第四話 勇者と魔王は共生関係?

エピソード文字数 1,877文字

――だから、人生計画を考えましょうって話なんです。魔王さんを倒したあとのみなさんの仕事……それから生活資金も、老後も、心配ばかりじゃないですか? 私のことはともかく、みなさんの将来をしっかり見るのは、リーダーたる私の責任だと思うんです。
そんな理由で軽々しく武器屋を買収するヤツがいるか! パーティーの軍資金だぞ! 魔王討伐のためにと、多くの市民たちの血税も託されているのに、それを……!
ふーん……人生設計ねぇ……。
別に私は端っから、王国のサポートに期待なんかしちゃいなかったよ。魔王を倒して社会の秩序を取り戻したら、私は魔法学院に勤めようかなと考えてたな。教授に誘われてるんだ。生徒は私と同年代か、ちょっと上の世代もいるけれど、魔法界ってのは実力がものを言う世界だからさ。
魔王を倒した暁には、私は教皇庁から、大司教の地位をもらえることになっているけどね。
うっは、その歳で大司教……大出世じゃないか。
もともと私は教皇庁の特殊工作員として物心ついたときから養成されていたのよ。でもたまたま魔王討伐に向かう勇者がいるっていうんで、教皇庁から私が指定されて派遣されたわけ。
そんだけ強けりゃな。僧侶は魔力が圧倒的なだけじゃなく、武器での打撃力まで並の人間を越えている。ぶっちゃけ重戦士や武闘家や侍を名乗っても……。
は……?(威圧)
い、いえ……何でもないです……。
最初は面倒で嫌な作戦を押しつけられたと思っていたけれど、正直かなりラッキーだったかもね。だって魔王が涙目で私たちに1000億Gくれたがっているみたいだし。それだけ手に入るなら、経済力で、裏から世界を統べることだってできるかも……。
どう転んでも、僧侶には超エリートコースが約束されてるってわけだな。羨ましいこった。
アンタはどうすんのよ?
もし叶うなら、俺は王宮の兵士になれればと思ってる。昔は結構勉強してて、弁護士にでもなりたいって思ってた。でも魔王打倒を為し遂げた経歴をアピールすることで、もし王宮の兵士に採用してもらえるなら、国家公務員が一番手堅いんじゃないかなと。
実に普通。実に詰まらん。
博愛主義が行き過ぎてるアンタが、とても戦争で戦えるタイプだとは思わないけど。ヒマがあればボランティア活動に自ら出向いていって、子どもたちの遊び相手とか、老人の世話とか、花壇の花を植えるとかまでしてるでしょ。そんなヤツが兵士として戦闘なんかこなせるはずもないのよね。
戦争のときは従軍させないでくれと頼んでみるよ……。閑職でいいし、給料は安くていいから、治安維持だけ任されたい。
せっかく勇者パーティーに潜り込めたってのに、メンバー唯一の男代表として野心はないのかしら?
俺の人生そんなもんでいいよ。勇者に同行できただけで幸運だったさ。それ以上の高望みは身を滅ぼすだけだ。
なんか戦士は悟ってんだよな。こじんまりとした感じで。草食系ってヤツか?
お前たちとの実力の差を、嫌というほど見せつけられてきたせいかもな。
なぁ、勇者は黙ってばかりだが、どうしてタジタジになってんだ?
まさか皆さんが、魔王さんを倒したあとの生活をそこまでちゃんと考えてるなんて知りませんでした……。私だけ置いてけぼりだったみたいで……。せっかく皆さんのために武器屋を始めて、将来も困らないようにしたいと思ったんですけど……。
好意はそれなりに受け取っとくよ。
だけどさ、実際のところ、魔王討伐後の生活に一番困るのは勇者なんじゃないのか? 超絶ドジすぎて、戦闘以外は何一つできる気がしねーんだよな。
平和を取り戻して一番困るのは、実は勇者だったというオチかしら? フフフ、ある意味、勇者と魔王は持ちつ持たれつの共生関係なのかもしれないわね。
そんな言い方って酷いです! 私はみなさんのことだけを考えて……!
その『ドリームアームズ』とかいう武器屋の売買、契約まで済ませちまったのか?
はい、『ドリームアームズ』はもう買っちゃいました……。どうすればいいんでしょう……?
武器屋買っちゃったテヘペロじゃねーよ。98万Gも投入しやがって……。
これからの私たちの宿代とかどうするの? せっかく王都にいるのに、場末の小汚い宿屋のドミトリーとか、公園で野宿とか勘弁してほしいんだけど。
それは大丈夫です! 私がしっかり武器屋『ドリームアームズ』で稼いで、みなさんの滞在費とか生活費とか、困らないようにしてみせます!
まさに本末転倒。このドジすぎる勇者にお先真っ暗。
とにかく、ここで話し込んでいてもラチが明かない。その武器屋に足を運んでみて、実際の店舗を見ながら今後のことを考えようぜ。
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登場人物紹介

勇者

剣技・魔力ともに秀でた有数の戦闘技術の持ち主。幼いころからその力は有名で、王国政府から懇願されて魔王討伐の旅に出た。
心優しく、単純な性格。誰に対しても丁寧で、魔王にすら謙虚な姿勢で臨む。

魔法使い

まだ年若いにもかかわらず、王国魔法協会で最高の魔力の持ち主。勇者を護衛するメンバーとして王国魔法協会から派遣され、最も早くからパーティーに参加した。ギャンブル好きで、大都市にくるとカジノに入り浸る。

僧侶

教皇庁の特殊工作員。教皇庁の思惑から勇者パーティーに派遣され、魔王軍攻略に参加している。
ゾンビ30体を同時召還し使役することができるほどの驚くべき魔法力を秘め、その実力は魔法使いを上回る。タイマン勝負でも、愛用の聖鉄製大型ジャッジガベルを振り回し、戦士を圧倒する実力をみせる。表向きは清楚な女性に見えるが、パーティー内での戦闘力は、実のところ僧侶が最も高い。

戦士

ツワモノ揃いのパーティーメンバーのなかで、唯一の庶民的能力。
苦学生で、生活費を稼ぐために、冒険者ギルドに所属して時々バイト活動をしていた。あるときダンジョンに挑む勇者パーティーにポーター(鞄持ち)として雇われる。最後に加わったメンバー。
正式には今でも冒険者バイトだが、数字や法律に強く、パーティーの知能を担っている。すでに古株になってしまっており、最後まで同行しそうな雰囲気である。

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