかかることに戸惑いがあったのだ。
 周りの人間も固唾を吞み込んで銀太の作業を見守っていた。銀太はプレゼントボックスの上方の四辺に切り込みを入れた。そしてゆっくりと切り取った蓋を落ち上げた。

 中身を見ると同時に、銀太は叫び声を上げながら後方へと飛び退いた。
 そこには人間の首が入っていたのだ。
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登場人物紹介

第二部「偉大なる二十世紀」

忍谷夕吉(しのびたにゆうきち)
第二部の主人公。
賭博師を生業としている。コンプレックスを保持していない無能力者。26歳。
千ヶ谷千陰と組んで、封鎖された東京で成り上がることを計画している。
性格は皮肉屋だが、実業的。
職業柄、変わった特技を多く隠し持っている。

千ヶ谷千陰(ちがやちかげ)

第二部のメインヒロイン。
日本でも有数の名家、千ヶ谷家の長女。23歳。
生粋のお嬢様なのだが、普段着がジャージ(光文学園時代のもの)、主食がラーメン二郎など、俗っぽい。
近寄りがたい兄と可愛くて仕方のない妹がいる。
意外にも本職はハッカー。

シンボル:???

コンプレックス:『カラマーゾフの兄弟』

 ???

千ヶ谷絹人(ちがやきぬひと)

千ヶ谷家の現当主。
千一郎、千陰、千五百の父。
現在の政治情勢は千ヶ谷派と宇津木派に分かれている。
忍谷を千陰の恋人ではないかと疑っている。

シンボル:腕時計
コンプレックス:『ガルガンチュアとパンタグリュエル』
 対象を30分以内のある時点にリセットする。
 本人は物理的な状態だけで、記憶や感情など精神的な状態はリセットできないと言っているが……?

千ヶ谷千一郎(ちがやせんいちろう)

千ヶ谷家の長兄。千陰と千五百の兄。26歳。
次期千ヶ谷家当主。
神経質で気難しい。そのために千陰からは苦手意識を持たれている。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

千ヶ谷千五百(ちがやちいほ)

千ヶ谷家の次女。
第二部の時点では行方不明になっている。
千陰は妹を探し出すために忍谷と手を組んでいる。

黒塗ほのか(くろぬりほのか)

日本政府に保護されていた謎の少女。17歳。
「未来を見通す」コンプレックスを保持している。
この能力により、2000年問題を予見していた。
忍谷と千陰のことはなぜか出会う前から知っていた。
はたしてその正体は……?

シンボル:???
コンプレックス:「???」

赤藤詩音(あかふじしおん)

暗殺を生業としている。千陰の大親友。23歳。
光文学園特別科クラスに在籍していたころは、千陰とコンビを組んでいた。
しかし金さえ積めば仕事を引き受ける性格で、政治的には千ヶ谷派、宇津木派のどちらにも属していない。
名前からわかるとおり、第一部に登場した赤藤梨音の実姉。

シンボル:窓
コンプレックス:『月は無慈悲な夜の女王』
 手で触れた場所に窓を作る。
 その窓は通常の窓と同じ性質を持つ。つまり開閉ができ、向こう側が見通せ、ガラスは壊れやすい。

源次郎助(みなもとじろすけ)

上野にある国内最大の国営カジノのオーナー(所有者)。28歳。
本職は権力者向けの金貸し。
商売人として、天才的な能力を持っている。
政治的には宇津木派に寄っている。
権力者のあいだで、「ゲームマスター」と呼ばれるほどあらゆるゲームに精通している。

シンボル:鎖

コンプレックス:『バック・イン・ブラック』

 対象との契約を遵守させる。具体的には対象が契約を違反した場合、損害を与える。その損害の内容は対象の「同意」によって決定する。

五十鈴凪子(いすずなぎこ)


源の右腕。24歳。

堅物で、軍人のような口調をしている。

二色ほどではないが、戦闘能力に長けており、荒事を頼まれることもある。

拳銃を得物とする。


シンボル:風船

コンプレックス:『クロイツェル・ソナタ』

 シンボルの風船は複数出現する。風船に触れた物体は別の風船に転移する。

二色廻(にしきめぐる)

