第32話 ローズマリーとティータイム

文字数 1,140文字

応接室のソファーに、ローズマリーを取り囲むようにみんなで座る。


コデマリ先生も入ろうとすると、

これからは同世代同士でお話ししたいわ。(にっこり)
ローズマリーお抱えのメイド兼ボディ・ガード3人が、手早くアフタヌーンティーの準備をした。


サンドイッチと、クロテッドクリームをたっぷり添えたスコーン、そして香り高い紅茶。



すげー。「アマゾネス」と「くのいち」と「女剣士」みてーなメイド達だな。


メイドも全員A級異能力者だろ? 俺にはわかる。

サーモンと香草と、クリームチーズとキュウリのサンドイッチだ。苺とメロンのフルーツサンドもある。

スコーンのジャムはブルーベリーかな?


こういうの実物見るのって初めてだ。

ちょうど小腹がすいてきたところだ、気が利くじゃねえか。


上級州国民っていうから、もっと気取ったいけ好かねえお嬢さまかと思っていたぜ。

(笑いながら)さあ、遠慮なくどうぞ。


私、お母さんが上級州国民になったばかりの、成り上がりの娘よ。

上級州国民の中では新参者なの。私、中学までは庶民だったし。

話しやすくて助かるぜ。

アタシはリーダーのカルダモン。情報操作系スキルだ。


こっちの物理系パワースキルのシナモンが、聞きたいことがあるんだ。

こんにちは、シナモンです、初めまして。


あのね、私、上級州国民の変質者をさがしているの! それでね、

ちょっと待って。
クローブがバトンタッチして、筋道立てて話す。
だいたいわかったわ。


でも顔の記憶を消されているんでしょ?

うん、でもね、声は覚えている。
どんな声だった? シナモン。
うーん……きっと聞けば思い出す。
なにか、上級州国民の若い男が映っている記録媒体とかは?


声が入っているもので。

それならお正月の『福寿草交歓会』の映像があるわ。
ローズマリーの合図で、メイドがタブレットを差し出す。


操作するローズマリーの手元から、パーティの楽しげなざわめきと、クラシックの生演奏が漏れる。

これよ、これ。私、来年これに出なくちゃいけなくて。(うんざり顔)

お母さんから予習しておけって言われているのよ。


興味無いから今の今まで放っておいたわ。

もしかして、これってマッチングパーティ?
そうよ。上級州国民同士の集団お見合い。


こんなので結婚相手を選ぶなんて、冗談じゃないわ、ちっとも面白くない。

でも確か、AIで最適な相手をマッチングしてくれるって聞いたことがあるわ。

性格だけじゃなくて、その、子孫繁栄?まで見据えてくれるって。


渡辺家のためにはいいんじゃないの?

もう、クローブさん! お母さんみたいなこと言わないでよ。


最初からネタバレなんて、つまらないじゃない!

私はもっとドキドキを味わいたいの。

お、ヤローどもが1人ずつ自己紹介するぜ。


シナモン、先入観抜きで、目ぇつむって聞いてみろよ。

うん、わかった。
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