人生は一度切りだから悔いはなるべくない方面で

文字数 1,803文字

 どうしても、モヤモヤする時は自然を感じたくなる。これは、オフィス街が自然とは対極にあるからかも知れない。
 だから、週末は鎌倉に向かうことにした。いざ、鎌倉。そして、徒歩で海まで向かって、その時に食べたい海鮮を堪能しよう。コンビニ弁当も不味くはない。だが、海辺で食べる海鮮の美味しさには敵わない。観光地独特の雰囲気もあるだろうが、採れたての海鮮の美味しさは格別だ。
 生しらす丼のシーズンは過ぎたが、生しらすに拘る理由もない。御崎名物のマグロも良い。マグロに山葵醤油をたらーっと掛けて白米と……駄目だ、このままでは、夕食にマグロを食べてしまう。一旦、マグロは思考から外そう。そして、週末はいざ鎌倉。

 梅雨時の鎌倉は修学旅行生も少なく、旅行者も少ない様だ。まあ、六月は連休も無いし、泊まりがけで来ようと思う人は少ないだろう。何より、傘を持ち歩きながらの観光は疲れる。日々の生活でも傘を持つのはじわじわ疲れるが、観光するなら天気の良い日を選ぶ人が多いだろう。
 さて、先ずは鎌倉土産の定番中の定番、サブレを買おうか。別に有給を取ってきた訳じゃないから、会社にお土産を買う義理は無い。そう、つまりは自分で食べる為だけに買う。部屋に鳩の黄色い缶が有るだけで、ちょっと楽しいシングルライフ。鳩のサブレが有名なお店で目移りしながら、移動の妨げにはならない程度にお土産を購入する。細かく滞在時間が決められていた修学旅行では知れなかったが、色々なお土産があるものだ。
 さて、紫陽花の咲き乱れる鎌倉をゆるっと観光しながら海へ向かおう。この日の為に、良い靴を買っておいた。タイヤが有名な、英国発祥の会社が出している靴。それ以上の値段がする靴は幾らでも有るが、自分の中では良い靴だ。
 足の赴くまま、風で運ばれてくる海の匂いを頼りに進む。スマホで検索すれば、幾らでもオススメのルートは分かる。だが、今日は癒される為に、自然を感じる日だ。デジタル機器は、なるべく使わず、本能のままに海を目指す。本気で迷ったら、その時はその時だ。



 観光をしながら、海の見える位置まで来た。後は、なるべく海に近い場所まで向かい、潮風を浴びながら無表情でネイチャーサウンドを愛でる。鳩のサブレが有名なお店で買った、お洒落な三角のお菓子を思いながら、無表情でネイチャーサウンドを愛でる。不思議と、波の音は癒される。潮風を体で受け、波の音に耳を傾ける。これだけで不思議と癒される。ヒーリング音楽に波の音が有るのも納得だ。
 さて、海辺であまり何もせず、長居しても不審者扱いされそうだ。何よりお腹が鳴きだしたから、お昼を食べる場所を探す。一応、お昼を食べる店の目星は付けてきた。だけど、今の気持ちで食べたいものを食べる。今は、不思議と海草を摂取したい。潮風のせいか、むやみやたらに海草を食べたい。海苔、ワカメ、昆布、なんでもこい。無性に摂取したくなった海のミネラル。
 そんな思いを抱きながら歩けば、しらすも海草も貝も魚肉も乗ったメニューを発見。これは、食べるしか無い。食べたい物がモリモリ乗せられたメニューを注文、出された水で喉を潤しながら料理が届くのを待つ。
 届いた料理は、予想以上に美味しかった。食べやすいよう、千切られてご飯に乗せられた海苔の気遣い。程良い塩加減のしらす。肉厚のあさりに油の乗った鯖の解し身。どれもこれも美味しくて、喧嘩もしないお腹も大満足。機会があればまた来よう。諸々のシーズンは混むだろうから、それは避けてまた来よう。
 お腹を満たした後も、足の赴くままに観光をした。そうして、十分に鎌倉周辺を歩いた後で、お弁当を買って帰還する。平日のモヤモヤは消え去り、久しぶりに熟睡出来た。こう言ったリフレッシュは、生きていく上で大事だなと思った。

 鎌倉は、小学校の修学旅行で行ったのが初めてだった。中高の修学旅行とは違って、ほぼ決められたルートを巡った小学校の修学旅行。それでも、十分に楽しめた。昔から在るお寺にお店、その時から変わらないものが鎌倉にはある。ただ、小学校の時に行った水族館だけは、残念ながら無くなってしまった。変わらないこともあれば変わることもある。変わらなければならないこともある。
 人間、変わるには勇気や気力が必要だ。だけど、新人を少し守る位の勇気なら、今は生まれた気がする。そんなことを、可愛らしい鎌倉のお土産を眺めながら考えた。
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