源の側近。源は「秘書のようなもの」と言っている。
無口で無表情。しかし非常に礼儀正しい。意外に気さくらしい。
忍谷はその体つきから、一目で「戦闘タイプ」の人間と見抜いた。

本文ではスキンヘッドになっているのですが、きゃらふとさんの仕様上、再現できなかったので、頃合を見て、キャラデザを作り直します。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

散歩桐雄(さんぽきりお)

上野にある国内最大の国営カジノの経営者。源から業務を委託されている形となる。
現在は経営者として働いているが、ディーラーとしての腕前はまだ落ちていない。
コンプレックスを保持しているかは不明。

森重義生(もりしげよしお)


日本政府に所属する男。立場は源よりも上となる。

日本政府と光文学園の仲介役となるために、源のもとに派遣されてきた。

異常なほどに厚着をしている。

第一部にて秋姫と接触していた男その人。


シンボル:ポーン(黒)

コンプレックス:『ミリオンダラー・ベイビー』

 対象の物体の価値を誤認をさせる。ただし、価値の変動や能力の範囲はミクロなものである。

宇津木将臣(うつぎまさおみ)

大日本帝国第八十六代内閣総理大臣。
千ヶ谷家の最大の政敵。
東京の封鎖政策の主導者。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

猫松喜久二(ねこまつきくじ)

権力者の一人。千陰は性格が悪いと言っている。
元大手薬品会社の重役であり、現在は大手銀行に天下りしている。
コンプレックスを持っていない無能力者。

切田善嗣(せったよしつぐ)

宇津木派の人間に雇われた刺客。
絹人の暗殺を目論見るが、千一郎の機転により防がれた。
その後、忍谷と戦闘になる。

シンボル:スプーン
コンプレックス:『バナナフィッシュにうってつけの日』
 砂糖を自由自在に操る。しかし操れるのは乾いた砂糖だけであり、ジュースに溶解しているものなどは操ることができない。

間宮蘖(まみやひこばえ)

宇津木派に雇われた暗殺者。
宇津木側の人間の依頼ばかり引き受けるため、「宇津木の犬」の汚名を着せられている。
しかし暗殺者としての実力は詩音と拮抗する。
オークションのさいには司会を務めていた。

シンボル:???
コンプレックス:『モダン・タイムス』
 自分の身体を軟化する。これにより関節を無視する形で身体を動かせるようになる。
 柔らかくなった身体の痛覚は通常のときと変わらない。

園城ゆゑ(そのしろゆゑ)


光文学園二年十二組の担任教師。28歳。

学園に封鎖線が敷かれるなか、コンプレックスを用いて自力で脱出した。

実は葛籠未造が誘拐した子供たち〈チルドレン〉の一人だった。


シンボル:人体の一部

コンプレックス:『アナベル・リー』

 能力の範囲内の任意の場所に目や口など自分の身体の部品を複製する。

葛籠未造(つづらみぞう)


戦後日本最悪の犯罪者と呼ばれる男。

表向きは死刑の確定から執行まで史上最短で絞首刑に処されたことになっている。

しかし実際は日本政府の庇護下のもと、東京のどこかで生き延びている。

葛籠の犯した犯罪の一つに稀有なコンプレックスを持つ子供を誘拐し、養育していた、というものがある。なぜこのようなことを行っていたのかは不明。

ほのかの予言によると、葛籠が次の「世界の王」である。

第一部「ペストの時代の愛」

大室銀太(おおむろぎんた)

第一部の主人公。
国立光文学園高等部一年八組所属。15歳。
中性的な顔立ちで少女と間違えられることもあるが、性格は偏執的かつ執念深い。
これまで一般市民として生きてきたために戦闘の経験が一切ない。それゆえ学園の封鎖を乗り切るための戦闘では変則的な戦法に頼らざるを得ない。

