第42話 作戦決行

文字数 2,516文字

 田口には話さず、当日は俺達が上手く誘導するという事になった。

「どうやって二人きりにするかだけど誰か良い案ある?」

 と俺達に問いかける。
 今が夏なら肝試しで無理やりペアにできたりするんだろうけど……。
 と、そこである事を思いついた。

「あそこのレジャー施設って確か巨大迷路あったよな?」
 
 俺がそう問いかけると

「ああ、結構大きいのあったな」
「私小さい頃そこで迷子になったよ~」
「あれ結構難しいよね~」

 よし。俺の記憶違いでは無かった。
 ならこの作戦は使えるかもしれない。

「ペアになってその迷路に挑戦してタイムを競うっていう体で二人きりにするのは?」

 俺は内心ドキドキしながら皆の反応を待つ。
 すると

「おー、いいねそれ! さすが友也、頭がキレるな」
「うんうん、いいと思う」
「佐藤は策士だね!」

 良い反応が帰って来た。
 後は詰めだな。

「及川にだけこの事を伝えて俺達が居ないのを中居に不信がられないようにすれば完璧だと思う」
「なるほど、俺達まで律儀に迷路を攻略しなくていいって訳か」
「そういう事」

 水樹はいち早く俺の考えを理解してくれたみたいだ。さすが真のリア充!

「俺はこの作戦でいいと思うけど二人はどうだ?」

 と女子二人に確認を取る水樹

「私もそれでいいと思う」
「私も! でも迷路やりたかったなー」

 女子二人の賛同を得て、この作戦でいく事に決まった。
 作戦が決まってからは普段の何気ない世間話をしてその日は終了となった。

 
 ターミナル駅のいつもの集合場所で俺達6人は残りの人物を待っていた。
 遅刻常習者の及川だ。

「既読は着いてるから起きてるとはおもうよ」
「ったく、あいつはいつも遅刻しやがって」
「まぁまだ5分だし落ち着けって」

 楓が及川に連絡を取り、それを聞いて不機嫌になった中居を水樹が宥めている。
 田口と水瀬はレジャー施設が楽しみなのか二人でテンション高く話している。

「ご、ごめ~ん。待たせちゃったよね?」

 と、ようやく及川が合流する。
 中居が無言で及川に近づいておもむろにチョップする。

「お前は何回遅刻すれば気が済むんだよ」
「ごめんてば~」
「とりあえず全員揃ったし行こうぜ」
「「おー!」」

 ターミナル駅から再び電車に乗り、レジャー施設の最寄り駅までやって来た。
 駅からバスで10分程はしって目的地に到着する。

「久しぶりだなー」
「ワクワクしてきた!」
「俺も俺も! 今日は楽しむっきゃないっしょ!」

 水樹と水瀬と田口がそれぞれ感想を口にする。
 その後ろで中居と及川が二人で並んで歩いて居る。
 よく思い返してみるとあの二人は一緒にいる事が多かった気がする。
 そんな事を考えていると、俺の隣を歩いている楓が

「中居と佳奈子の事もそうだけど私達も楽しもうね」
「そうだな。せっかく来たんだしな」

 こうして俺達は施設内のアトラクションを周り始めた。
 初めてやるダーツに苦戦しながらも結構楽しめてると思う。
 一人じゃこんな思いは出来なかっただろうな。

 昼休憩を挟んで今度は屋外に出てきた。
 ここには目的の巨大迷路もある。
 昼休憩の時にこっそりLINEのやり取りをし、迷路は最後となった。
 勿論その時に今回の作戦を及川に伝えてある。
 その所為か、及川が緊張でややぎこちなくなってしまっている。
 屋外のアトラクションも何個か周った後、遂に作戦開始となった。

「じゃあ最後に巨大迷路やらね?」

 と水樹が仕掛ける。

「いよっしゃー! 俺に任せろー!」

 と作戦を知らない田口が暴走しかけるが

「とりあえず男女ペアになってタイムを競うってのはどうだ?」
「男女ペア? ねぇねぇ、誰か俺と周ろうぜ!」

 よし。これで中居と及川がペアになって先に行っても不振がられないだろう。
 その後の事は二人が居なくなってから説明すればいい。
 それに、ここまで中居の反論が無いのがいい。

「ペア分けはどうやって決める?」
「適当でいいんじゃねぇの?」
「だったら私は友也君と周りたい! 友也君もいいよね?」
「そうだな。俺は楓と周るわ」
「積極的だねぇ~楓は」
「付き合ってるんだから別にいいでしょ~」
「佐藤もそうだが新島もかなり変わったな」
「ふふふ、羨ましい~?」
「別に羨ましくなんかねぇよ」

 というやり取りが行われているが、半分以上台本だ。
 楓が率先して俺とペアを組む事で及川の背中を押すのだ。
 それには水瀬にも動いて貰わないといけないんだが……

「田口ー、一緒に迷路を制覇しよう!」
「おっけー! 俺に任せとけ!」

 水瀬も上手くやってくれている。
 後は及川が中居を誘えば

「じゃ、じゃあ中居とは私が組んであげる!」
「なんでそんな偉そうなんだよ」
「このままじゃ中居一人になって可哀想だからね」
「はいはい、ありがとうございます~」

 作戦通り! と思いきや

「あっれー? 水樹くん余っちゃったん。どうすんの?」

 田口ー! そこはスルーして欲しかった。
 
「俺余っちゃったか、だったらお前らが終わるまでその辺でナンパしてっから大丈夫だよ」
「うわー、さすが水樹くん! 一人を利用してナンパとか流石だわー」

 どうやら解決したらしい。というか水樹のナンパに誰も突っ込まないんだな。
 作戦って分かってるから敢えて突っ込まないのか、それともいつもの事なのか。
 考えてもしょうがないので、俺は楓にアイコンタクトを送る。
 それを読み取った楓が

「それじゃ始めましょ。じゃあ、一番は中居と佳奈子のペアね」

 それを聞いて田口が、「一番がよかったー」と嘆いているがスルーする。
 楓は今でこそ落ち着いたがグループでの発言力は未だ健在だ。まず反論はないだろう。

「楓が言うなら。ほ、ほら中居! 行くよ」
「はいはい、あまり俺を迷子に巻き込むなよ」

 と言いながら二人がスタートする。
 その後ろ姿を眺めて田口以外の全員がニヤッと笑った。
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