シンボル:鋏
第一のコンプレックス:『緑の家』
 シンボルの鋏はその強度に関係なく物体を切断する。そのとき物体の連続性は保たれたままになる。切断面を合わせれば、分断したものは再び接合する。
第二のコンプレックス:『石蹴り遊び』
 『緑の家』によって切断した異なる物質を接合する。接合された物体は元の二つの物質の性質が混ざり合う。時間の経過とともに、物質は元の物質のどちらかの性質へと帰着する。
第三のコンプレックス:『百年の孤独』
 シンボルである鋏に「意思」を与える。鋏はその意思を遂行するように自動駆動するようになる。あくまで鋏は意思を与えられただけであり、生物化していたり、能力者が操作したりしているわけではない。
 鋏の移動のさいは床や壁など、物体を切り裂きながらでなければならない。

瀧川紅月(たきがわべにづき)

第一部のメインヒロイン。
大室姉弟の幼馴染。
七人しか在籍していない特別科クラスに唯一の一年生として所属している。生徒会庶務兼任。16歳。
男勝りで、非常に野蛮な言動が目立つ。その反面、緊急事態でも冷静に対処するだけの胆力と機知を持ち合わせている。

シンボル:ハンドベル
第一のコンプレックス:『太陽の塔』
 能力の範囲内にある最も速度の速い物体を爆破する。このとき、能力の対象には能力者自身も含まれる。
第二のコンプレックス:『明日の神話』
 能力の範囲内にある一定の速度の超えたすべての物体を爆破する。この一定の速度はスペクトルによって設定される。

大室綴(おおむろつづり)

銀太の姉。紅月にとっても姉貴分である。
国立光文学園高等部二年十二組(芸術科クラス)所属。17歳。
自分にも他人にも甘く、銀太と紅月の二人を溺愛している。
一人称が「お姉ちゃん」。
文学に精通しており、編纂者を志している。

シンボル:豆本
コンプレックス:『バベルの図書館』
 シンボルの豆本は無限の頁を持ち、際限なく情報を書き込める。文章の記入・消去は念写により行う。このコンプレックスはあくまで「無限に情報を記録する」能力であり、「頁を入れ替えて情報を整理する」能力はない。

埜切秋姫(のぎりあきひめ)

綴のクラスメートであり、親友。銀太とは初めて会ったときから友達以上、恋人未満の関係。
国立光文学園高等部二年十二組(芸術科クラス)所属。16歳。
気弱な性格であり、自分の意見をなかなか出せない。この性格は自分のコンプレックスが他人のものよりも実用性に欠けることと無関係ではない。
癖毛を気にしており、外出するときは必ず帽子を被る。そのために帽子集めも趣味になっている。

シンボル:???
コンプレックス:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
 手で触れた小さな傷を塞ぐ。

須磨楓子(すまかえでこ)

紅月のもう一人の親友。
国立光文学園高等部一年六組所属。16歳。
紅月の「唯一」の親友を名乗っているため、銀太とは犬猿の仲。
高飛車で傲慢だが、これは自分の実力への自信の表れである。実際に普通科クラスの中ではトップクラスの成績を誇る。
学園封鎖後はショッピングモールにて幹部の一人になっている。

シンボル:皮手袋
コンプレックス:『茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』
 シンボルをつけた拳で殴られた人間はその部位を認識できなくなる。攻撃された部位は透明に見え、同時にその機能も失う。

守門恒明(しゅもんつねあき)

七人いる特別科クラスの一人。生徒会書記兼任。学年は二学年に当たる。17歳。
綴に一目惚れして以来、告白を繰り返している。そのために銀太からは目の仇にされている。
お坊ちゃんであり、物腰が柔らかい反面、ナルシストな言動が目立つ。しかし特別科クラスに所属している以上、頭脳や戦闘の実力は折り紙つき。

シンボル:金平糖
コンプレックス:『重力の虹』
 空中に浮いている物体を垂直に落下させる。このときの落下の速度は少なからず銃弾の速度を超える。

常盤七星(ときわななほし)

特別科クラスの一人。生徒会会計兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
紅月と同様、生徒会の義務を放棄しているため、クラスメートからは問題児として見られている。
学園封鎖とともにショッピングモールを制圧し、ここに篭城する。その後ショッピングモールの管理人として、学園内の物資と人材を独占している。

シンボル:注射器
コンプレックス:『美しき水車小屋の娘』
 自分の血液を混ぜた液体を操る。このとき、必要な血液の量は操る液体の体積に比例する。そのため、自分が貧血になるほどの量の液体は操ることができない。

犬童影千代(いぬどうかげちよ)

ショッピングモールの幹部の一人。医療品や生活用品の管理を担っている。
国立光文学園高等部三年二組所属。18歳。
物腰の柔らかい好青年。しかし七星がショッピングモール内で唯一コンプレックスを把握していない人間でもある。そのため七星からは「油断のならない男」として見られている。

シンボル:水銀温度計
コンプレックス:『パルプ・フィクション』
 自分よりも高いところにいる生物の体温を上げ、自分よりも低いところにいる生物の体温を下げる。
 このときの変化率は能力者との上下の距離が離れているほど大きくなる。

赤藤梨音(あかふじりおん)

ショッピングモールの住人の一人。地下倉庫(監房として用いている)の管理を担っている。
国立光文学園高等部二年五組所属。17歳。
幹部ではないが、貴重なコンプレックスを持っているために同等の発言権を持つ。本人曰く、人を閉じ込めるのに適したコンプレックス。
間延びした口調のため、ややとろそうに見える。しかし七星や犬童への意見は鋭く、意外にも人をよく見ている。

シンボル:鍵
コンプレックス:『夏への扉』
 能力の範囲内にある、場所から場所を区切るもの(扉や窓など)に、可能な限り通行の妨害をさせる。
 具体的には、それらが固定されたように開きにくくなり、無理やりこじ開けても即座に閉まるようになる。

桑折良蔵(こおりりょうぞう)

特別科クラスの一人。生徒会会長兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
精悍な顔つきをした巨漢。生徒会長という立場も相まって一般クラスの生徒たちから恐れられているが、クラスメート曰く、その性格は寛容。
互いに反目しがちな特別科クラスの人間には珍しく、クラスメートを家族だと考えている(特別科クラスから離反した紅月と七星も例外ではない)。生徒会長である自分はその家長だという自負がある。

シンボル:磁石
コンプレックス:『ペイント・イット・ブラック』
 シンボルを中心にして、同じ物質を集める。このときに物質が集まる速度は、その途中にあったものを破壊するほど速い。
 シンボルの磁石は同時に二個以上具現化することもできる。

立畑照葉(たてはたてりは)

特別科クラスの一人。生徒会副会長兼任。学年は三学年にあたる。17歳。
端正な顔立ちだが、男口調であり、傍若無人な態度が目立つ。
紅月と七星の死刑宣告の撤回を報告するために、銀太たちを訪ねてくる。
見た目に合わず、作中でも珍しい、武術を極めた武闘派。

技術:「炸空術」(さっくうじゅつ)
 手を打ち鳴らすことによって、空気を破裂させ、真空により対象を切断する。これはコンプレックスではなく、純粋な技術。銀太は剣術の系統に入る武術と見た。
シンボル:モノクル
コンプレックス:『鎖に繋がれた犬のダイナミズム』
 モノクルを嵌めた左目では、すべてのものが静止して見える。つまり能力者は左目で一瞬一瞬が止まった世界を見て、右目で流れている世界を見ていることになる。

清美一暁(きよみかずあき)

特別科クラスの一人。生徒会遊撃兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
細身だが、非常な長身。髪型は常にオールバックにしている。
性格は慇懃で、馬鹿に思えるほど丁寧な口調で話す。
生徒会の職務を全うしようとしない紅月の交渉役を引き受ける。

シンボル:鎖帷子
コンプレックス:『私の名は赤』
 能力者に与えられるダメージ、もしくは能力者が与えるダメージの位置を別の場所に転移させる。

吾妻奈純(あずまなずみ)

特別科クラスの一人。生徒会遊撃兼任。学年は二学年に当たる。16歳。
緊急集会のさい、反抗的な態度を取った男子生徒二名を射殺する。
恒明からは「野蛮な性格」と評される。
生徒会の職務を全うしようとしない七星の交渉役を引き受ける。

シンボル:二丁の散弾銃
コンプレックス:『ライト・マイ・ファイア』

天目小桜(てんめこざくら)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園一年普通科。15歳。
犬童をリーダーとした、七星に対する反勢力の一人でもある。
そのコンプレックスを使い、ショッピングモールの住人を暗殺する。
正体を暴かれたさい、仲間の情報を流して命乞いするが、七星に拒否され殺害される。

シンボル:拳銃
コンプレックス:『若きウェルテルの悩み』
 シンボルは驚いた人間に憑依する。その人間がもう一度驚いたとき、身体を乗っ取り、拳銃自殺させる。
 このとき、周りにいる人間の中で最も早く驚いた人間に改めて憑依する。

也則允彦(なりのりまさひこ)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園三年六組所属。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
プロレス同好会会長。
銀太はその戦闘能力を高く買ったが、紅月は「馬鹿」と一蹴した。

シンボル:プロレスマスク
コンプレックス:『ボーン・トゥ・ラン』
 身体に触れたものを吸着する。
 格闘技の固め技はほとんどの場合、抜け出す技術も見つけられている。しかしこの能力と組み合わせれば、相性の悪いコンプレックスを持っていない限り、抜け出すことは不可能になる。

毒島慈(ぶすじまめぐむ)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園一年八組所属。銀太とはクラスメートである。16歳。
ショッピングモールの反勢力チームの一人。
醜男であり、女性に恨みを持っている。しかし銀太は見た目以上に卑屈な性格に問題があると言っている。

シンボル:???
コンプレックス:『目=気球』
 自分に対して嫌悪した人間の大腸にサナダムシのように寄生する。
 能力者は寄生主から少しずつ栄養を奪い、三日ほどで死に至らしめる。そのあいだ、人質を取っている状態にもなる。

一重柳子(ひとえりゅうこ)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
殲滅戦が始まってからも、自分のコンプレックスを使って周りの人間を欺き、フードコートでくつろいでいた。
身なりを異様に気にし、学園封鎖の中でも衣服の手入れをかかさない。

シンボル:メモ帳
コンプレックス:『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』
 メモ帳を読んだ人間は、そこに書かれた言葉を言うことができなくなる。その言葉を言おうとした場合、言い間違えるようになる。このとき、その人間は自分が別の言葉を言っていることに気がつかない。

八木沼篤(やぎぬまあつし)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
殲滅戦が始まると同時にショッピングモールから脱出を試みるが、赤藤の『夏への扉』の能力を知らなかったために自動ドアに挟まれ、身動きが取れなくなる。
その後、楓子により自動ドアから引きずり出される。楓子に奇襲をかけるも、『茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』によって返り討ちにされる。
コンプレックスを保持しているが、詳細は不明。

時谷圭吾(ときやけいご)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
赤藤の『夏への扉』により、眼鏡屋に閉じ込められる。そのため、そもそも殲滅戦が始まったことを知らなかった。
銀太の能力で眼鏡屋から救出されるが、同時にその場にいた七星から死刑宣告を受ける。命乞いをするが、七星に拒絶され首を刎ねられる。
コンプレックスを保持しているが、詳細は不明。

殺人犯

第一部のラスボス。
生徒会暗殺。
大室綴、守門恒明、常盤七星、犬童影千代を殺害した。

シンボル:バタフライナイフ
第一のコンプレックス:『フルメタル・ジャケット』
 シンボルでつけた傷を自由に開閉する。この能力は生物にも無生物にも有効。
第二のコンプレックス:『地獄の黙示録』
 シンボルでつけた傷を自由に移動させる。このときの移動速度は人間が全速力で走るよりも速い。

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